遠隔診断の技術を用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200721036A
報告書区分
総括
研究課題名
遠隔診断の技術を用いたがんの病理診断支援のあり方に関する研究
課題番号
H18-がん臨床-一般-024
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松野 吉宏(北海道大学病院病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 澤井 高志(岩手医科大学病理学第一講座)
  • 飯嶋 達生(茨城県立中央病院)
  • 有廣 光司(広島大学病院)
  • 真鍋 俊明(京都大学医学部附属病院病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
14,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全国のがん患者それぞれに最適で質の高いがん医療を提供するためには、各診療施設の病理医を効率よく迅速に支援することにより、高い水準の病理診断を均てん化する必要がある。がん医療水準の均てん化の推進に資する遠隔病理診断、なかでもバーチャルスライド(VS)技術を用いた遠隔診断支援は、有効性が大いに期待されるところである。本研究は、VSの特性を生かした病理診断支援のあり方を検討することを目的とする。
研究方法
本年度は、がん診療の質的向上と均てん化の観点からVSをどのように役立てていくことができるか、施設や地域における取り組みの実例を集積し、発展性や問題点を検討してきた。あわせて、各自治体や各医療圏、地域などにおける病理診断体制の実情を勘案し、どのような病理診断支援拠点網を、どのような手順で構築し運用していくべきか検討してきた。
結果と考察
診療における病理診断支援の観点から、有効なVSの活用法として1)施設を越える術中迅速診断や診断コンサルテーションの推進、2)多施設共同臨床研究等における病理中央診断の効率化、3)病理診断精度の検証や研究の効率化、4)がん取扱い規約など標準的な病理診断基準の効果的な提示による普及、5)自施設内や地域勉強会等における病理画像共有による相互研修推進、6)患者・家族への説明資料として供覧、などが挙げられる。
これまでの本研究により、病理診断基準の標準化や、専門家による病理中央診断への利用などに有効性が実証されたが、地域においてVSの特性を生かした診断支援網整備を実現し根付かせるには設備投資や運用経費が多額、画像データ保管の場所や技術支援に加え、各地域における診断拠点網構築への組織的な取り組みが不十分などの障害があることも示された。北海道、茨城県のほか、広島県を中心とする中国・四国地区をモデルとして地域単位の支援網形成についての取り組みや病理学会支部への働きかけを継続している。併せて、がん診療連携拠点病院をはじめとする医療機関でのVSの有効利用や機器導入を推進するため、VSによる国内連携、地域内連携、施設内連携の事例を集積し、小冊子として情報公開する作業を進めている。
結論
極めて有望な技術であるVSを用いた病理診断支援網を構築し、有効に運用するためには、技術面の進歩に加えて地域や各施設での需要や実情にあわせた活用方法をさらに提示していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-