ヒト腫瘍の発生・発育・進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用

文献情報

文献番号
200720020A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト腫瘍の発生・発育・進展に関わる分子病態の解析とその臨床応用
課題番号
H19-3次がん-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
立松 正衞(愛知県がんセンター研究所・腫瘍病理学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瀬戸 加大(愛知県がんセンター研究所・遺伝子医療研究部)
  • 関戸 好孝(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部)
  • 稲垣 昌樹(愛知県がんセンター研究所・発がん制御研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
23,195,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
消化器、呼吸器や造血器腫瘍等における分子病態を分子標的薬感受性、ゲノム異常、DNAメチル化異常より検索し、得られた情報の新しいがん診断・治療ヘの臨床応用を目的とする。
研究方法
1. 胃がんにおけるHER familyの発現を免疫組織および CISHにて検討し分子標的治療薬に対する感受性機構、2.アレイCGH法によるMALTリンパ腫のゲノム異常、3. 胸部悪性腫瘍におけるDNAメチル化異常の違いをMCAアレイ法により網羅的に解析する。
結果と考察
1.胃がんにおいてEGFRはHER2に比べ頻度は低いものの原発6%,腹膜転移巣 10%、肝転移巣11%で高発現が見いだされ、ヌードマウス移植腫瘍に対してはCetuximabはIL-2との併用により有意な抗腫瘍効果を示すことを明らかにし、胃がんにおけるEGFRの分子標的としての意義を示した。2.悪性リンパ腫をアレイCGH法を用いて解析を進めた。胃MALTリンパ腫について、除菌抵抗性API2-MALT1陰性群にはゲノムコピー数の異常が多いこと、眼付属器MALTリンパ腫にはAPI2-MAT1キメラ遺伝子が認められないかわりに特徴的な6q23.3領域の欠失があり、TNFAIP3遺伝子がその責任遺伝子であることを明らかにした。 3.胸部悪性腫瘍におけるDNAメチル化異常の違いをMCAアレイ法により網羅的に解析した。メチル化標的遺伝子のうち肺腺がんと中皮腫で多数の遺伝子が共通していた。 EGFR変異(-)肺腺がん群で高頻度にDNAメチル化異常の蓄積が認められ、EGFR遺伝子異常の有無によりDNAメチル化の違いが存在することが明らかになった。分子標的薬とがん抑制遺伝子群の機能回復を目指したエピジェネティクス治療薬の併用は、個々の腫瘍の遺伝子・エピジェネティクス異常の情報をもとに検討すべきことが強く示唆された。
結論
1ヌードマウス移植EGFR高発現胃がんに対してCetuximabはIL-2との併用により有意な抗腫瘍効果を示した。
2. 眼付属器MALTリンパ腫に特徴的な6q23.3領域の欠失を見出し、その責任遺伝子は、TNFAIP3であることを明らかにした。
3. 肺腺がんと中皮腫において、DNAメチル化の標的となる遺伝子が数多く観察され、特に、EGFR変異を伴わない肺腺がん腫瘍組織でDNAメチル化が多数検出された。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-