文献情報
文献番号
199700346A
報告書区分
総括
研究課題名
ICカード情報の標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 隆(京都大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 情報技術開発研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ICカード利用の医療カード(以下IC医療カードと呼ぶ)は、広域利用により、重複検査や2重投薬の回避など患者の危険回避や医療経済上の効果、quality careへの貢献など、重要な役割を期待されている。そこでIC医療カードの普及促進に資するため、共通利用や広域使用による利便性を高める各種アプリケーションの標準化について調査研究を行った。
研究方法
研究協力者の参加を得て次の5項目を実施した。
1.多施設診察カード共用機能
2.与信機能付与
3.ミニマムクリニカルデータセット
4.薬歴データ管理
5.救急情報
なお健康保険証は、近く1人1枚化が計画されており、欧州の一部ですでに実施されたように、本邦でもそれを機にICカード化を開始すべきと考える。その理由は、IC医療カードの有用なアプリケーション普及促進に必須のインフラストラクチャーの整備を可能にするからである。したがって、ここで検討するアプリケーションはICカード化保険証との共用を前提とする。
1.多施設診察カード共用機能
2.与信機能付与
3.ミニマムクリニカルデータセット
4.薬歴データ管理
5.救急情報
なお健康保険証は、近く1人1枚化が計画されており、欧州の一部ですでに実施されたように、本邦でもそれを機にICカード化を開始すべきと考える。その理由は、IC医療カードの有用なアプリケーション普及促進に必須のインフラストラクチャーの整備を可能にするからである。したがって、ここで検討するアプリケーションはICカード化保険証との共用を前提とする。
結果と考察
1.多施設診察カード共用機能
各診療機関現行番号の独自性、診察カード内容の多様性を維持しつつ多施設での共通利用性確保のため、IC医療カード上の共用診察カード機能として、医療機関コードにレセプト請求コード、これに患者番号やカルテ番号をペアで記録し、データの記載法として国際標準であるデータとタグ利用のSGML使用を提案した。
これによりレセプト請求用のユニークな診療機関コードのもとに、複数医療機関での患者番号やカルテ番号の継続利用、患者番号やカルテ番号の文字数や使用文字種の不統一性への対処、さらに診療機関追加への柔軟性確保が可能となる。
2.与信機能付与
決済機能付与による支払いの簡素化、医療費支出のログ、カードの統合化による利便性の増強を検討した。その結果、安全性の観点から与信機能としては医療費支払に限定、決済種別として先行のICカード決済機能に準ずることを提案した。
考慮すべき点としては、IC医療カード発行主体と与信サービス提供者の責任限界の取決め、カード表面上の利用方法(顔写真、エンボス、磁気ストライプなど)、法的・制度的整備、決済種別の選択、カード有効期限の取扱いなどの課題がある。
3.ミニマムクリニカルデータセット
掛り付け医以外の医師に不時の受診時、適切で素早い医療遂行のため、IC医療カード上の臨床データの最小セットとして、主要成人病の重要度、情報の継続性、普遍性などを考慮し、標準化セットの提案を試みた。限定された記憶容量のICカードではセット内容について明快な結論を出せなかった。代案として、掛り付け医が他医へのメッセージとする紹介状の記録を提案した。
診療に必要な医学情報は症状の種類や程度、患者の背景などによって大きく異なるため、標準化データセットより、その患者の重要な情報を要約した個々の臨床情報(紹介状)の記載がより適しているといえる。
4.薬歴データ管理
薬歴管理に必要な情報項目の整理と、電子化処方箋による医療機関から保険薬局への情報伝達について検討を行い、それぞれのデータセットの提案を行った。
IC医療カード上の電子化処方箋は、安全性、処方箋の患者への直接交付などを考慮すると、FAXやネットワーク伝送より有用である。
電子化された処方情報の伝達は、保険薬局での相互作用のチェックや長期的な薬歴管理上大きな支援となりうる。また重複投与回避など、処方支援機能が期待される。
今後の課題としては、データとしての医薬品コードの標準化などの基盤整備があげられる。
5.救急情報
頻度の高い73救急疾患の基礎疾患や重要な患者データから、救急時に必要とする最大公約数的情報項目の抽出を試みたが、困難と判明。結局薬剤服用歴あるいは服用中の薬剤名、薬剤アレルギーの有無とその薬剤名、既往歴あるいは現罹患疾患名の明示が最小限必要との結論を得、(財)医療情報システム開発センター編集「保健医療カードシステム標準化マニュアル」の「救急情報」分野の項目にアレルギー歴を追加した標準化案を提案した。
各診療機関現行番号の独自性、診察カード内容の多様性を維持しつつ多施設での共通利用性確保のため、IC医療カード上の共用診察カード機能として、医療機関コードにレセプト請求コード、これに患者番号やカルテ番号をペアで記録し、データの記載法として国際標準であるデータとタグ利用のSGML使用を提案した。
これによりレセプト請求用のユニークな診療機関コードのもとに、複数医療機関での患者番号やカルテ番号の継続利用、患者番号やカルテ番号の文字数や使用文字種の不統一性への対処、さらに診療機関追加への柔軟性確保が可能となる。
2.与信機能付与
決済機能付与による支払いの簡素化、医療費支出のログ、カードの統合化による利便性の増強を検討した。その結果、安全性の観点から与信機能としては医療費支払に限定、決済種別として先行のICカード決済機能に準ずることを提案した。
考慮すべき点としては、IC医療カード発行主体と与信サービス提供者の責任限界の取決め、カード表面上の利用方法(顔写真、エンボス、磁気ストライプなど)、法的・制度的整備、決済種別の選択、カード有効期限の取扱いなどの課題がある。
3.ミニマムクリニカルデータセット
掛り付け医以外の医師に不時の受診時、適切で素早い医療遂行のため、IC医療カード上の臨床データの最小セットとして、主要成人病の重要度、情報の継続性、普遍性などを考慮し、標準化セットの提案を試みた。限定された記憶容量のICカードではセット内容について明快な結論を出せなかった。代案として、掛り付け医が他医へのメッセージとする紹介状の記録を提案した。
診療に必要な医学情報は症状の種類や程度、患者の背景などによって大きく異なるため、標準化データセットより、その患者の重要な情報を要約した個々の臨床情報(紹介状)の記載がより適しているといえる。
4.薬歴データ管理
薬歴管理に必要な情報項目の整理と、電子化処方箋による医療機関から保険薬局への情報伝達について検討を行い、それぞれのデータセットの提案を行った。
IC医療カード上の電子化処方箋は、安全性、処方箋の患者への直接交付などを考慮すると、FAXやネットワーク伝送より有用である。
電子化された処方情報の伝達は、保険薬局での相互作用のチェックや長期的な薬歴管理上大きな支援となりうる。また重複投与回避など、処方支援機能が期待される。
今後の課題としては、データとしての医薬品コードの標準化などの基盤整備があげられる。
5.救急情報
頻度の高い73救急疾患の基礎疾患や重要な患者データから、救急時に必要とする最大公約数的情報項目の抽出を試みたが、困難と判明。結局薬剤服用歴あるいは服用中の薬剤名、薬剤アレルギーの有無とその薬剤名、既往歴あるいは現罹患疾患名の明示が最小限必要との結論を得、(財)医療情報システム開発センター編集「保健医療カードシステム標準化マニュアル」の「救急情報」分野の項目にアレルギー歴を追加した標準化案を提案した。
結論
ICカード健康保険証の実施を前提として、IC医療カード付加価値向上のための各種アプリケーション標準化等の検討を行った。研究開始当初の予定と異なった結果を得たものもあったが、十分妥当性に富むものである。これらの結果を検証するべく、早期に多機能IC医療カードシステムのしかるべきパイロット実験の実施を望みたい。
公開日・更新日
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