疾患モデル動物を用いた環境発がんの初期発生過程及び感受性要因の解明とその臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200720018A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患モデル動物を用いた環境発がんの初期発生過程及び感受性要因の解明とその臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
中釜 斉(国立がんセンター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 益谷 美都子(国立がんセンター研究所生化学部)
  • 木南 凌(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 大島 正伸(金沢大学がん研究所)
  • 庫本 高志(京都大学大学院医学研究科)
  • 杉江 茂幸(金沢医科大学医学部)
  • 中島 淳(横浜市立大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
64,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動物発がんモデルを用いて、消化器がんを中心とした発がんの分子機構を明らかにし、さらに、環境中及び遺伝的な発がんの修飾要因および感受性要因を明らかにする。得られた成果は、遺伝子情報に基づいて個別化したがん予防策の構築や、新規化学予防薬、或いは治療薬開発における標的候補分子の同定など、臨床応用への展開を目指す。

研究方法
PhIP誘発大腸発がんモデルを用いた遺伝学的解析により発がん感受性の候補遺伝子を同定する。さらに、コンソミックマウス系統を用いた感受性遺伝子の網羅的検索を開始した。大腸がん発生の初期段階におけるSND1およびmicroRNAの発現の変化を解析し、がんの発生・成立における翻訳制御機構の関与について検討した。又、下部消化管拡大内視鏡によりヒトACFを観察し、各種臨床データとの関連性を調べた。胃発がんの分子機構の解明では、Wnt/PGE2活性化マウスを用いてヒト胃がんとの遺伝子発現プロファイルを比較した。ENUミュータジェネシス法で作出したApc変異ラットの大腸発がん性を検討した。更に、放射線誘発胸腺リンパ腫の発症機構について検討した。
結果と考察
PhIP誘発ラット大腸がんの感受性遺伝子に関して、限定化した約2 Mbの領域から候補遺伝子Xを同定した。3‘側非翻訳領域に存在する 10箇所の多型が遺伝子XのmRNAの安定性に寄与している可能性が示唆された。翻訳抑制因子のSND1と増殖抑制作用を有するmicroRNA (miR-34a)を介する翻訳制御機構の機能破綻が、大腸発がんの発生・成立に重要な役割を果たすことが示唆された。ヒト大腸のdysplastic ACFの数が内臓脂肪量と有意な相関を示すことを明らかにし、アディポネクチン及びIGF-1が大腸発がんに寄与することを示した。Apc遺伝子変異ラットはAOM+DSS投与による大腸発がんに高感受性を示した。WntシグナルとCOX-2/PGE2経路を同時に活性化させたマウス胃がんは、ヒト胃がんに極めて類似した発現プロファイルを示すことが分かった。さらに、放射線照射後早期に現れる大型リンパ球の出現率が放射線発がん感受性の鍵となることが示唆され、リンパ腫のがん抑制遺伝子Bcl11bがMinマウスでの小腸腫瘍の発生も修飾することが分かった。DNA修復に関わるポリ(ADP-リボース)合成酵素(Parp)-9 及びParp-10遺伝子破壊マウス ES 細胞を樹立した。
結論
発がんのモデル動物を用いた遺伝学的解析は、がんの発生の初期過程における分子機構や発がん感受性要因の解明において、ヒト発がん研究の補完的な役割を担うものである。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-