ヒト多段階発がん過程におけるエピジェネティックな異常の網羅的解明と臨床応用に関する研究

文献情報

文献番号
200720017A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト多段階発がん過程におけるエピジェネティックな異常の網羅的解明と臨床応用に関する研究
課題番号
H19-3次がん-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
牛島 俊和(国立がんセンター研究所発がん研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 金井 弥栄(国立がんセンター研究所病理部)
  • 豊田 実(札幌医科大学医学部内科学第一講座)
  • 柳岡 公彦(和歌山県立医科大学第二内科)
  • 松林 宏行(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)
  • 山田 泰広(岐阜大学大学院医学研究科腫瘍病理)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
66,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ゲノム網羅的なDNAメチル化変化の解析により、がん抑制遺伝子や診断マーカーを分離すること、その臨床応用の基盤として、DNAメチル化異常の発がんへの関与の仕方を明らかにする。
研究方法
ゲノム網羅的なDNAメチル化解析には、脱メチル化剤処理後発現アレイ法、MS-RDA法、MCA-RDA法、MeDIP-microarray法、BAMCA法等を用いた。個別遺伝子のDNAメチル化解析には、MSP法、bisulfite sequencing法、COBRA法を用いた。
結果と考察
(1) ラット前立腺がん細胞株を脱メチル化剤処理後、発現アレイにより解析することにより、Tgfbr2遺伝子がラット前立腺がんではDNAメチル化異常により不活化されていることを見出した。ヒト前立腺がんでは、DNAメチル化は認められなかったが、36/60例で発現低下を認めた。
(2) p53の標的遺伝子のインシリコ解析により、標的遺伝子SFRP2、BNIP3、c10orf58が、メチル化により不活化されることが明らかになった。
(3) 大腸がん細胞株を脱メチル化剤処理後、157種類のmicroRNAについて発現解析、37種類について発現上昇を認めた。特に、mir-34b/cは転写開始点近傍のメチル化により不活化されていることが明らかになった。
(4) 正常肝組織、慢性肝炎・肝硬変を示す非がん肝組織、肝細胞がん組織について、BACアレイを用いたDNAメチル化解析を行った。正常肝組織と非がん肝組織を区別できるBACクローン、肝細胞がんの中で分化度・門脈侵襲の有無・肝内転移の有無と相関するDNA異常を示すBACクローンを抽出した。
(5) 神経芽細胞腫では、CpGアイランドメチル化形質(CIMP)の存在は予後不良と密接に関係(ハザード比9-22)する。本年度は、CIMPにより不活化される遺伝子9個を新たに同定した。
(6) DNA低メチル化状態は、大腸腫瘍形成を抑制する一方、悪性リンパ腫・肝腫瘍形成を促進する。DNA低メチル化のモデルマウスを用いて、MNU及びApc変異による胃発がんが抑制されることを示した。
結論
【結論】DNAメチル化異常のゲノム網羅的な解析により、がん抑制遺伝子の同定や、臨床的に有用な診断マーカーの分離が可能である。また、DNAメチル化の調節機構の解析により、新たながん予防法が開発できる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2008-04-22
更新日
-