新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200720040A
報告書区分
総括
研究課題名
新戦略に基づく抗がん剤の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-025
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
松村 保広(国立がんセンター東病院臨床開発センターがん治療開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻)
  • 丸山 一雄(帝京大学薬学部)
  • 土原 一哉(国立がんセンター東病院臨床開発センターがん治療開発部 )
  • 百瀬 功(財団法人微生物化学研究会微生物化学研究センター 沼津創薬医科学研究所)
  • 上野 隆(順天堂大学医学部 生化学第一講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
59,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DDS製剤の非臨床モデルでの薬効、併用効果を臨床試験へ反映するといったDDS製剤のトランスレーショナル研究を行う。第2世代のDDSの作製を行う。DDS製剤と免疫療法との併用療法の有用性につき検討する。栄養飢餓時に誘導されるオートファジーと栄養飢餓耐性との関連を検討する。栄養飢餓選択的細胞毒性物質の探索を行なう。
研究方法
1)腫瘍血管の数の違う腫瘍でNK012とCPT-11との抗腫瘍効果の比較。2)第2世代DDS創生のための抗体作製。3)DACHPt内包ミセルは粒径36nmの単分散な粒子に調製した。腫瘍内分布と抗腫瘍効果の検討。4)Colon26CM-HUVEC抗原を調製し、マウス骨髄細胞由来の樹状細胞(DC)にパルス。Colon26担がんマウスにL-OHP封入TF-PEGリポソームとpulsed DCの併用効果を検討。5)オートファジー阻害による細胞死誘導の検討。大腸癌外科切除標本におけるオートファジー活性化の程度をLC-3タンパク質の免疫染色により評価。6)栄養飢餓選択的細胞毒性物質の探索。
結果と考察
1)腫瘍血管が少ない膵がん、多い腎がん両者でNK012はCPT-11に比べ著明な抗腫瘍効果をもたらした。2)cDNAアレー解析では新規含めて20種類以上の腫瘍マーカーが得ることができた。3)オキサリプラチンに比べ、DACHPt内包ミセルは有意に高い制がん活性を示した。4)L-OHP TF-PEGリポソームと免疫療法を併用した群で有意な抗腫瘍効果を示した。5)オートファジー阻害による細胞死の誘導は栄養飢餓状態でのみ認められた。大腸がんでLC3タンパク質の蓄積が認められた。6)カビ培養液から新規なペプチド化合物がみつかった。SN-38はその抗腫瘍効果は時間依存性であるので、高濃度の集積と長時間の腫瘍内停滞と徐放をもたらすNK012はSN-38のプロドラッグとして理想的と考える。DACHPt内包ミセルは、高いがん集積性と組織浸透性を有すると考えた。オートファジーの活性化が栄養飢餓環境での大腸癌細胞の生存を助長し、大腸癌の発生・進展も促進していることを示唆した。
結論
本研究で得られたDDS製剤の知見が各臨床治験プロトコールに盛り込まれた。臨床データをもとに、トランスレーショナルな観点から基礎、臨床両方向の研究を展開すべきである。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
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