情報システムによる病院管理と経営の改善に関する研究

文献情報

文献番号
199700347A
報告書区分
総括
研究課題名
情報システムによる病院管理と経営の改善に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
下村 健(健康保険組合連合会)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤隆正(医療法人渓仁会手稲渓仁会病院)
  • 河北博文(医療法人財団河北総合病院)
  • 竹田秀(財団法人竹田綜合病院)
  • 矢野一郎(医療法人洛和会音羽病院)
  • 松村耕三(財団法人磐城済世会松村総合病院)
  • 大野秀樹(健康保険組合連合会大阪中央病院)
  • 田間惠美子(大阪大学医学部保健学科)
  • 川渕孝一(国立医療・病院管理研究所)
  • 須藤武徳(健康保険組合連合会)
  • 畑實(宗教法人淀川キリスト教病院)
  • 山口治紀(医療法人鉄蕉会亀田総合病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 情報技術開発研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療制度改革の一環として国立病院を中心にした急性期における疾患群別1入院定額払い方式(DRG/PPS)の試行のための準備が進められている。また、地域医療支援病院の創設によって医療機関の類型化がさらに強化されつつある。診療報酬点数改訂でも在院日数逓減制が強化される。 このような医療供給システムの激動する中で、自らの病院をどのような類型に位置づけるべきか、地域医療マーケットの中でどのようなサービスミックスを前提に施設、スタッフ等のストラクチャーを整備していくべきかなどの中・長期的課題(ストラクチャーに関連)の検討がますます重要となってきている。
また、DRG/PPSは病院に対して、医療技術の管理と診療プロセスの標準化を求めるものであり、そのためにはDRG分類ごとに診療行為の内容やアウトカムである在院日数や診療報酬額、転帰などについても定量的に評価できるシステム対応が求められることになる。現在の病院における情報システム化の普及を考えると、大多数の病院は医事請求システムであるレセコンの導入に留っているのが実態といえる。これらの大多数の病院が、現在稼働中のレセコンを使って、上記の課題検討やシステム化対応に応える方法の提示が病院の経営にとって有効であると同時に、医療供給システムの円滑な構造移転を支援できる可能性から受療者である国民や行政にとっても重要な研究といえる。
研究方法
1)レセコンシステムの機能概要の研究
2)レセコンデータ活用上の制約の抽出
3)臨床から見た病院経営と管理のための定量的評価項目の抽出
4)評価項目の試行による検証
5)レセコン活用の改善策の検討
結果と考察
研究結果
1)レセコンシステムの機能調査
現在の一般的レセコンの機能、マスター類の特徴、データの精度とデータファイルの構造などから、以下のことがいえる。
?数字病名等のマスター類の施設間による不統一
・病名マスターは、メーカー各社が独自のものを提供するとともに、各病院で独自のマスターを作成している。
・ICD9等のカテゴリー分類コードを入力できる機能を持っているが、入力している病院が少なく、病名カテゴリーごとに集計し、病院間での比較が不可能である。
・術式についても、病院によってICD・9・CMと点数表コードを使っているところに2分される。さらに独自のコードを設定している。
?データの保有期間
・アクティブなファイルは3~6ヶ月間の保有である。
・機能的に1入院単位に数ヶ月間のファイルを通した集計が準備されていない。
?病名の精度の問題
・レセプトの病名から入院の原因となった真の病名の特定ができない。
2)定量的評価項目の抽出
以上の制約の中でも、データのダウンロードさえできれば、データ集計を市販の汎用ソフトを活用したりして、かなりの統計分析が可能であることも判明した。
もともとレセコンが持っているデータ項目をフルに活用すること及び財務データとの組み合わせによって、以下のような分析ができることもわかった。
?マーケット調査・分析
・診療圏内の地区別、年齢別、診療か別患者数など
・ケースミックス分析(ICD9を入力すれば他との比較も可能)
? 診療内容分析
・ケース別入院~退院の日別診療行為分析(ケアマップ的表現)
・疾患別診療行為分析(病名の精度カテゴリー入力がポイント)
・疾患別診療行為の病院間比較
?アウトカム分析
・疾患別平均在院日数
・ 〃 死亡率
・ 〃 診療報酬
?生産性分析
・医師1人当たり収益、科別・病棟別収益
・医療技術部門技師1人当たり収益など
考察
1)レセコンによる経営・管理指標の可能性について
全ての指標に対応できるわけではないが、さまざまなデータ活用の可能性があることが確認できた。
2)データ精度について
病名については、レセプトの第1番目に主病名を記載するなどの病院側の努力の余地があることが判明した。
3)ベンチマーキングの可能性について
マスターの統一によって、最小限カテゴリー分類の統一によって、ベンチマーキングが可能であることが確認できた。
結論
1)目的に述べたとおり、各病院は早急に経営と管理の強化のためのシステム強化が必要であるが、現在所有している情報システムの活用によって、かなりの対応が可能となる。
2)レセコンの活用を強化するには、各レセコンメーカーが月別データをパソコンにダウンロードする機能を提供すべきと考える(そこから先の分析は、汎用ソフトで各病院が対応できる)。
3)コードの統一に厚生省、MEDISで取り組み中であるが、統一コードをメーカー及び病院が使うインセンティブを強化する対策が制度的に必要と考えられる。
4)このようなことを通じて、病院における情報システム化が経営的ニーズと一致することで、普及する土壌が強化されよう。

公開日・更新日

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