レトロウイルス技術による癌抗原の細胞表面上カタログ化と癌の診断治療への応用

文献情報

文献番号
200720012A
報告書区分
総括
研究課題名
レトロウイルス技術による癌抗原の細胞表面上カタログ化と癌の診断治療への応用
課題番号
H18-3次がん-一般-009
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
北村 俊雄(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野阪 哲哉(三重大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
48,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの先進国においてがんによる死亡は死因の一位を占める。がんを早期に発見し適切な治療を速やかに行うことは、国民の健康増進に役立つことに加え、増大する医療費の軽減効果も期待できる。従って、がんの早期診断および治療は社会的にも重要な課題である。本研究の目的は、早期診断法が難しく予後が悪い膵がん、ユーイング肉腫、グリオブラストーマ、日本に多い胃がん、最近増加しつつある前立腺がん、早期診断の難しい腎がんなどのマーカー分子を同定し、これらのマーカー遺伝子に対する抗体を作成することおよび抗体療法に利用できるがん抗原および抗体を同定することである。
研究方法
本研究では、主任研究者らが開発した高効率かつ正確なシグナルシークエンストラップ法SST-REXを利用して、がん特異的抗原に対するモノクローナル抗体を作成する。SST-REX法の過程で得られるがん細胞由来の分泌蛋白質あるいは膜蛋白質を細胞表面上に発現するBa/F3細胞群(以後SSTクローンと呼ぶ)を免疫源としてマウスモノクローナル抗体を作製し、患者がん組織あるいはがん細胞株を利用して樹立した抗体の特異性およびがん細胞株に対する増殖抑制効果を調べる。
結果と考察
現在までに膵がん、胃がん、膀胱がん、グリオーマ/グリオブラストーマ、前立腺がん、ユーイング肉腫のcDNAライブラリーをスクリーニング、モノクローナル抗体を現在までに23種類樹立した。これらの抗体のうちグリオブラストーマに対する1種類の抗体がin vitroにおいて腫瘍細胞株の増殖を抑制した。また、前立腺がんのSSTクローンに対するモノクローナル抗体のうち、抗EPHA2抗体は前立腺がん細胞株の培養系および担がんマウス系における増殖を抑制した。
結論
シグナルシークエンスの結果得られるSSTクローンをマウスに直接免疫することによってモノクローナル抗体が簡便かつ網羅的に樹立できることが確認できた。さらに、まだ抗体取得数が23種類と多くはないが、この方法で樹立した抗体は細胞上に発現している自然な形の膜蛋白質を認識しやすいこと、細胞に増殖抑制などの機能を有する機能抗体である確率が比較的高いことが示唆された。今後、本研究計画を継続することによって、がんの早期診断や治療に利用できる機能抗体が樹立できることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-23
更新日
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