がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究 | 厚生労働科学研究成果データベース

文献情報

文献番号

200720028A

報告書区分

総括

研究課題名

がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究

課題番号

H19-３次がん-一般-013

研究年度

平成19(2007)年度

研究代表者(所属機関)

若林　敬二(国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト)

研究分担者(所属機関)

石川　秀樹(健康保険連合大阪中央病院内科・消化器科)
徳留　信寛(名古屋市立大学大学院医学研究科健康増進・予防医学分野)
田中　卓二(金沢医科大学病理学第一講座)
高山　哲治(徳島大学大学院医学系研究科)
塚本　徹哉(愛知県がんセンター研究所腫瘍病理学部)
河田　純男(山形大学医学部消化器病態制御)
窪田　直人(東京大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科統合的分子代謝疾患科学寄付講座)
山本精一郎(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部がん統計解析室)
高橋　智(名古屋市立大学大学院医学研究科共同研究教育センター)
今岡　達彦(放射線医学総合研究所放射線防護研究センター)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金疾病・障害対策研究分野第３次対がん総合戦略研究

研究開始年度

平成19(2007)年度

研究終了予定年度

平成21(2009)年度

研究費

111,856,000円

研究者交替、所属機関変更

研究報告書（概要版）

研究目的

がんは、我が国において死亡原因の第1位を占め、今後もさらに増え続けるものと予測される。このようながんの増加を抑制することは極めて重要である。本研究においては食品素材及び医薬品を対象として新規がん予防剤を検索、開発する基礎研究を行うとともに、発がんの高危険度群と考えられる人々を対象とした臨床研究を行うことにより、安全性の高い有効ながん予防方法を確立することを目的とする。

研究方法

近年著しく増加している大腸がん、前立腺がん、又我が国に多い胃がん等の予防を目標とし、申請者等が開発した各々の動物発がん実験モデルを用いて高脂血症と発がんとの関連性の検討、がん化学予防剤候補の検索、及びそのメカニズム解明を行った。臨床応用を目的に、大腸がんのハイリスクグループである家族性大腸腺腫症(FAP)及び多発性大腸腺腫症患者におけるアスピリンや緑茶抽出物等の臨床介入試験を行ない、現在進行中である。

結果と考察

Lipoprotein lipase誘導剤、plasminogen activator inhibitor-1阻害剤、ウーロン茶葉の新規フラボノイドChafuroside、ウルソデオキシコール酸及びスタチン製剤は、動物大腸発がんを抑制した。γ-トコフェロールおよびレスベラトロールは動物前立腺発がんを抑制した。選択的COX-1阻害剤、選択的COX-2阻害剤およびNSAIDsはラット舌発がんを抑制した。食品中の酸化ラジカルスカベンジャーcanololは H. pylori感染による胃炎と胃発がん発生を抑制した。NSAIDsの投与により、ヒトの大腸ACFは数ヶ月間でアポトーシスを起こして消失した。FAPに対する低用量アスピリン腸溶錠及び緑茶抽出物の多施設二重盲検無作為割付試験が企画実施中である。

結論

本研究においては医薬品及び食品素材を対象として新規がん化学予防剤を検索することができた。これらの基礎的研究を行なうとともに、発がんのハイリスクグループと考えられる人々を対象とした臨床研究を行なうことにより、安全性の高い有効ながん予防方法を確立することができると考えられ、これらの成果は、がん予防対策を講ずる上に有用な基礎的研究資料になるものと確信する。