疾病予防サービスの制度に関する研究

文献情報

文献番号
200722007A
報告書区分
総括
研究課題名
疾病予防サービスの制度に関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(東京大学大学院医学系研究科 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大江 和彦(東京大学大学院医学系研究科)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 奥 真也(東京大学大学院医学系研究科)
  • 林 同文(御茶ノ水聖橋クリニック)
  • 水嶋 春朔(国立保健医療科学院)
  • 古井 祐司(東京大学大学院医学系研究科)
  • 興梠 貴英(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病予防事業の効果を検証し、疾病予防サービスが普及するための課題を抽出する。
研究方法
全国保険者へのアンケート調査により、健診の事業運営の円滑化や受診促進の課題を整理した。特定健診での標準データ形式が規定されたことから、健診機関、医療保険者での運営の円滑化を支援する観点から、フリーソフトウェアの研究開発を進めた。健診・レセプトデータの突合分析により、生活習慣病が重症化する対象者の抽出や階層化ごとのコスト把握の可能性を検証した。効果志向の保健指導のプログラムの研究・実施検証を行うと同時に、介入前後でメタボリックシンドローム該当者・予備群の改善度を分析した。最後に、健診データと介入結果を用いて、医療保険者が保健事業として予防効果を最大化する方策を検討した。
結果と考察
保険者アンケート結果より、健保の被扶養者(健診受診率16.7%)、国保の被保険者(同15.5%)で受診の促進が課題とされた。一方、被保険者アンケート結果より、健診未受診者の78.5%が受診を希望することが明らかとなり、啓発と健診の体制整備による解決の可能性が示唆された。情報システム担当者を有するのは2割に満たない保険者であり、健診データの標準化に基づく流通・活用に障害となる可能性が示唆された。特定健診ではHL7 CDA Rel2.Level2準拠の標準データ形式が採用されることとなり、健診機関、保険者を支援するフリーソフトウェアを本研究班で開発し、事業運営に資する研究成果の提供を進めた(http://tokuteikenshin.jp/)。健診データをレセプトと突合した結果(n=6,760)、ポピュレーション介入の重要性がデータ上で示唆された。先行的に実施した特定保健指導プログラムの継続率は94.7%で、メタボ該当者及び予備群はプログラム実施後に47.2%減少し、一定の効果が認められた。しかしながら、参加率は2割程度にすぎず、特定保健指導の初回参加率をあげるためには、情報提供により感度を上げる必要性が示された。一方、健保の5年間の健診データの分析結果では(n=3,750)、情報提供群からメタボ該当者になる割合は年間4.8%であり、悪化者数が特定保健指導群からの改善者数を大きく上回る。メタボ減少の目標達成には、情報提供により悪化者を減じることが重要であることが明示された。
結論
階層化に基づき実施した保健指導には一定の介入効果が認められた。また、生活習慣病の減少を実現するためには、対象者全員に対して個々の特性に応じた「情報提供」とメタボ予備群及び該当者に対する「特定保健指導」の戦略的な組合せが不可欠であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200722007B
報告書区分
総合
研究課題名
疾病予防サービスの制度に関する研究
課題番号
H17-循環器等(生習)-一般-011
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
永井 良三(東京大学大学院医学系研究科 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大江 和彦(東京大学大学院医学系研究科)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 奥 真也(東京大学大学院医学系研究科)
  • 林 同文(御茶ノ水聖橋クリニック)
  • 水嶋 春朔(国立保健医療科学院)
  • 古井 祐司(東京大学大学院医学系研究科)
  • 興梠 貴英(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
予防効果を志向する生活習慣病予防の事業スキームを検討し予防事業の普及に資する。
研究方法
米国USPSTFのシステマティックレビュー及びエビデンスの抽出法を適用し、わが国の基本健診の有効性を検討した。健診データの標準様式の検討では、健診機関・保険者相互のデータの流通、仕様の安全性、バリデーション可能性、信頼性などを考慮した。全国保険者へのアンケート調査により、健診の事業運営の円滑化や受診促進を実現する課題を整理した。健診・レセプトデータの活用研究では、生活習慣病のリスクの把握や重症化する対象者の抽出、階層化ごとのコスト把握の可能性を検証した。数十の健康保険組合の協力のもと、保健指導のプログラムの研究及び効果検証を行った。また、意識を啓発する先行的な情報提供事業を実施し、参加率や二次的効果の可能性を検討した。複数年の健診データを用いて生活習慣病の悪化状況を把握し、保健事業の最適化を検討した。
結果と考察
わが国の基本健診の項目ごとに対象疾患と推奨レベルを明示した。特定健診制度下でHL7 CDA Rel2.Level2準拠の標準データ形式が採用されることとなり、健診機関、保険者を支援するフリーソフトウェアを開発した(http://tokuteikenshin.jp/)。全国保険者アンケート結果より、健保の被扶養者(健診受診率16.7%)、国保の被保険者(同15.5%)で受診の促進が課題とされたが、健診未受診者の78.5%が受診を希望しており、啓発と健診の体制整備による解決の可能性が示された。先行的に実施した特定保健指導プログラム(n=817)により、メタボ該当者及び予備群はプログラム実施後に47.2%減少し一定の効果が認められた。しかし、参加率は2割程度にすぎず、特定保健指導の初回参加率をあげるためには、情報提供により感度を上げる必要性が示された。被扶養者への情報提供事業(n=27,000)では、啓発誌及び問診票を送った結果、48%がプログラムに参加し啓発効果が示された。健保の5年間の健診データの分析結果(n=3,750)では、情報提供群からメタボ該当者になる割合は年間4.8%であり、悪化者数が特定保健指導群からの改善者数を大きく上回った。メタボ減少の目標達成には、情報提供により悪化者を減じることが重要であることが明示された。
結論
医療保険者が主体となった生活習慣病の予防事業において一定の予防効果が認められた。予防効果を最大限にするためには、個々の特性に応じた「情報提供」の徹底と効率的な「特定保健指導」の実施が不可欠となる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-04-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200722007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療保険者をフィールドとして、生活習慣病の予防事業として「情報提供」「特定保健指導」を実施・検証したところ、一定の介入効果を認めた。成果は学会発表、シンポジウムなどを通じて関係者へ周知を図り、医療保険者や医療専門職からは、プログラム内容や実施方法、困難点などに関する問い合わせなど反響が大きかった。また、医療保険者の経年データより、情報提供群から特定保健指導群への悪化が特定保健指導による効果を打ち消すことが示されたことは、今後の予防事業の組み立てに寄与すると考えられる。
臨床的観点からの成果
健診・問診データに基づき、専門的かつ継続的に実施した生活習慣病の予防介入に効果が表れたことには臨床的意義がある。さらに、階層化という手法を導入し、被保険者のリスク度に基づく資源の配分を試行し成果が認められたことは、今後、予防効果を最大化する階層化の研究に重要な役割があることを示唆している。90年代後半より欧米で導入された疾病管理(主に三次予防)では、階層化アルゴリズムが確立されており、当研究班の一次予防での試行結果を米国疾病管理学会で発表したところ、大きな反響を得た。
ガイドライン等の開発
検討会・審議会等
「生活習慣病健診・保健指導の在り方に関する検討会」(2005年)
厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会「今後の生活習慣病対策の推進について(中間とりまとめ)」(2005年9月15日)
「標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会」(2006年)
ガイドライン・通知等
「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」(2007年)
「標準的な健診・保健指導に関するプログラム(確定版)」(2007年)
特定健康診査・特定保健指導に関する通知(2008年)
その他行政的観点からの成果
医療保険者を実施主体とする保健事業により生活習慣病の予防効果が求められたことは、臨床的な意義にとどまらず、予防事業のスキームの検討に資する成果であったと考えられる。さらに、医療保険者の経年データより、情報提供群から特定保健指導群への悪化が「特定保健指導」による効果を打ち消すことが示されたことは、予防事業の組み立てに重要な示唆を与えた。今後、通知等を通じて医療保険者の事業構築に具体的な知見を示すことが期待される。
その他のインパクト
予防事業の効果などに関して、医療保険者や事業主に対するシンポジウムを開催し、特に医療保険者の保健事業の検討に有用な情報を提供した。さらに、研究成果概要をアンケート調査に併せて、全国の保険者へフィードバックした。健診データの標準化に関しては、研究班でホームページを開設し、研究成果や国での規定事項等を公開するだけでなく、システムベンダーに対しては研修会を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
5件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
森山美知子、古井祐司他
医療機関における患者教育の実態及び疾病管理サービスの利用意向に関する調査
病院管理 , 43 (1) , 47-58  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-