画像情報の電子化に関する研究

文献情報

文献番号
199700339A
報告書区分
総括
研究課題名
画像情報の電子化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
小塚 隆弘(大阪府立羽曳野病院)
研究分担者(所属機関)
  • 前田知穂(京都府立医科大学)
  • 黒田知純(大阪府立成人病センター)
  • 稲邑清也(大阪大学医学部)
  • 石垣武男(名古屋大学医学部)
  • 西谷弘(徳島大学医学部)
  • 宮坂和男(北海道大学医学部)
  • 安藤裕(慶応義塾大学医学部)
  • 笹垣三千宏(大阪大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 情報技術開発研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
画像をデジタル化し電子的に保存するとともに、CRTモニターで観察し診断する環境を整備し、医療情報の効率的活用と医療費の抑制を目的とする。先ず、エックス線フィルムを画像として電子保存する為に使用するフィルムデジタイザを規格化する。次いで、可視化装置であるCRT上での物理的特性に関する検討に加え、画質評価を行い画像圧縮の臨床評価により、CRT診断の可能性を検討する。殊に、物理学的同一性のみならず、医学的同一性の検証を行うことをも必要とした。
研究方法
1)フィルムデジタイザの規格に関する研究:「法令に保存義務が規定されている医用画像情報の電子媒体による保存に関する技術基準」に則って、フィルムデジタイザを用いて電子保存する事に付いて規定すると共に、エックス線写真を画像として電子保存するために使用するフィルムデジタイザに付いて規定した。2)可視化装置CRTと圧縮画像に関する検討:デイジタル化したエックス線写真及びCT、MRI等の画像データを非可逆圧縮して電子保存の後、エックス線フィルム或いはCRT上に再現し、読影診断を行う場合の必要条件を検討した。画像の客観的評価には離散的確信度法や連続的確信度法によるROC解析を用い、その検定にはpaired‐t検定法を利用した。(A)16名の医師による肺癌検診では、ムービーモードのCRT観察及びフィルムによる画像読影実験を行い、離散的確信度法を用いた。(B)肝SOLを示すCT画像では、非圧縮画像のフィルムとCRT画像に付いて、更に1:10圧縮画像のフィルムとCRT画像に付いて、連続的確信度法を用いて10名の医師の読影により比較検討した。(C)肝SOLを示すCT並びにMRI画像及び脳梗塞例のMRI画像を用いて非圧縮画像と1:10圧縮画像とを連続的確信度法によりROC解析を行った。読影に参加した医師は40名である。
結果と考察
1)フィルムデジタイザの規格に関する研究:フィルムデジタイズ装置で入力したX線フィルム画像情報を「保存義務のある画像情報」として記録する場合、入力対象のエックス線フィルムが間違いなくかつ適正に入力されている事を確認しなければならない。更に、最小限入出力特性として、(1)サンプリングピッチ:200μm以下、(2)空間分解能:CTF(0.25)≧0.9、CTF(0.5)≧0.8、CTF(1.0)≧0.7、CTF(2. 5) ≧0.1と規定した。(3)濃度階調数:1024以上(10ビットグレイスケール)以上、(4)デジタイズ濃度範囲:0.0D-3.0D以上などとした。2)可視化装置CRTと画像圧縮に関する検討:(A)肺癌検診CTのフィルム読影とムービーモードCRT画像の観察とでは、ROC下方面積値(Az)の検定で両者に有意差は観測されなかった。(B)肝SOLを示すCTフィルム読影のROC曲線がCRT読影よりも僅かに良好な傾向を示したが、paired‐t検定では有意差は観測されなかった。(C)肝SOLを示すCTとMRI原画像CRTと圧縮画像CRTに対するAz値の何れの画像に於いても、非圧縮画像と圧縮画像に対する読影結果は5%の危険率で有意差を認めなかった。以上の結果から、何れの場合も「カラーモニターCRTはフィルムに代替え可能であると共に、JPEG 1:10非可逆圧縮画像のCRT観察は臨床上許容し得る。」と結論した。
医用画像の電子化に伴う諸問題について、厚生科学研究で検討を重ねてきた。先ず、入力系としてフィルムデジタイザの規格化、出力系ではCRT診断時の画質に拘わる問題、画像の電子保存及び遠隔画像伝送時における画像圧縮に関する問題等である。昨年度に報告した如く、胸部エックス線写真、消化管造影写真、血管造影像、骨エックス線写真等での主観的臨床評価実験の結果から2Kx2K、10ビットでは非圧縮画像と1:20圧縮画像とを分離しえない結果が得られ、画像の持つ情報量に応じて医学的同一性に対する圧縮率が異なる結果を得ている。一方、フィルムデジタイザの規格と共に、200μmのサンプリングピッチサイズ、10ビットの濃度階調を有する画像ではJPEG圧縮で1:10をそのガイドラインとした。文献的にも「ROC解析の検討結果から1:10非可逆圧縮は容認できる」と報告されている。今回の読影実験の結果、何れの方法を用いた場合のROC解析でも、非圧縮画像と1:10圧縮画像との有意差は見られず、臨床的に容認し得る結果であった。又、CRTモニターによる診断を行う場合、画像は大きく、画像背景輝度は黒が最適であった。ワークステーションの機能、即ち読影時間を短縮する事によってCRT読影の方が有利であるとの感触が得られている。
結論
1)フィルムデジタイザの規格化を行った。2)カラーモニターCRTはフィルムに代替えが可能であると共に、200μmの画素ではJPEG非可逆圧縮1:10は臨床上許容しうる。

公開日・更新日

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