早期消化管がんに対する内視鏡的治療の安全性と有効性の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200721012A
報告書区分
総括
研究課題名
早期消化管がんに対する内視鏡的治療の安全性と有効性の評価に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 裕之(静岡県立がんセンター内視鏡科)
  • 二瓶 圭二(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
  • 田村 孝雄(神戸大学医学部附属病院消化器内科)
  • 田辺 聡(北里大学医学部消化器内科学)
  • 西崎 朗(兵庫県立がんセンター消化器科)
  • 土田 知宏(癌研究会有明病院消化器センター)
  • 門馬 久美子(東京都立駒込病院内視鏡科)
  • 伊藤 芳紀(国立がんセンター中央病院放射線治療部)
  • 千葉 勉(京都大学大学院医学研究科)
  • 飯石 浩康(大阪府立成人病センター消化器内科)
  • 金子 和弘(国立がんセンター東病院内視鏡部)
  • 澤木 明(愛知県立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 小山 恒男(佐久総合病院胃腸科)
  • 小林 望(栃木県立がんセンター画像診断部)
  • 田中 正博(大阪市立総合医療センター放射線腫瘍科)
  • 吉井 貴子(神奈川県立がんセンター消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
34,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治がんのひとつとされる食道がんが内視鏡診断技術の進歩によって早期の段階で発見されるようになり、より低侵襲で根治性の高い治療法の開発が求められるようになってきた。本研究では、これまで外科手術が標準治療であった粘膜下層浸潤食道がんに対し、低侵襲治療として内視鏡的粘膜切除(EMR)でtumor reductionを図った後に照射方法と照射総線量を工夫した化学放射線療法を組み合わせる非外科的治療の安全性と有効性を評価することを目的とする。
研究方法
「粘膜下層浸潤clinical stage I(T1N0M0)食道癌に対するEMR/化学放射線療法併用療法の有効性に関する第II相試験:JCOG0508」をJapan Clinical Oncology Group(JCOG)参加施設で実施する。Primary endpointは、EMR後の組織学的深達度診断により、pSM1-2かつ断端陰性と診断された患者における3年生存割合とした。Secondary endpointは、1)全適格患者の3年生存割合、2)全適格患者の無増悪生存期間、3)EMR後の組織学的深達度診断により、pM3かつ断端陰性と診断された患者における全生存期間、4)EMRによる有害事象、5)化学放射線療法による有害事象とした。予定登録数は、pSM1-2かつ断端陰性の患者を82名(全適格患者で137名程度を予定)登録する。登録期間は3年を見込んでおり、登録終了後5年追跡期間する(主たる解析は登録終了後3年)。
結果と考察
本研究は、症例登録段階であるためまだ研究成果はでていない。早期消化管癌に対する内視鏡治療が諸外国より普及しているわが国において、その有用性と安全性を科学的に評価する多施設共同前向き臨床試験はこれまで実施されてこなかった。加えて、本研究では、内視鏡治療、化学療法、放射線療法と多岐にわたる治療モダリティーを組み合わせて、それぞれのメリットを生かして低侵襲かつ根治性の高い治療を実現させることを目指している。この新しい挑戦を実施するにあたり、質の高い臨床試験を行うことが必要であり、本研究に参加するすべての研究者の理解と合意が重要である。
結論
これまで外科手術が標準治療であった粘膜下層に浸潤する食道癌に対し、内視鏡的粘膜切除後に化学放射線療法を追加する新しい治療戦略に関する多施設共同臨床試験を開始した。

公開日・更新日

公開日
2008-07-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200721012B
報告書区分
総合
研究課題名
早期消化管がんに対する内視鏡的治療の安全性と有効性の評価に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 裕之(静岡県立がんセンター内視鏡科)
  • 二瓶 圭二(国立がんセンター東病院臨床開発センター)
  • 田村 孝雄(神戸大学医学部附属病院消化器内科)
  • 田辺 聡(北里大学医学部消化器内科学)
  • 西崎 朗(兵庫県立がんセンター消化器科)
  • 土田 知宏(癌研究会有明病院消化器センター)
  • 門馬 久美子(東京都立駒込病院内視鏡科)
  • 伊藤 芳紀(国立がんセンター中央病院放射線治療部)
  • 千葉 勉(京都大学大学院医学研究科)
  • 飯石 浩康(大阪府立成人病センター消化器内科)
  • 金子 和弘(国立がんセンター東病院内視鏡部)
  • 澤木 明(愛知県立がんセンター中央病院消化器内科)
  • 小山 恒男(佐久総合病院胃腸科)
  • 小林 望(栃木県立がんセンター画像診断部)
  • 田中 正博(大阪市立総合医療センター放射線腫瘍科)
  • 吉井 孝子(神奈川県立がんセンター消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
外科的切除が標準治療である粘膜下層への浸潤が疑われる臨床病期I(T1N0M0)食道扁平上皮癌に対し、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と化学放射線療法(CRT)を組み合わせた非外科的治療の有効性と安全性を評価し、低侵襲で根治性の高い治療法を開発することを目的とする。
研究方法
臨床的に粘膜下層浸潤が疑われる臨床病期I食道癌に対し、EMRを先行させ、組織学的な診断に基づいてその後の治療を以下のように振り分ける第II相試験をJapan Clinical Oncology Group(JCOG)参加施設内で開始した。1)垂直断端が陰性の場合は、原発巣が完全に切除されたと判断し、リンパ節転移のリスクを考慮した予防照射(41.4Gy, 1.8x23分割)にてCRTを行う。2)垂直断端が陽性の場合は、原発巣が残存していると判断しリンパ節転移のリスクを考慮した予防照射(41.4Gy, 1.8x23分割)に加えて原発巣に対する追加照射(9Gy, 1.8x5分割)による根治的なCRT(計50.4Gy)を行う。3)粘膜内癌であれば経過観察となるが、脈管侵襲がある場合には予防照射によるCRTを行う。放射線照射は晩期毒性の軽減と適切な照射線量および照射野の精度向上のためにCTシミュレーターを用いた3次元照射を行う新しい放射線照射法を導入した。
結果と考察
3カ年計画のなかの初年度(平成17年度)に、JCOG参加施設内で、食道癌の内視鏡診断と治療に関する品質管理の基盤を作った。また、新しい放射線照射法を導入したため、放射線治療に関する品質管理の基盤を作った。平成18年度は参加施設の内視鏡治療医・化学療法施行医・放射線治療医の意見をまとめて研究実施計画書を作成し、IRB承認後に上記第II相試験を開始した。平成19年度末で24例の症例が登録された。本試験において、内視鏡治療を応用し、臓器および機能温存ができ、かつ予後が外科的切除に匹敵する成績が得られるのであれば、手術に変わる新たな低侵襲治療法としての選択肢になると期待できる。
結論
粘膜下層浸潤が疑われる臨床病期I食道癌に対し、EMRとCRTを組み合わせた臨床試験を開始した。我が国において初めてとなる内視鏡治療を含んだ臨床試験グループを構成し試験を実行することができた。今後、この取り組みは内視鏡治療という低侵襲治療のエビデンス創生に大きく貢献すると期待できる。

公開日・更新日

公開日
2008-07-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200721012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで外科手術が標準治療であった粘膜下層浸潤食道がんに対し、低侵襲治療として内視鏡的粘膜切除(EMR)を施行した後に化学放射線療法を追加する新しい治療戦略の安全性と有効性を評価する第II相臨床試験:JCOG0508を開始した。本研究は、内視鏡治療を用いた我が国で初めての本格的な多施設共同臨床試験であり、放射線治療の面からも適切な照射線量および照射野の精度向上のためにCTシミュレーターを用いた3次元放射線照射法を導入したはじめての試験である。
臨床的観点からの成果
わが国の早期消化管がんの診断技術は世界最高レベルであり、内視鏡治療技術も同時に発展してきたが、客観的に安全性と有効性を評価する方法はなく個々の経験によるものが多かった。本研究班では、内視鏡診断と治療の標準化をはかるためにこれまで抗がん剤治療による臨床研究で実績を積んできたJCOG参加施設のなかで、内視鏡治療に関する臨床試験グループを作ることができた。また、放射線による毒性を軽減するためにCTシミュレーターを用いた3次元放射線照射法を導入した試験を我が国で始めて開始することができた。
ガイドライン等の開発
日本食道学会による食道癌診断治療ガイドラインでは、粘膜下層浸潤食道がんはリンパ節転移のリスクが浅い場合でも10-15%、深い場合には50%にもなるため追加治療が必要と推奨しているが具体的な治療法やその成績に記載はまったくない。本試験は、粘膜下層浸潤食道がんに対し追加治療として化学放射線療法を加えることでこれまで標準治療とされてきた外科切除に匹敵する成績をだそうとするもので、ガイドラインに対するひとつのエビデンスを出すことが期待されている。
その他行政的観点からの成果
食道がんは難治がんのひとつにあげられ、根治を目指すためには開胸開腹といった侵襲の大きな外科的治療が必要であった。しかし、内視鏡技術の進歩により早期発見が可能になった現在、より低侵襲治療で臓器温存・機能温存が可能な治療の開発が求められている。本試験は、内視鏡治療、化学療法、そして放射線治療を効果的に組み合わせた全く新しい非外科的集学的治療の開発を目指している。本試験の成功は、外科手術、化学療法、放射線治療といった三大治療に、低侵襲治療である内視鏡治療が新しい治療選択のひとつになることを意味する。
その他のインパクト
本試験の取り組みは、週間朝日(2008年1月18日号、2008年1月特集号)にも取り上げられ、臓器温存・機能温存が可能な低侵襲治療で根治ができることより注目されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-09-25
更新日
-