抗凝固薬・抗血小板薬の標的およびこれら薬剤を修飾するタンパク質・遺伝子の解析を通した最適投与量の評価方法の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
200722013A
報告書区分
総括
研究課題名
抗凝固薬・抗血小板薬の標的およびこれら薬剤を修飾するタンパク質・遺伝子の解析を通した最適投与量の評価方法の標準化に関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-030
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター 輸血管理室)
  • 峰松 一夫(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 北風 政史(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 鎌倉 史郎(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 長束 一行(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 川村 淳(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 大塚 頼隆(国立循環器病センター 心臓内科部門 )
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター研究所 病因部)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学 神経内科)
  • 長尾 毅彦(財団法人 東京都保健医療公社 荏原病院 神経内科 総合脳卒中センター)
  • 細見 直永(香川大学医学部 第二内科)
  • 山脇 健盛(名古屋市立大学大学院 )
  • 木村 和美(川崎医科大学 神経内科)
  • 斎藤 こずえ(奈良県立医科大学 神経内科)
  • 中根 博(国立病院機構 福岡東医療センター 脳血管内科)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科 脳卒中センター)
  • 後藤 信哉(東海大学 医学部内科学系)
  • 一色 高明(帝京大学 医学部 内科学講座)
  • 北川 一夫(大阪大学大学院 医学系研究科 神経内科学)
  • 古井 英介(財団法人広南会 広南病院 脳血管内科)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学 COE 内科学講座 循環器内科学部門 )
  • 和田 英夫(三重大学大学院 医学系研究科 病態解明医学講座)
  • 長田 乾(秋田県立脳血管研究センター 神経内科学研究部)
  • 海北 幸一(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 田中 啓治(日本医科大学附属病院 集中治療室・内科学第一)
  • 服部 晃(佐渡総合病院 内科)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第一内科学教室)
  • 片山 泰朗(日本医科大学附属病院 第二内科(神経内科))
  • 西川 政勝(三重大学医学部附属病院 臨床研究開発センター)
  • 鐙谷 武雄(北海道脳神経外科記念病院 脳神経外科)
  • 滝内 伸(東宝塚さとう病院 循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗血小板薬であるアスピリンは心血管イベントの二次予防として広く用いられている。最近、アスピリンの効果には個人差があり、血小板機能抑制が十分でない患者をアスピリンレジスタンスと定義し、この患者群で血栓塞栓症の再発が高率に認められる、との報告が増加している。私達は、日本人におけるアスピリンレジスタンスの発症頻度、寄与因子を明らかにするとともに、臨床予後を予測する評価系の確立を目指した研究を行った。
研究方法
多施設共同前向き観察研究「アスピリンレジスタンスの実態ならびにその遺伝子背景に関する研究、The Study on Profile and Genetic factors of Aspirin Resistance (ProGEAR study)」を行った。参加施設は、日本全国の23施設である。
結果と考察
対象患者は、心血管系疾患の二次予防としてアスピリンの投与を受けている患者である。登録後、追跡期間は2年間とした。主要評価項目は、脳梗塞、一過性脳虚血発作、心筋梗塞、不安定狭心症、血行再建術、その他血栓栓塞症の発症、心血管疾患による死亡の複合エンドポイントとした。登録時にコラーゲンとアラキドン酸による血小板凝集能、血清トロンボキサンB2量、尿11-デヒドロトロンボキサンB2量を測定した。国立循環器病センターでは、ずり応力下血小板血栓形成能を評価項目に含めた。アスピリンの服用を客観的に評価するため、血中サリチル酸を測定することとした。平成20年2月現在で、541例の登録が完了した。患者266名の血小板凝集能が終わった時点では、患者の2-5%にアラキドン酸惹起血小板凝集能の残存が見られた。血清トロンボキサンB2が高値の患者も確認した。コラーゲン惹起血小板凝集能および尿中11-デヒドロトロンボキサンB2量は広い分布を示した。ずり応力下血小板血栓形成能の評価4以上(血小板血栓が抑制されていないと判断される)を示す患者は270例中30例であった。
結論
ProGEAR studyの登録を終了した。追跡2年後に、心血管イベント再発と検査結果の関連を解析することにより、日本人を対象としたアスピリンレジスタンスの定義、信頼できる測定法の確立、心血管系イベントのリスクの確立を行う。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200722013B
報告書区分
総合
研究課題名
抗凝固薬・抗血小板薬の標的およびこれら薬剤を修飾するタンパク質・遺伝子の解析を通した最適投与量の評価方法の標準化に関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-030
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病センター 輸血管理室)
  • 峰松 一夫(国立循環器病センター 内科脳血管部門 )
  • 北風 政史(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 鎌倉 史郎(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 長束 一行(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
  • 川村 淳(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 大塚 頼隆(国立循環器病センター 心臓内科部門)
  • 嘉田 晃子(国立循環器病センター研究所 病因部)
  • 内山 真一郎(東京女子医科大学病院 神経内科)
  • 長尾 毅彦(財団法人東京都保健医療公社 荏原病院 神経内科 総合脳卒中センター)
  • 細見 直永(香川大学医学部 第二内科)
  • 山脇 健盛(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 木村 和美(川崎医科大学 神経内科)
  • 斎藤 こずえ(奈良県立医科大学 神経内科)
  • 中根 博(国立病院機構福岡東医療センター 脳血管内科)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科 脳卒中センター)
  • 後藤 信哉(東海大学 医学部 内科学系)
  • 一色 高明(帝京大学 医学部 内科学講座)
  • 北川 一夫(大阪大学大学院 医学系研究科 神経内科学講座)
  • 古井 英介(財団法人広南会 広南病院 脳血管内科)
  • 苅尾 七臣(自治医科大学 COE 内科学講座 循環器内科学部門)
  • 和田 英夫(三重大学大学院 医学研究科 病態解明医学講座 臨床検査医学分野)
  • 長田 乾(秋田県立脳血管研究センター 神経内科学研究部)
  • 海北 幸一(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
  • 田中 啓治(日本医科大学付属病院 集中治療室・内科学第一)
  • 服部 晃(佐渡総合病院 内科)
  • 斎藤 能彦(奈良県立医科大学 第一内科学教室)
  • 片山 泰朗(日本医科大学付属病院内科 神経・腎臓・膠原病リウマチ部門)
  • 西川 政勝(三重大学医学部附属病院 臨床研究センター)
  • 鐙谷 武雄(北海道脳神経外科記念病院 脳神経外科)
  • 滝内 伸(東宝塚さとう病院 循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗血小板薬であるアスピリンの効果には個人差があり、血小板機能抑制が十分でない患者をアスピリンレジスタンスと定義し、この患者群で血栓塞栓症の再発が高率に認められる、との報告が増加している。私達は、日本人におけるアスピリンレジスタンスの発症頻度、寄与因子、臨床予後を予測する評価系の確立を目指した研究を行った。
研究方法
多施設共同前向き観察研究「アスピリンレジスタンスの実態ならびにその遺伝子背景に関する研究、The Study on Profile and Genetic factors of Aspirin Resistance (ProGEAR study)」を日本全国の23施設と共同で行った。
結果と考察
対象患者は、心血管系疾患の二次予防としてアスピリンの投与を受けている患者である。追跡期間は2年間とした。主要評価項目は、脳梗塞、一過性脳虚血発作、心筋梗塞、不安定狭心症、血行再建術、その他血栓栓塞症の発症、心血管疾患による死亡の複合エンドポイントとした。登録時にコラーゲンとアラキドン酸による血小板凝集能、血清トロンボキサンB2量、尿11-デヒドロトロンボキサンB2量を測定した。国立循環器病センターでは、ずり応力下血小板血栓形成能を評価項目に含めた。アスピリンの服用を客観的に評価するため、血中サリチル酸を測定した。患者登録は情報保護に注意を払ったウェブで行った。米国clinicaltrials.govへ臨床試験事前登録を行った。日本循環器学会から大規模臨床試験として承認された。平成20年2月現在で、541例の登録が完了した。患者266名の血小板凝集能が終わった時点では、患者の2-5%にアラキドン酸惹起血小板凝集能の残存が見られた。血清トロンボキサンB2が高値の患者も確認した。コラーゲン惹起血小板凝集能および尿中11-デヒドロトロンボキサンB2量は広い分布を示した。ずり応力下血小板血栓形成能の評価4以上(血小板血栓が抑制されていないと判断される)を示す患者は270例中30例であった。
結論
ProGEAR studyの登録を終了した。追跡2年後に、心血管イベント再発と検査結果の関連を解析することにより、日本人のアスピリンレジスタンスの定義、信頼できる測定法の確立、心血管系イベントのリスクの確立を行う。

公開日・更新日

公開日
2008-03-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
抗血小板薬であるアスピリンの服薬にもかかわらず心血管イベントの再発を抑制できない例が見られる。本研究では、二次イベント予防としてアスピリンを服薬している患者588名を全国23施設で前向きに登録し、血小板凝集能、血中および尿中のトロンボキサン代謝産物量、ずり応力下血小板血栓形成能などを測定した。本邦で500名を超えるアスピリン服薬患者を登録した臨床研究はこれまでなく、本研究により安価なアスピリンの安心・安全な使用に繋がると考えられる。
臨床的観点からの成果
登録時の測定結果から、患者の2-5%にアラキドン酸惹起血小板凝集能の残存が見られた。血清トロンボキサンB2が高値の患者も確認した。コラーゲン惹起血小板凝集能および尿中11-デヒドロトロンボキサンB2量は広い分布を示した。登録後2年間イベント発症の追跡を行うので、こういった測定値とイベントの関連を解析することにより、抗血小板薬のモニター法としてどういった検査法が有用であるかが示され、また二次イベント発症の寄与因子が明らかになると考えられた。
ガイドライン等の開発
アスピリンは抗血小板薬として汎用されており、その安全・安心な使用が望まれる。抗血小板薬は血小板機能の抑制をモニターすることなく一定量の投薬が行われているのが現状である。血小板機能が十分に抑制されていない患者では心血管疾患の再発が高率に観察されるため、抗血小板薬による血小板機能の抑制をモニターは、再発の抑制につながる可能性が高い。本研究から、血小板機能の適切なモニター法が明らかになり、こういった機能測定法をガイドラインに反映させることができると考える。
その他行政的観点からの成果
抗血小板薬として使用するアスピリンは1日あたり6.4円であり、他の抗血小板薬であるクロピドグレル(1日あたり289.6円)やシロスタゾール(1日あたり218.4円)に比べて極めて安価である。アスピリンという安価な薬剤を有効に使用することは、厚生行政上極めて重要であり、本研究の成果は安価な薬剤であるアスピリンの安心な使用に繋がるものである。
その他のインパクト
本研究により、アスピリンの抗血小板効果をモニターする最適な方法が確立すると、アスピリン服薬患者の抗血小板効果をモニターし、適切な抗血小板療法が選択され、それによって心血管系イベント再発が低下することが期待される。高齢化に伴い血栓症患者は増加しており、本研究は、こういった患者の心血管イベント再発を効果的に抑制することに繋がり、社会的なインパクトが大きいものと思われる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
123件
その他論文(和文)
114件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
72件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohmori T, Yatomi Y, Nonaka T ,et al.
Aspirin resistance detected with aggregometry cannot be explained by cyclooxygenase activity: involvement of other signaling pathway(s) in cardiovascular events of aspirin-treated patients.
J Thromb Haemost , 4 (6) , 1271-1278  (2006)
原著論文2
Yano Y, Ohmori T, Hoshide S, et al.
Determinants of thrombin generation, fibrinolytic activity, and endothelial dysfunction in dual-antiplatelet therapy: involvement of factors other than platelet aggregability in Virchow's triad.
Eur Heart J  (2008)
原著論文3
宮田敏行、宮下光太郎、宮田茂樹、他
抗血小板薬並びに抗凝固薬の標準化に関する遺伝子解析研究
脳卒中 , 29 (6) , 721-725  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-