成人T細胞白血病(ATL)に対する同種幹細胞移植療法の開発とそのHTLV-1排除機構の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200721053A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病(ATL)に対する同種幹細胞移植療法の開発とそのHTLV-1排除機構の解明に関する研究
課題番号
H19-がん臨床-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 純(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木真理(東京医科歯科大学 大学院研究科免疫治療学分野)
  • 松岡 雅雄(京都大学ウイルス研究所)
  • 豊嶋 崇徳(九州大学医学部 遺伝子・細胞療法部 )
  • 朝長万左男(長崎大学医学部 原研内科)
  • 宇都宮 與 (財)慈愛会 今村病院分院 血液内科 )
  • 谷口 修一 (虎の門病院 血液内科 )
  • 田野崎隆二(国立がんセンター中央病院 臨床検査部 )
  • 増田 昌人(琉球大学医学部 第二内科 )
  • 鵜池 直邦 (独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 血液内科 )
  • 今村 雅寛(北海道大学大学院 医学研究科 )
  • 谷脇 雅史 (京都府立医科大学大学院 分子病態検査医学 血液腫瘍内科)
  • 山中 竹春(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 臨床研究部 腫瘍統計学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
36,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATLに対して有効なミニ移植療法を開発する。またHTLV-1排除機構を解明して新たな免疫療法に応用する。
研究方法
1)血縁者間末梢血幹細胞を利用したミニ移植療法の検討(第3期試験)
2)非血縁者間幹細胞を利用したミニ移植の検討
 (2-1)非血縁者間骨髄移植(UBMT)の検討
 (2-2)非血縁者間骨髄を利用したミニ移植(第4期試験)の検討
3)移植療法に伴う基礎的解析
 (3-1)HTLV-Iプロウィルス量動態に関する研究
 (3-2)ミニ移植後の造血細胞動態に関する研究
 (3-3)特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の解析
 (3-4)分子生物学的解析:
 (3-5)同種造血幹細胞移植後の抗白血病効果を促進する試みを実施した。
結果と考察
1)10例が登録され、9例の移植を実施した。
2)(2-1)81例のUBMT症例を解析した。生着不全は問題とはならず、非血縁ドナーからの
     ミニ移植のfeasibilityはあると考えられた。
  (2-2)UBMT(ミニ移植)の第I相試験(第4期試験)の実施計画書を作成した。倫理委員会の
     承認を経て臨床試験を開始する。
3)(3-1)登録36例中21例でHTLV-1プロウイルス量がミニ移植後検出限界以下となった。
  (3-2)全例でドナー・レシピエントの識別が可能であり、長期寛解例でも完全キメラが維持
     されていた。
  (3-3)未治療ATLにも、TaxのCTLメジャーエピトープが生体内で発現され、これを認識する
     CTLが維持されている例が存在することを明らかにした。メジャーエピトープ配列の
     ペプチドを標的とする免疫療法により、Tax特異的CTL応答が回復する可能性がある
     と考えられた。
  (3-4)第2期試験の11症例を解析し、1例でtax遺伝子内に1塩基の挿入を認めた。この挿入
     によりフレームシフトが起こりTaxと30アミノ酸が一致するが、その後は全く異なる
     アミノ酸配列となるタンパク質が産生され、Taxは産生されないと予想された。
  (3-5)NKT細胞によるGVHDとGVLの分離の可能性を初めて示した。
結論
血縁者間末梢血によるミニ移植の安全性が確立された。来年度は非血縁者間骨髄による第1相試験を
開始する。付随基礎研究から、ミニ移植における抗HTLV- 1免疫の役割が明らかになりつつある。
今後は、ウイルス抗原を標的としたATLに対する免疫療法を計画する

公開日・更新日

公開日
2008-05-01
更新日
-