癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究

文献情報

文献番号
200720037A
報告書区分
総括
研究課題名
癌の新しい診断技術の開発と治療効果予測の研究
課題番号
H19-3次がん-一般-022
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
金子 安比古(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 康仁(国立がんセンター研究所)
  • 林 慎一(東北大学 医学部)
  • 武井 寛幸(埼玉県立がんセンター病院)
  • 角 純子(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DNAアレイ、蛋白質アレイ、SNPアレイなど最新の技術を駆使して臨床検体を分析し、腫瘍の分子機構を解明する。その知見に基づき、総合的診断法と治療効果予測法を開発する。小児癌と白血病では難治例の治療前予後予測法、乳癌では術前化学療法と内分泌療法の効果予知法を開発し、臨床応用を図る。
研究方法
ウイルムス腫瘍ではWT1、IGF2、WTX、CTNNB1各遺伝子を、肝芽腫では癌抑制遺伝子RASSF1Aのメチル化を分析した。術前化学療法の対象になる乳癌患者の生検腫瘍組織を用いてゲノムの増減をSNPアレイで分析した。エストロゲンシグナル応答性遺伝子群を搭載した3次元アレイを用いて、乳癌検体を分析した。エストロゲンシグナル応答性GFP(ERE-GFP)を乳癌細胞株や患者の乳癌細胞に導入し、癌細胞や微小環境のエストロゲン活性を評価する系を確立した。蛋白質アレイや免疫沈降法により、NM23と結合する白血病細胞中の蛋白質を分析した。
結果と考察
ウイルムス腫瘍112例を分析し、33%にWT1異常を認めた。WT1正常腫瘍を、IGF2-LOH型10%、IGF2-LOI型28%、IGF2-ROI型23%、その他6%に分類した。日本の発生頻度は欧米の1/2である。その理由として、母集団に対するWT1異常腫瘍の頻度は日欧間で差はないが、IGF2-LOI型腫瘍の頻度が欧米の半数であることによると推測された。WT1異常型腫瘍の半数にIGF2の過剰発現が生じていた。WTX, CTNNB1各変異の頻度は日欧間で差がなかった。肝芽腫97例を分析し、RASSF1Aのメチル化を44%に認めた。メチル化腫瘍の予後は不良なので、治療研究の層別化に利用できる。3次元アレイによる発現解析とERE-GFP導入乳癌細胞を用いた癌細胞と間質のホルモン反応性解析を実施した。これらの解析により乳癌のホルモン療法の効果が予知できると考えられた。白血病細胞の中にNM23と結合する蛋白質を同定した。この中から、白血病の悪性度と関連する蛋白質とその機能を解析している。
結論
日本人にはIGF2-LOIを示すウイルムス腫瘍が欧米人に比べて少ない。WT1異常型腫瘍の半数はIGF2異常を合併する。乳癌の術前化学療法効果予知の研究を開始した。また、乳癌の内分泌療法効果予知の研究とNM23を標的とする治療法の開発を前進させた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
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