小児造血器腫瘍の標準的治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200721004A
報告書区分
総括
研究課題名
小児造血器腫瘍の標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧本 哲也(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
  • 土屋 滋(東北大学大学院医学系研究科発生・発達医学講座 小児病態学分野)
  • 駒田 美弘(三重大学大学院医学系研究科病態解明医学講座小児発達医学分野)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 藤本 純一郎(国立成育医療センター研究所)
  • 石田 也寸志(愛媛大学大学院医学系研究科小児医学分野)
  • 真部 淳(聖路加国際病院小児科)
  • 石井 榮一(愛媛大学大学院医学系研究科小児医学分野)
  • 多和 昭雄(国立病院機構大阪医療センター小児科)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学医学部小児科)
  • 加藤 剛二(名古屋第一赤十字病院第三小児科)
  • 渡辺 新(明和会中通総合病院小児科)
  • 小川千登世(聖路加国際病院小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児白血病およびリンパ腫の標準的治療法を確立するために質の高い臨床試験を実施してエビデンスを創出する。
研究方法
全国の小児がん研究グループの共同研究組織である日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)において、質の高い臨床試験に必要な基盤整備を行い、その下で臨床試験を実施する。(倫理面への配慮)臨床試験を実施するにあたって①匿名化して個人情報を保護する。②統一された説明文書を用いて文書による同意を得る。③中央研究審査委員会および施設倫理委員会の承認の下に研究を実施する。
結果と考察
研究基盤整備として生殖細胞系列遺伝子解析用検体の収集・保存と分譲に関する規約と急性リンパ性白血病(ALL)の免疫学的診断基準を作成した。臨床試験は、新たに開始されたダウン症候群に発症した小児骨髄性白血病(AML)に対するリスク別多剤併用化学療法の後期第Ⅱ相臨床試験(AML-D05)を加えて、合計11試験が実施されている。それらの登録数は、乳児ALLに対する早期同種造血幹細胞移植療法の有効性に関する後期第Ⅱ相試験(MLL03)が56例、小児Ph+ALLに対するimatinib mesylate第Ⅱ相臨床試験(Ph+ ALL04)が39例、小児成熟B細胞性腫瘍に対する後期第Ⅱ相臨床試験(B-NHL03) が178例、その付随研究である進行期小児成熟B 細胞性腫瘍に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の一次的予防的投与の有用性に関する無作為割付比較試験(B-NHL03 G-CSF) が32例、小児リンパ芽球型リンパ腫stage I/IIに対する後期第Ⅱ相臨床試験(LLB-NHL03)が7例、小児リンパ芽球型リンパ腫stage III/IVに対する後期第Ⅱ相臨床試験(ALB-NHL03)が91例、未分化大細胞型リンパ腫を対象とした国際共同研究ALCL99が81例、小児急性前骨髄球性白血病に対する後期第Ⅱ相臨床試験(AML-P05) が12例、小児AMLに対する後期第Ⅱ相臨床試験(AML-05) が144例、AML-D05が5例、小児白血病に対してフルダラビンとメルファランを前処置として用いた同種骨髄移植に関する早期第Ⅱ相臨床試験(FM-05) が3例であり、一部を除いて概ね順調に症例が集積されている。再発ALL、T-ALLの標準的治療法の確立に向けた臨床試験も準備が整い、次年度には試験開始予定である。
結論
小児造血器腫瘍に対して全国規模の質の高い臨床試験が実施できる基盤が構築され、難治性ALL、NHL、AMLの全国統一の臨床研究が実施され、わが国の小児造血器腫瘍の標準治療の確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-10-19
更新日
-

文献情報

文献番号
200721004B
報告書区分
総合
研究課題名
小児造血器腫瘍の標準的治療法の確立に関する研究
課題番号
H17-がん臨床-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧本 哲也(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター)
  • 土屋 滋(東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野)
  • 駒田美弘(三重大学大学院医学系研究科小児発達医学)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 石田也寸志(愛媛大学医学部小児科)
  • 渡辺 新(中通総合病院小児科)
  • 真部 淳(聖路加国際病院小児科)
  • 石井榮一(愛媛大学医学部小児科)
  • 鬼頭敏幸(滋賀県立小児保健医療センター)
  • 小川千登世(聖路加国際病院小児科)
  • 多和昭雄(国立病院機構大阪医療センター)
  • 鶴澤正仁(愛知医科大学医学部小児科)
  • 加藤剛二(名古屋第一赤十字病院小児医療センター血液腫瘍科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児白血病およびリンパ腫の標準的治療法を確立するために質の高い臨床試験を実施してエビデンスを創出する。また、そのために必要な研究基盤の整備を行う。
研究方法
全国の小児がん研究グループの共同研究組織である日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)において、質の高い臨床試験に必要な基盤整備を行い、その下で臨床試験を実施する。(倫理面への配慮)臨床試験を実施するにあたって①匿名化して個人情報を保護する。②統一された説明文書を用いて文書による同意を得る。③中央研究審査委員会および施設倫理委員会の承認の下に研究を実施する。
結果と考察
質の高い臨床研究に必要なデータ管理、病理・免疫・分子の各中央診断、検体保存についてシステム構築し、そのもとに11の臨床試験を実施した。登録状況は、乳児ALLに対する早期同種造血幹細胞移植療法の有効性に関する後期第Ⅱ相試験(MLL03)が56例、小児Ph+ALLに対するimatinib mesylate第Ⅱ相臨床試験(Ph+ ALL04)が39例、小児成熟B細胞性腫瘍に対する後期第Ⅱ相臨床試験(B-NHL03) が178例、その付随研究である進行期小児成熟B 細胞性腫瘍に対する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の一次的予防的投与の有用性に関する無作為割付比較試験(B-NHL03 G-CSF) が32例、小児リンパ芽球型リンパ腫stage I/IIに対する後期第Ⅱ相臨床試験(LLB-NHL03)が7例、小児リンパ芽球型リンパ腫stage III/IVに対する後期第Ⅱ相臨床試験(ALB-NHL03)が91例、未分化大細胞型リンパ腫を対象とした国際共同研究ALCL99が81例、小児APLに対する後期第Ⅱ相臨床試験(AML-P05) が12例、小児AMLに対する後期第Ⅱ相臨床試験(AML-05) が144例、ダウン症候群に発症した小児AMLに対するリスク別多剤併用化学療法の後期第Ⅱ相臨床試験(AML-D05)が5例、小児白血病に対してフルダラビンとメルファランを前処置として用いた同種骨髄移植に関する早期第Ⅱ相臨床試験(FM-05) が3例であり、稀少疾患のため研究期間内に終了は出来なかったものの一部を除いて概ね順調に症例が集積されている。現在、再発ALL、T-ALLの臨床試験を準備中である。
結論
小児造血器腫瘍に対して全国規模の質の高い臨床試験が実施できる基盤が構築された。それにより、難治性ALL、NHL、AMLの全国統一の臨床試験が進行中であり、わが国の小児造血器腫瘍の標準治療の確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-08-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200721004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臨床試験実施の手順とデータセンターが確立したことで臨床試験の質の向上が得られたことで本研究から質の高いエビデンスの創出が期待される。ALCL99臨床試験により非ホジキンリンパ腫の標準治療に組み込まれている髄腔内治療が、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)の治療においては有用性が乏しいことが証明された。また、この試験を欧州との国際共同で実施したことでデータ管理、中央診断の標準化および、国際共同のトランスレーショナルリサーチが可能となり、国際共同研究による稀少疾患の治療法開発の道筋が確立できた。
臨床的観点からの成果
乳児リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病の臨床試験が全国の小児血液がん診療施設の参加を得て開始され、問題なく遂行されていることから、これらの疾患に対するわが国の標準治療が実質的に確立したと考えられる。日本小児白血病リンパ腫研究グループを設立し、参加施設の実態調査を定期的に行い、施設基準の作成とその管理を行った。これにより小児血液がんの診療施設の質の向上と均質化が期待される。
ガイドライン等の開発
本研究の成果を踏まえて、日本小児血液学会編として小児白血病・リンパ腫の診療ガイドライン2007年版が作成された。
その他行政的観点からの成果
小児がんの長期フォローアップ体制整備の必要性を啓蒙したことで、がん臨床研究事業およびがん研究助成金において長期フォローアップ体制整備を目的とした研究課題が採択された。
その他のインパクト
読売新聞(平成17年5月10日)で当研究班の活動が紹介された。研究成果発表会(一般向け)「小児がんと闘うこどもたちのため~日本の小児がん医療のこれから~」(平成20年2月23日、大宮)で成果を紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
大園秀一、石田也寸志、栗山貴久子、他
小児がん長期フォローアップ調査報告
日本小児科学会雑誌 , 111 (11) , 1392-1398  (2007)
原著論文2
Shimada A, Taki T, Tabuchi K,et al.
Tandem duplications of MLL and FLT3 are correlated with poor prognoses in pediatric acute myeloid leukemia: A study of the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group.
Pediatric Blood Cancer , 50 (2) , 264-269  (2008)
原著論文3
Tomizawa D, Koh K, Sato T, et al.
Outcome of risk-based therapy for infant acute lymphoblastic leukemia with or without an MLL gene rearrangement, with emphasis on late effects: a final report of two consecutive studies, MLL96 and MLL98, of the Japan Infant Leukemia Study Group.
Leukemia , 21 (11) , 2258-2263  (2007)
原著論文4
Shimada A, Taki T, Kubota C,et al.
N822 mutation of KIT gene was frequent in pediatric acute myeloid leukemia patients with t(8;21) in Japan: a study of the Japanese childhood AML Cooperative Study Group.
Leukemia , 21 (10) , 2218-2219  (2007)
原著論文5
himada A, Taki T, Kubota C, et al.
No nucleophosmin mutations in pediatric acute myeloid leukemia with normal karyotype: a study of the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group.
Leukemia , 21 (6) , 1307-1307  (2007)
原著論文6
Kobayashi R, Tawa A, Hanada R, et al.
Extramedullary infiltration at diagnosis and prognosis in children with acute myelogenous leukemia.
Pediatric Blood Cancer , 48 (4) , 393-398  (2007)
原著論文7
Nagayama J, Tomizawa D, Koh K, et al.
Infants with acute lymphoblastic leukemia and a germline MLL gene are highly curable with use of chemotherapy alone: results from the Japan Infant Leukemia Study Group.
Blood , 107 (12) , 4663-4665  (2006)
原著論文8
Mori T, Takimoto T, Katano N, et al.
Recurrent childhood anaplastic large cell lymphoma: a retrospective analysis of registered cases in Japan.
Britis Journal of Haematology , 132 (5) , 594-597  (2006)
原著論文9
Ishii E, Oda M, Kinugawa N, et al.
Features and outcome of neonatal leukemia in Japan: Experience of the Japan Infant Leukemia Study Group.
Pediatric Blood Cancer , 47 (3) , 268-272  (2006)
原著論文10
Shimada A, Taki T, Tabuchi K,
KIT mutations, and not FLT3 internal tandem duplication, are strongly associated with a poor prognosis in pediatric acute myeloid leukemia with t(8;21): a study of the Japanese Childhood AML Cooperative Study Group.
Blood , 107 (5) , 1806-1809  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-09-24
更新日
-