システム生物学的方法論による癌のバイオマーカー及び分子標的の探索

文献情報

文献番号
200720027A
報告書区分
総括
研究課題名
システム生物学的方法論による癌のバイオマーカー及び分子標的の探索
課題番号
H19-3次がん-一般-012
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 典子(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 隆志(国立がんセンター研究所)
  • 黒田 雅彦(東京医科大学 病理学部)
  • 宮野 悟(東京大学医科学研究所)
  • 平野 隆(東京医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
24,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生命現象をシステムとして理解することを目指す「システム生物学」的方法論を駆使し、癌という疾病の統合的な理解を目指す。その研究成果からは、これまでの方法論では発見されずにおかれた重要な新規バイオマーカー及び革新的分子標的が発見されることが期待されるので、これらを用いて癌の超早期診断及びテーラーメイド医療に資することを目指す。
研究方法
1. HERファミリー分子の異常が関わる癌を統合的に理解する研究
------肺癌の新規バイオマーカー並びに新規分子標的の抽出
初代肺上皮由来細胞hSAECをEGF及びイレッサ(Gefitinib)で処理し、詳細な時系列をとり、マイクロアレイ(Agilent)及び網羅的定量的転写産物発現解析装置を用いた精密時系列データの測定を行う。測定データは、バイオインフォマティクスによって解析し、癌化パスウエイの構築、数理モデル化及びシミュレーションを行い、正常肺におけるHERファミリーシグナル伝達のゴールドスタンダードとする。
 同時にCell Illustratorを用いて、文献情報から、肺におけるHERシグナル伝達のシミュレーションモデルの構築を行う。ウエットデータ取得後は、そのデータを随時Cell Illustratorへ反映させていく。
2. 癌幹細胞による癌化パスウエイの解析
 ヒト乳癌細胞株より、癌幹細胞濃縮CD44+CD24-/low分画の細胞を取り出し、システム生物学的解析のためのモデル系の構築を目指す。
結果と考察
hSAECを用いたマイクロアレイ解析により、詳細な時系列データがでそろった。バイオインフォマティクス解析により、現在3つの異なる手法を用いることにより、肺におけるHERファミリーシグナル伝達とイレッサによる撹乱されるシグナル伝達に関わる遺伝子群の絞り込みを行っている。 
実験誤差が少ない理想に近い形の実験が行われたと考えられ、ゴールドスタンダードとして最適なものを得ることができた。
結論
既に未報告のバイオマーカー候補分子が複数得られている。このことは、我々の手法が有用であることが実証された上に、世界的にもまだ誰も着手していない手法であることから、まだまだ多くのバイオマーカー並びに分子標的を同定できることが期待される。システム生物学が、新規分野として展開し、近未来の医療へと還元されていくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
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