全国患者登録データを用いたわが国の慢性心不全患者の急性増悪・難治化要因の解明と効果的治療法の確立

文献情報

文献番号
200722016A
報告書区分
総括
研究課題名
全国患者登録データを用いたわが国の慢性心不全患者の急性増悪・難治化要因の解明と効果的治療法の確立
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-033
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 裕之(北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 徹(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 米澤 一也(国立病院機構 函館病院臨床研究部)
  • 下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
  • 永井 良三(東京大学大学院医学系研究科医学部器官病態内科学講座)
  • 和泉 徹(北里大学医学部内科学Ⅱ)
  • 小川 聡(慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科学)
  • 横山 広行(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 藤原 久義(兵庫県立尼崎病院)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター病院)
  • 堀 正二(大阪大学大学院医学系研究科病態情報内科学講座)
  • 横山 光宏(淡路県立病院)
  • 葭山 稔(大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学)
  • 松崎 益徳(山口大学医学部器官制御医科学講座)
  • 今泉 勉(久留米大学医学部心臓・血管内科)
  • 松本 高宏(健康保険直方中央病院 循環器科)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム講座)
  • 溝上 哲也(国立国際医療センター 疫学統計研究部)
  • 岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 眞茅 みゆき(国立国際医療センター 医療情報解析研究部 ゲノム疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国において初めてとなる慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築することによって心不全の急性増悪・難治化要因を解明し、効果的治療法の確立を目指すものである。
研究方法
急性増悪のために入院治療を行った慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築する。インターネットにホームページを開設し、ユーザーIDとパスワードを付与された各施設の医師がホームページから直接患者データを登録する。前向き登録研究では、治療への介入は行わず、多数の患者を対象として、臨床像と予後との関連、特に治療内容と予後との関連を解析する。
結果と考察
平成19年度は、全国の日本循環器学会研修施設から登録された慢性心不全2675例を対象に、予後(死亡および心不全増悪による再入院)調査を行った。平成19年12月7日現在で回収率は68%で、平均観察期間は2.1年であった。収縮不全と拡張不全の全死亡率は18%と23%で、心臓死亡率は13%と15%で、いずれも粗死亡率には有意差をみとめなかった。さらに、心不全増悪による再入院は、収縮不全35%と拡張不全38%と高値であった。
慢性心不全患者を対象として疾患管理の有効性を明らかにする臨床試験に着手した。心不全患者を、通常治療群と通常治療+疾患管理群の2群に無作為に割り付け、通常治療+疾患管理群では、通常治療に加えて、1-2週間ごとに、疾患管理プログラムに基づいて看護師による患者および家族教育・病状モニタリング・服薬管理を行い、観察期、3、6、12ヵ月後に1)自覚症状、2)運動能力、3)健康関連QOL、4)うつ(BDI)および不安(STAI)指数、5)死亡(全死亡、心血管死)、6)心不全の増悪による入院、7)投薬内容など評価した。
結論
本研究は、慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築することによって心不全の急性増悪・難治化要因を解明し、効果的治療法の確立を目指した。多数の患者を対象として、臨床像と予後との関連、特に治療内容と予後との関連を解析することが可能となった。今回構築した全国レベルでの患者登録データベースを今後とも活用し、解析研究をさらに発展させることによって、わが国の慢性心不全患者における急性増悪・難治化要因の解明や各種治療法の効果の判定などを行うことが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200722016B
報告書区分
総合
研究課題名
全国患者登録データを用いたわが国の慢性心不全患者の急性増悪・難治化要因の解明と効果的治療法の確立
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-033
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 裕之(北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 徹(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院)
  • 米澤 一也(国立病院機構 函館病院臨床研究部)
  • 下川 宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
  • 永井 良三(東京大学大学院医学系研究科医学部器官病態内科学講座)
  • 和泉 徹(北里大学医学部内科学Ⅱ)
  • 小川 聡(慶應義塾大学医学部呼吸循環器内科学)
  • 横山 広行(国立循環器病センター 心臓血管内科)
  • 藤原 久義(兵庫県立尼崎病院)
  • 友池 仁暢(国立循環器病センター病院)
  • 堀 正二(大阪大学大学院医学系研究科医学部病態情報内科学講座)
  • 横山 光宏(淡路県立病院)
  • 葭山 稔(大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学)
  • 松崎 益徳(山口大学医学部器官制御医科学講座)
  • 今泉 勉(久留米大学医学部心臓・血管内科)
  • 松本 高宏(健康保険直方中央病院 循環器科)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム講座)
  • 溝上 哲也(国立国際医療センター 疫学統計研究部)
  • 岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 眞茅 みゆき(国立国際医療センター 医療情報解析研究部 ゲノム疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国において初めてとなる慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築することによって心不全の急性増悪・難治化要因を解明し、効果的治療法の確立を目指すものである。
研究方法
急性増悪のために入院治療を行った慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築する。インターネットにホームページを開設し、ユーザーIDとパスワードを付与された各施設の医師がホームページから直接患者データを登録する。本研究は、前向き登録研究では、治療への介入は行わず、多数の患者を対象として、臨床像と予後との関連、特に治療内容と予後との関連を解析する。
結果と考察
慢性心不全患者を対象とした全国レベルでの患者登録データベースを構築した。患者の男女比は6:4であった。平均年齢は71歳で、75歳以上の後期高齢者が46%を占めた。特に女性の高齢者の占める割合が高かった。心不全の原因となる主たる基礎心疾患は、虚血32%、弁膜症28%、高血圧25%、拡張型心筋症18%であった。左室駆出率40%以下の収縮不全が51%を占めるのに対し、50%以上と比較的保たれた患者も22%であった。このような患者は、近年拡張不全による心不全として注目されているが、収縮不全に比し、高齢者、女性、高血圧、心房細動をより多くみとめた。院内死亡率は、収縮不全3.8%、拡張不全6.5%であった。わが国の慢性心不全患者を、米国における同様の登録研究であるADHEREの登録患者と比較すると、臨床像には共通点が多いことが明らかとなった。さらに、院内死亡(収縮不全)の規定因子を多変量解析により検討すると、貧血、心不全増悪による入院の既往、BNP高値が独立したリスクであった。約2年の経過観察中に、収縮不全と拡張不全の全死亡率は18%と23%で、心臓死亡率は13%と15%で、いずれも粗死亡率には有意差をみとめなかった。さらに、心不全増悪による再入院は、収縮不全35%と拡張不全38%と高値であった。
結論
慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データを構築し、臨床像と予後との関連、特に治療内容と予後との関連を解析することが可能となった。わが国の慢性心不全患者における急性増悪・難治化要因の解明や各種治療法の効果の判定などを行う研究基盤が整備された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により、わが国で初めてとなる慢性心不全患者を対象とした全国規模での患者登録データが構築され、臨床像と予後との関連、特に治療内容と予後との関連を解析することが可能となった。したがって、わが国の慢性心不全患者における急性増悪・難治化要因の解明や各種治療法の効果の判定などを行う研究基盤が整備された。また、慢性心不全患者に対する看護師による患者および家族教育・病状モニタリング・服薬管理などのプログラムから構成される疾患管理の介入試験を行い、わが国の患者での有効性を明らかにすることが可能となった。
臨床的観点からの成果
わが国の慢性心不全患者の男女比は6:4であった。平均年齢は71歳で、75歳以上の後期高齢者が46%を占めた。特に女性の高齢者の占める割合が高かった。心不全の原因となる主たる基礎心疾患は、虚血32%、弁膜症28%、高血圧25%、拡張型心筋症18%であった。院内死亡率は、収縮不全3.8%、拡張不全6.5%であった。約2年の経過観察中に、収縮不全と拡張不全の全死亡率は18%と23%であった。さらに、心不全増悪による再入院は収縮不全35%と拡張不全38%と高値であった。
ガイドライン等の開発
日本循環器学会学術委員会合同研究班では、我が国の循環器疾患の特徴や医療の実情に即した独自のガイドライン作成を目的として、1998年度から「循環器病の診断と治療に関するガイドライン」の作成を開始している。本研究の成果は、わが国における慢性心不全患者の臨床像をあきらかにしたものであり、慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版)や急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版)に取り入れられた。今後のガイドラインの改訂においては、本研究の成果がさらに参考にされるものと思われる。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果によってわが国の慢性心不全患者の急性増悪・難治化要因が明らかになり、リスクの高い患者を同定し効果的対策を効率よく講じやすくなることが期待される。慢性心不全患者数そのものの増加、増悪による入院の反復は、いずれも医療費の高騰を引き起こしており、慢性心不全に対する効果的・効率的治療法の確立は、大幅な医療費抑制効果が期待される。したがって、本研究の成果は、実際の医療を担当する医師ばかりでなく、厚生労働行政にも有用な情報を提供し、国民の保健・医療・福祉の向上に貢献するものである。
その他のインパクト
本研究の成果は「わが国初の慢性心不全の大規模登録研究」として高く評価された。研究成果は、原著論文・総説論文において公表するとともに日本循環器学会・日本心臓病学会・日本心不全学会のシンポジウムなどにおいて「わが国初のデータ」として公表する機会が与えられ、循環器内科医にとどまらず多くの医療関係者に大きなインパクトを与えた(発表状況参照)。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
45件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsutsui H, Tsuchihashi-Makaya M, Kinugawa S, et al.
Clinical characteristics and outcome of hospitalized patients with heart failure in Japan. -Rationale and design of Japanese Cardiac Registry of Heart Failure in Cardiology(JCARE-CARD)-.
Circ J , 70 , 1617-1623  (2006)
原著論文2
Tsutsui H, Tsuchihashi-Makaya M, Kinugawa S, et al.
Characteristics and outcomes of patients with heart failure in general practices and hospitals –Japanese Cardiac Registry of Heart Failure in General Practice(JCARE-GENERAL).
Circ J , 71 , 449-454  (2007)
原著論文3
Naya M, Tsukamoto T, Morita K, et al.
Olmesartan, but not amlodipine, improves endothelium-dependent coronary dilation in hypertensive patients.
J Am Coll Cardiol , 50 , 1144-1149  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-