特異的細胞性免疫の活性化による新規がん治療の開発研究

文献情報

文献番号
200720041A
報告書区分
総括
研究課題名
特異的細胞性免疫の活性化による新規がん治療の開発研究
課題番号
H19-3次がん-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
葛島 清隆(愛知県がんセンター研究所・腫瘍免疫学部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚 美樹(愛知県がんセンター研究所・腫瘍免疫学部)
  • 森島 泰雄(愛知県がんセンター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん細胞特異的細胞傷害性T細胞(CTL)はがん細胞を選択的に傷害する。CTLを効率よく活性化するには、CTLが認識するエピトープペプチドのアミノ酸配列を正確に同定することが必要条件となる。また、抗原特異的CD4+T細胞を活性化することで間接的にCTLの働きを増強することができる。本年度は1)Epstein-Barr virus(EBV)陽性がんに対するT細胞応答の研究、 2)マイナー組織適合抗原特異的CTLの解析と臨床応用に関して以下の研究を実施した。
研究方法
1)EBNA1との融合蛋白を発現するplasmidからmRNAを作製し、自己のCD40活性化B細胞に電気穿孔法にて導入し抗原提示細胞とし、EBNA1特異的CD4+T細胞クローンを反応細胞としたELISPOT法を行った。2)移植後患者の末梢血からHLA-A24拘束性のCTLクローンを樹立した。SNPアレイでタイピングを行い、2群間でゲノタイプ分布に有意に偏りがあるSNPおよび遺伝子領域を統計学的に同定した。
結果と考察
1)EBNA1蛋白N-末端にheat shock protein gp96のleader sequenceを融合し、EBNA1蛋白C-末端にLAMP-1のtransmembrane domainを融合した構造物が、最も効率よくCD4+T細胞エピトープを提示できることを明らかにした。本構造は他の腫瘍抗原特異的CD4+T細胞の誘導、解析にも応用可能であると考えられた。2)マイナー抗原陽性細胞群、抗原陰性細胞群それぞれから抽出したプールDNAについて全ゲノムSNP解析を実施した結果、CTL感受性と強い相関を示すSNPが1つ認められた。この領域のBCL2A1内に新規エピトープを同定した。本エピトープは2003年に同定したACC-1Yエピトープ(DYLQYVLQI) と同部位で、異なる方向の抗原性のエピトープACC-1C(DYLQCVLQI)であった。
結論
1)EBNA1を標的抗原とする免疫療法の構築に向けて、CD8+T細胞とCD4+T細胞両者の活性化を包括する、新たな研究の方向性に繋がる成果を得た。
2)造血器腫瘍に特異的に発現するBCL2A1遺伝子にコードされるHLA-A24拘束性の新規マイナー抗原(ACC-1C)を同定した。今回の同定に用いた新たな技術により、マイナー抗原の同定が加速されると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
-