がん患者の医療機関受診に関する動態調査

文献情報

文献番号
200721032A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の医療機関受診に関する動態調査
課題番号
H18-がん臨床-一般-020
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
津熊 秀明(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター調査部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 徹(山形県立がん・生活習慣病センター)
  • 藤田 学(福井社会保険病院)
  • 西野 善一(宮城県立がんセンター)
  • 内藤 みち子(新潟県立がんセンター新潟県がん登録室)
  • 岸本 拓治(鳥取大学医学部医学科社会医学講座環境予防医学分野)
  • 早田 みどり((財)放射線影響研究所長崎研究所疫学部)
  • 三上 春夫(千葉県がんセンター研究局疫学研究部)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンターがん予防・情報研究部門)
  • 西 信雄((財)放射線影響研究所広島疫学部腫瘍登録室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
9,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域がん登録資料に基づき、がんの部位・進行度などの特性毎に、患者居住地と診断・治療医療機関・所在地との関連を分析し、地域における患者動態を明らかにすること、また、患者動態と生存率との関連についても分析し、がん医療水準の均てん化推進の基礎資料とすること。
研究方法
今年度は、検討するがんを主要5部位以外にも拡げるとともに、大阪、山形、福井以外に、一定の精度基準をクリアする宮城、新潟、千葉、神奈川、愛知、広島、鳥取、長崎の各県がん登録に協力を求め、地域における患者動態の特性を分析した。
結果と考察
患者居住地と診断医療機関との関連は4府県で解析した。2次医療圏での完結割合は県別には65%?92%に分布したが、医療圏によっては40%以下であった。主治療医療機関との関連は6府県で解析でき、2次医療圏での完結割合は63%?95%に分布した。しかし完結割合が極端に小さい2次医療圏もあった。拠点病院で主治療を受けた患者割合は9府県において分析可能で25%?70%に分布した。拠点病院での治療割合は、がんの拡がりが早期の患者ほど高い傾向を認めた。主要5部位の進行度別5年相対生存率の解析が5府県において可能であった。拠点病院群での生存率が概して良好で、その差は、胃・大腸では「領域」、肝・肺では「限局」「領域」、乳腺では「遠隔」で大きい傾向を認めた。しかし地域差も存在した。治療医療機関数と累積治療件数との関連を7府県において分析し、さらに、施設別治療件数と5年生存率の関連を3府県において分析した。その結果、わが国では概して治療施設の集中化が進んでいないこと、治療件数の少ない施設で治療を実施した患者の生存率が低い傾向にあることが示唆された。
結論
患者居住地と診療医療機関・所在地との関連を明らかにした。
がん診療連携拠点病院での治療割合は、大阪で最小(25%)、福井で最大(70%)となった。愛知と宮城を除き、拠点病院での治療割合は、がんの拡がりが早期の患者ほど高い傾向を認めた。
拠点病院で治療を実施した患者の生存率は、地域全体の生存率と比較し、概して良好なことが判明した。差は、胃・大腸では「領域」、肝・肺では「限局」「領域」、乳腺では「遠隔」で大きい傾向を認めた。
がん治療施設の集中化が進んでいないことが明らかになった。また、治療件数の少ない施設で治療を実施した患者の生存率が低い傾向を認められた。主要5部位でも月間治療件数が少ない施設で治療している患者が相当数あり、均てん化を達成する上で、集中化と連携を一層推進することが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2009-10-19
更新日
-