電子カルテ等による医療情報の高度応用に関する研究

文献情報

文献番号
199700338A
報告書区分
総括
研究課題名
電子カルテ等による医療情報の高度応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
星 北斗((財)医療情報システム開発センター主席研究員)
研究分担者(所属機関)
  • 牛山允(牛山医院院長・日本小児科医会総務理事)
  • 岡田美保子((財)医療情報システム開発センター主席研究員)
  • 杉原弘晃(医療法人社団仁愛会本部次長)
  • 竹林和彦(財団法人信貴山病院理事長)
  • 只野寿太郎(佐賀医科大学教授)
  • 信友浩一(九州大学大学院医学系研究科教授)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 情報技術開発研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
診療情報の電子化により、その共有・交換・保存等の機能に優れていると考えられている「電子カルテ」であるが、熱心に開発が進められている一方で一般の医療機関では導入に当たっての問題点を指摘する声が少なくない。このため本研究では、国際的にこれまでの診療記録の電子化を歴史を振り返るとともに、一般的な医療機関や医師がこの電子カルテに対して抱く期待と問題点を明らかにすることによって、今後の電子カルテの開発方向に示唆を与えるとともに、実際に電子カルテを導入する前にしなければならないカルテの持つ意味と意義の再確認のプロセスを重要性を指摘することを目的とした。特に問題点が多く指摘される小児科と精神科に焦点をあてている。また、現在進められている情報技術・通信の標準化の最新動向に関しても一般のユーザーにわかりやすい形で要約している。
研究方法
文献の調査のほか必要に応じてアンケート調査や聞き取り調査を行った。
結果と考察
歴史的に振り返るとかなり以前から様々な形で診療記録の電子化の試みがなされているが、ほとんど全てが失敗に終わっていると総括することができる。その理由としては、?医師側にニーズがないこと、?技術が不足していたこと、?コスト負担の正当化がなされない点にあったと指摘する。小児科や精神科の医師は、その導入にメリットを感じないとするものの比率が高く、いわゆるニーズの存在に疑問を投げかけている。また、電子カルテによる医療そのものの標準化に対する疑問や不安が大きいことが明らかとなっている。実際に整備された診療記録が大学病院でどのように利用されているかを考慮すると必ずしも電子化の必要性を示唆していない。しかしながら、これまでに想定されない新たな利用法を指摘している。「電子カルテ」については、開発する側と利用する側との間にまだまだ大きなギャップが存在していると考えられる。それは誤解に基づくものも少なくないが、本質的な問題を棚上げして進められている開発作業に疑問を感じる結果であった。電子カルテが医療の質の向上や効率化のツールとして本当に意義のある物としての開発されるようその方向を探ると同時に、コンセプトや利点に対する理解を深めるための方策やユーザーのニーズを喚起する政策的な誘導等の必要性を示唆するものと考えられた。
結論
電子カルテがその本来の目的を達成するためには、様々な課題をクリアしなければならない。電子化された後に可能となるであろう、診療記録の高度な利用が紙ベースでも行われる環境が必要であって電子化が全てを解決するものではない。なぜなら、ユーザーのニーズのない道具が普及することは考えられないためである。今後は、診療記録の高度な利用が医療の質の向上や質の評価に意味があることを広く知らしめることや、この努力に対するインセンティブの付与、またこれらの診療記録の利用にあたって電子化が果たす役割の大きいことなどをあらゆる機会を捉えて啓発・普及していくことが求められている。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)