放射線感受性ナノバイオ・ウイルス製剤の開発と難治性固形癌に対する臨床応用の検討

文献情報

文献番号
200720043A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線感受性ナノバイオ・ウイルス製剤の開発と難治性固形癌に対する臨床応用の検討
課題番号
H19-3次がん-一般-028
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊義(岡山大学医学部・歯学部附属病院遺伝子・細胞治療センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
21,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治固形癌に対する新たな抗癌剤開発は、分子標的薬剤の開発などにより積極的に進められており、その治療成績の向上も現実のものとなってきている。しかし、副作用や耐性の出現など解決すべき問題点は多く、新たな治療戦略の開発は必須と考えられる。本研究の目的は、ベクターとして多くの遺伝子治療で使用され、その安全性が確認されてきたアデノウイルスのゲノムを改変し、より強力な抗腫瘍活性を有する武装化(armed)ナノバイオ・ウイルス製剤を開発することである。
研究方法
「かぜ」症状の原因となるアデノウイルス5型を基本骨格とし、80-90%のヒト悪性腫瘍で高い活性がみられる不死化関連酵素テロメラーゼの構成分子であるhTERT遺伝子のプロモーターでウイルス増殖に必須のE1遺伝子を制御することで、癌細胞のみで増殖する腫瘍融解アデノウイルスを構築した。さらに、放射線感受性プロモーターEgr-1で強力なアポトーシス誘導機能を持つ癌抑制遺伝子p53を駆動する発現カセットを、ウイルスのE3遺伝子領域に搭載して、ナノバイオ・ウイルス製剤OBP-702を作成した。
結果と考察
各種ヒト癌細胞へのOBP-702感染によりp53蛋白質発現が認められ、放射線刺激がなくてもウイルス増殖自体がストレスとしてEgr-1プロモーターを駆動したと考えられる。しかし、11種の癌細胞株でOBP-702とp53遺伝子を持たないOBP-301の効果を比較したところ、すべての細胞株でOBP-702のID50が低く、抗腫瘍活性の増強が確認された。特に、OBP-301に完全に耐性のT.Tn食道癌細胞での抗腫瘍効果が認められ、その有用性が示唆された。また、アポトーシスの指標としてCaspase 3陽性細胞の比率を比較したところ、OBP-301 10MOI感染後48時間で6.1%に対して、OBP-702では23.5%と明らかに多くのアポトーシス細胞が確認された。Egr-1プロモーターの放射線制御性の根拠は得られなかったが、プロモーター活性が低いため、十分なウイルス増殖が可能となり、その抗腫瘍効果が顕著にみられたと考察できる。
結論
ナノバイオ・ウイルス製剤OBP-702は、癌細胞で選択的に増殖することにより標的細胞死を引き起こす機能を有すると同時に、p53遺伝子を発現して強力なアポトーシス誘導を介した抗腫瘍効果を発揮することが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
-