ヒトがんで高頻度に変異・発現亢進・活性化している遺伝子を標的とした新たな治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200720024A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトがんで高頻度に変異・発現亢進・活性化している遺伝子を標的とした新たな治療法の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H19-3次がん-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
北林 一生(国立がんセンター研究所分子腫瘍学部)
研究分担者(所属機関)
  • 堺 隆一(国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部)
  • 荒川 博文(国立がんセンター研究所生物物理部)
  • 増富 健吉(国立がんセンター研究所がん性幹細胞研究プロジェクト)
  • 江成 政人(国立がんセンター研究所放射線研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
65,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、がんの革新的な治療法の開発を目的として、がんの分子標的療法の標的として有効であることが期待される遺伝子産物の生物学的及び生化学的な機能やその分子経路の解明を行い、これらの作用を阻害する化合物をスクリーングし、分子標的治療薬の候補を同定する。
研究方法
(1)化学療法に対して抵抗性を示すがん幹細胞の未分化性の維持や増殖を制御する因子、(2) ヒトがんで高頻度に活性が亢進し癌細胞の増殖に必須であるチロシンリン酸化シグナル伝達分子、(3) ヒトがんで異常を生じている様々な細胞死誘導経路、(4)、ヒトがんで高頻度に変異が認められるがん抑制遺伝子p53や白血病関連因子AML1の抑制因子、(5) ヒトがんで高頻度に発現が亢進しているテロメレース、などの作用機序を明らかにし、これらを標的とした阻害化合物を同定する。
結果と考察
MOZ-TIF2による白血病モデルマウスシステムにおいてFactorA受容体の発現の高い細胞に白血病誘導活性が強いことを見出し、FactorA受容体阻害剤が白血病治療に有効であることが強く示唆された。肺がん細胞株の足場非依存性に関わるチロシンリン酸化蛋白質としてCDCP1を同定し、CDCP1のチロシンリン酸化がアポトーシス関連分子PKCδを介して、肺がん細胞の浮遊状態におけるアポトーシスを抑制することで足場非依存性をもたらすことを明らかにした。アポトーシス誘導に関与する新規p53標的遺伝子としてNCCRI3遺伝子を同定し、ガンマ線照射後に誘導される全く新しいp53依存性細胞死経路の存在を見出した。がん抑制タンパク質p53の活性化を阻害する5種類のE3ユビキチンリガーゼ(COP1、Pirh2、ARF-BP1、Synoviolin、Mdm2)に対するsiRNAの効果は、がん細胞の種類によって異なることが示された。テロメレースのテロメア構造維持以外の新規機能を担う分子として易がん性を一症候とする遺伝性疾患の原因遺伝子RNA-X及び幹細胞因子stem cell factor Yを同定し、従来から知られている逆転写酵素活性とは異なる酵素活性を介してクロマチン構造維持あるいは細胞幹性維持に関わっていることを見出した。
結論
FactorA受容体の発現の高い細胞に強い白血病誘導活性があることから、FactorA受容体が急性骨髄性白血病治療の分子標的として有望であることが示された。CDCP1などのチロシンリン酸化蛋白質、テロメレース新規機能は、p53抑制タンパク質が分子標的として重要だと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2008-05-01
更新日
-