標準化における国際調和に関する研究

文献情報

文献番号
199700345A
報告書区分
総括
研究課題名
標準化における国際調和に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
木村 通男(浜松医科大学医学部附属病院医療情報部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 情報技術開発研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外で開発され、多くのユーザを持つ医療情報規格の例として、処方など各種オーダ、検査結果などのためのHL7、画像および付帯情報のためのDICOMがあげられる。しかしこれらもそのままでは日本では利用しにくい点も存在する。これがどういった問題点であり、どのような改善点が必要かを検討し、これらを規格の母体に報告することにより、真の国際標準規格のあるべき姿を考え、国際的協調体制を我が国を含めて取ることが可能であることを示す。また、波及効果としては、こういった規格の日本での利用が促進されることがあげられる。
研究方法
患者基本情報、処方、検体検査結果、画像、構造化報告書のそれぞれについて、有識者を召集し、これらを日本で用いるための問題点、必要な改善点を明確化した。その結果をまず英文化して公開し、その内容を、それぞれの規格母体に報告、改善提案をおこなった。また、この結果は、これらの規格を日本で用いる際に利用すべき指針として国内に公表した。
結果と考察
DICOMの画像データ規格については、これがすでに日本で利用されだしていることでも判るが、大きな問題点はなかった。但し、この形式の画像データファイルを、症例蓄積目的で利用した場合、どのような基本情報を検索用にタグとして出しておくべきかについては、新しく検討し、結果を得た。DICOMの構造化報告書のデータ形式は、たいへんよく構造化されており、画像検査報告だけでなく、医療の他の報告書の形式としても利用できることが判明した。そういった広い用途を考えた時に、どのようなタグが必要となるかについて、新しく検討し、結果を得た。以上2つについては、1997年11月の北米放射線学会の際におこなわれたDICOM委員会の議題として取り上げられ、今後の拡張の際に含まれることが定められた。HL7については、問題点は、人名などの日本語記述などにとどまるものではなく、我彼の医療文化の相違に基づくものが多かった。具体的には、処方における、処方単位の概念、散剤の対応、処方箋必要要件の差(1回投与量か1日投与量か)、服薬時期指定方法など、検査における、セット検査の詳細内容の渡し方、検査手法の指定のし方などである。こういった点は、1998年1月のHL7 Annual Meeting に議題として出され、v.2.3.1という新版として4月の会議で採択されることになった。また、昨年度までの、電子カルテに関する厚生省情報技術開発研究事業の成果物であるMML規格を、これらHL7, DICOMなどと組み合わせて用いると、患者情報の交換や蓄積に有用であることが明らかとなった。上までで述べた改善点や、MMLファイルとの結合のし方は、医療情報交換規格運用指針MERIT-9として、和文英文両方で公開した。国内では早速、処方、検査結果、患者基本について、国立大学病院共通開発ソフトウエアである治験情報管理システムにおいてこれが採用された。患者基本、処方、検体検査結果、画像などは、比較的記述方式に我彼の差のない分野である。それでも今回これらについて標準的な情報交換が可能であるとなった大きな要因は、データ形式だけでなく、検査項目コードや薬剤コードなどが、日本臨床病理学会や病院薬剤師会などの努力で標準化されてきていたことである。一方、診療情報を形成する他の重要なものとして、病名記述、所見記述などがある。これらは、記述フレームワークも文化的な相違が大きいと思われる。中間的なものとして、処置/手術、生理検査結果などがあげられ、次の段階としては、これらの記述のための指針を制定することが、適当であろう。海外で策定された規格を日本で使うための検討によって、医療文化の我彼の差が明らかになったことは望外のよろこびであった。その一方で、規格制定母体そのものも、
異なる国での利用経験や問題指摘によって、より国際的な規格となることを大変歓迎しており、この方法での国際協調が可能であり、望ましいものであることが示された。
結論
海外の規格を日本で用いる際の問題点、改善点を、まず国内で検討し、その結果を制定母体に改善提案した。その内容は、それぞれの規格の次回改版に盛り込まれる。一方、これら規格と、日本で生まれたMMLとを組み合わせて用いる方法が、患者情報交換と蓄積に有効であることが示され、内外に開示されている。こういった方式での国際協調は、可能であり、望ましい。また、この運用指針は、国内ではすでに国立大学病院で利用されはじめている。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)