がん病理・病態学的特性の分子基盤の解析とそれに基づく診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200720023A
報告書区分
総括
研究課題名
がん病理・病態学的特性の分子基盤の解析とそれに基づく診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-008
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
落合 淳志(国立がんセンター東病院臨床開発センター 臨床腫瘍病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 保典(慶應義塾大学医学部 病理学教室)
  • 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部 病理学教室)
  • 加藤 光保(筑波大学大学院実験病理学)
  • 平尾 敦(金沢大学がん研究所 幹細胞学)
  • 中西幸浩(国立がんセンター研究所 病理部)
  • 神奈木玲児(愛知県がんセンター研究所・病理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
71,268,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん生物像にかかわる病理・病態の分子基盤と、その分子機構が有する生物学的意義をがん細胞とがん微小環境との相互作用として検討するものであり、1)がん間質細胞の起源とがん間質細胞の有するがん生物像に関わる意義。2)膵がんの神経浸潤モデルを作製と膵がんに特徴的ながん性疼痛や悪液質の分子機構の解明。3)がん組織特異的血管新生の分子機構の解明。4)がん幹細胞の存在する微小環境の検討と、これらの分子機構を標的とした新しい治療法の開発や機能的診断法の開発を目指す。
研究方法
がん病理形態特性に関わる分子基盤の解析として、以下の点に付いて検討した。
1)ヒトがん間質細胞を構成する線維芽細胞の起源と機能。2)ヒトがん病理・病態を模倣する動物モデルの作製。3)がん組織特異的に起こる血管新生スイッチの分子機構。4)分化型扁平上皮がん細胞のがん幹細胞マーカーを検索した。
結果と考察
ヒトがん間質細胞を構成する線維芽細胞の起源として、骨髄由来線維芽細胞が存在し、その割合は、腫瘍全体の60%に及ぶ事が明らかになった。また、肺がん切除患者のがん周囲近傍の血管内にはがん間質線維芽細胞の前駆細胞が流れている事を初めて示した。
2.膵臓がんの形態学的特徴である神経浸潤モデルを作製し、ラミニン5γ鎖の発現と相関する事が示された。また、がん性疼痛および悪液質の程度を検討したところ異痛症が起こる事が示された。
3.がん組織における血管新生スイッチ機構が、間質の産生するVEGFとがんの産生するMMP7により起こる事を初めて示した。
4.ヒト扁平上皮がん細胞のがん幹細胞の新しいマーカーの検出を試み、新規マーカーである分子を見いだした。
結論
がん生物像は、がん細胞の遺伝子変化の積み重ねにのみ規定されるだけでなくがんがん間質細胞の起源の一つが骨髄由来である事を初めて明らかにし、特徴的な病理形態像を示す膵がん神経進展モデルを作製し、その分子基盤を明らかに出来た。分化型扁平上皮がんにおけるがん幹細胞のマーカーを新たに同定した。また、がん組織特異的血管新生機構ががん細胞と間質線維芽細胞との相互作用で起こる事も明らかに出来た。今後は、今年度作製したモデルを基にがんに特徴的な病理形態と病態に関わる分子機構を解明し、新しい治療法を開発する予定である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-13
更新日
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