画像を用いたバーチャル技術に関する研究 研究期間(年度) =1997

文献情報

文献番号
199700342A
報告書区分
総括
研究課題名
画像を用いたバーチャル技術に関する研究 研究期間(年度) =1997
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
辰巳 治之(札幌医科大学医学部解剖学第一講座)
研究分担者(所属機関)
  • 村上弦(札幌医科大学医学部解剖学第二講座)
  • 高沖英二(メタ・コーポレー・ジャパン)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 情報技術開発研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
米国医学図書館(NLM)で行なっている Visible Human Projectのデータや情報G7の subproject 8 によるMulti-lingual Anatomical Digital Data Baseの活動を参考にし、人体の解剖学的構造をバーチャル技術で表現し活用するのに必要な要素技術の調査研究を行い、それに基づきプロトタイプの開発を行い、画像を用いたバーチャル技術により教育・研究活動を促進するのが目的である。
研究方法
人体の構造に関する基礎的な種々のディジタルデータを蓄積する際に、容易に大量データを蓄積でき、整理できる方法を開発し、バーチャル技術で表現できるようにする。そして、その各種データをもとに関連づけ再利用が容易な方法を検討し、それに必要な基礎技術を検討し、そのプロトタイプの開発を行なう。上記の技術開発をする一方で、具体的なデータを作成し、そのデータの再利用をしながら、次の発展を考えていく。これらのものがさらにネットワークを介して素早く参照できるようにネットワーク技術の評価を行ない、IntranetおよびInternetからも快適に使えるようにする。また、解剖学の用語を多角的に検索できるように、米国立医学図書館のプロジェクトである UMLS(Unified Medical Language System)を解析し,それを利用できるようなプロトタイプのアプリを開発し今後の応用を考える。
結果と考察
1. 虚と実のリンク:大量画像データを蓄えるシステムとして、顕微鏡、ディジタルカメラ(TVカメラを含む)、LVR(Laser Video Recoder)などを接続しシステム化した。すなわち、コンピュータから顕微鏡のステージのXY, フォーカス、対物レンズ等を制御し、アナログ・ディジタル変換をして、コンピュータに蓄積できる。大量画像を保存する際に、各データに統一した名前を付けて整理することにより、その再利用が容易になる。しかし、実際に、組織切片を観察するときにくらべ、画像を再利用する際には、非常に分かりにくいものになっている。それはコンピュータで扱える形にすると、周りとの位置関係などの付帯情報が失われ、file nameだけからでは、直感的に理解することは非常に困難である。コンピュータで扱う虚の世界と、実の世界の情報との関係をvisualに示すことにより、情報の把握を容易にする方法を模索した。
その結果、通常のプレパラートに載っている切片のイメージと、その組織切片の全体像とともに、さらに拡大した部分を同時に認識できるようなアプリケーションを開発した。全体像には、常に現在の拡大している部分がどこに対応しているかを示すように工夫した。そこで、これらの画像とともに顕微鏡ステージのXYとともに種々の条件を一度に蓄積しデータベース化できるような基礎システムのプロトタイプが出来上がった。
2. マクロ解剖学の実習書:画像を用いたバーチャル技術により、マクロ解剖学の教育の効果をあげる基礎実験として、従来手書きであった肉眼解剖の実習書(研究分担者 村上著)をディジタル化して、onlineで使用可能にした。画像などは、著作権侵害にならないようにすべて手書きでつくり直してある。また、HTML化して容易にInternetから参照できるようにし、解剖実習室に端末をおくことにより実習中に参照できるようにした。
3. ミクロ解剖学の実習書:マクロ解剖の実習書と同様に、組織学実習の手引きをディジタル化しHTML化することによりonlineで利用可能になった。この手引きでは、実際の組織画像のみならずシェーマを加えてある。そのままの組織切片だけだと情報量が多すぎる為に、ポイントを見落としている場合がある。そこで、単純化したシェーマを加えることにより学生の理解を助けるように工夫をしてある。また、組織学で拡大を上げて観察している組織が身体のどの部分であるのかをマクロの参考書で参照できるようにリンクした。
4. クリッカブルマップの利用:言葉を使って検索することも可能であるが、初学者には解剖学用語にはなじみが薄い。そこで、知りたい人体の場所を指し示す(クリックする)ことにより、その関連情報がでてくるように工夫をした。これをもとに、どの様に細かく種々の情報をリンクできるかは、これからの検討課題である。また、境界を明らかにして構造物をオブジェクト化して、取り扱うことがこれから必要になってくる。
5. 解剖学用語との結び付け、検索サービス:肉眼解剖の参考書として、Carmine D. ClementeのA Regional Atlas of the Human Bodyを使っている。そこで使われている解剖学用語から、どの図譜にその用語の示す構造物が記載されているかを調べられるように、検索機能を付け加えるとともに、関連した概念も表示されるようにした。
6. VHPの画像のhandling改良: Visible Human Projectのoriginal データは膨大で、取り扱いが困難である。そこで、見た目に変わらない程度にjpeg圧縮をして保存することにより、容量における困難さを軽減した。
7. UMLSの活用 sample:莫大な量の用語の塊であるUnified Medical Language System(UMLS)の各fileを解析し、再利用できるようにサンプルプログラムを作成し、画像とのリンク及び解剖学用語の抽出するための基礎プログラムを作成した。
結論
種々の解剖学の画像をバーチャル技術を活用して、理解しやすいように提示することを、上記の方法でチャレンジした。しかし、コンピュータ処理できるようにこれらの構造物の細かな情報を取り込んだときには、全体の中の部分としての構造物の把握がかえって難しくなるようである。今回の実験により、現実のイメージや概念、感覚などとうまくリンクし、虚の世界と実の世界を、行ったり来たりが容易になると、複雑な構造物の理解が進むと考えられた。そこで、これらの経験をもとに、さらに詳細にわたってシステムを改良し、バーチャルな世界を構築するとともに、Multi-lingual Anatomical Digital Databaseをさらに拡張し発展させたいと考えている。

公開日・更新日

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更新日
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