遺伝子不安定性の機能解析及び遺伝子変異推測モデルの構築による乳癌卵巣癌ハイリスクキャリアーの同定と発症予防法の確立

文献情報

文献番号
200720031A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝子不安定性の機能解析及び遺伝子変異推測モデルの構築による乳癌卵巣癌ハイリスクキャリアーの同定と発症予防法の確立
課題番号
H19-3次がん-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田中 憲一(新潟大学 教育研究院医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 畠山勝義(新潟大学 教育研究院医歯学系 )
  • 井ノ上逸朗(東海大学 医学部基礎医学系)
  • 八幡哲郎(新潟大学 教育研究院医歯学系 )
  • 関根正幸(新潟大学 医歯学総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
24,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新たな乳癌・卵巣癌発症予防管理システムを構築し、乳癌・卵巣癌発症の危険性を有するハイリスクグループの抽出を行う。
研究方法
新潟県内における乳癌患者の家族歴アンケート調査とSNPアレイとよばれるゲノム網羅性の高いマイクロアレイを用いて、卵巣癌ゲノム特異的染色体構造異常領域をゲノム全域から体系的に解析した。

結果と考察
卵巣癌患者において、第二度近親者までに乳癌家族歴あるいは卵巣癌家族歴を有する患者の頻度は、それぞれ25.3%、5.9%であり、これは乳癌患者における家族歴の頻度と同等であった。
また、卵巣癌患者において卵巣癌発症の家族歴を有する症例では、家族歴がない症例と比較して発症年齢が低く、同胞内での乳癌発症率は5.5%であり、これは健常者の同胞内発症率の4.7倍と相対危険率の上昇を認めた。
卵巣癌および正常組織(43対応対サンプル:孤発性33対、BRCA1キャリアー家族性10対)からのゲノムDNAサンプルを用いて、ゲノム構造変化を高密度に分析した。その結果、卵巣癌ゲノムで観察された構造変化のうち、アレル特異的コピー数変化が大多数を占めるという知見は、SNPアレイを使用することで新規に見いだされたものである。従来の比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)法ではアレル特異的変化を同定し得ないことを考え併せると、ゲノム構造変化解析へのSNPアレイの有効性を示す知見であると考える。
また、このことは、卵巣癌ゲノム解析におけるアレル不均衡解析の重要性を示唆している。次年度は、特にuniparental disomy(片親ダイソミー)といったコピー数変化を伴わないアレル不均衡状態を検出するための解析および実験的検証を進めるとともに、乳癌ゲノムに対しても同様の比較解析を行うことで、卵巣癌および乳癌ゲノムの不安定性について、アレル不均衡の立場から、遺伝学的に特徴付ける予定である。
結論
新潟県内において、乳癌患者および卵巣癌患者を対象とし、乳癌および卵巣癌の家族歴調査を行った結果、家族歴は発症リスクを上昇させる要因であることが再確認された。乳癌患者における卵巣癌の家族歴、卵巣癌患者における乳癌家族歴調査については、さらに症例数を積み重ねて新たなデータベースを作成する必要があると思われる。卵巣癌ゲノムにおいては、アレル特異的コピー数変化(1コピー重複・欠失)の出現頻度が非常に高いことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2008-04-25
更新日
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