文献情報
文献番号
199700335A
報告書区分
総括
研究課題名
日本におけるCNS等の機能とその役割についての研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
岡谷 恵子(日本看護協会)
研究分担者(所属機関)
- 野末聖香(横浜市民病院)
- 川名典子(聖路加国際病院)
- 田中美恵子(東京女子医科大学看護学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 看護対策総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、日本看護協会が認定する専門看護師および認定看護師の実践における役割と導入によってもたらされた変化や影響を明らかにすることである。
研究方法
対象は、認定看護師37名(救急看護認定看護師17名、創傷・オストミー・失禁(WOC)看護20名)と、専門看護師11名(このうち3名は、認定を受けていないが、専門看護師に必要な教育を修了して専門看護婦として認知されて働いている看護婦)、専門看護師または認定看護師が勤務する施設の看護部長7名、婦長43名。専門看護師11名と認定看護師37名、ならびに認定看護師が勤務する病棟の婦長30名に対しては、質問紙による調査を郵送法にて実施。専門看護師の勤務する施設の看護部長7名と婦長12名に対しては、面接による調査を実施した。面接時間は約1時間で、面接内容は許可を得て、テープレコーダーに録音し、後で逐語で起こして記述データとした。
結果と考察
認定を受けた10名の専門看護婦師は、そのほとんどが専門看護師として独立したポジションで、看護部長の直属として配置されていた。このような配置のされ方は看護師の事例報告からも自由に活動できることによって介入の成果がもたらされていると推察できた。
専門看護師に比べ認定看護師はその特徴からほとんどが一スタッフとして病棟に配置されていた。しかし、認定看護師としての役割が多いに期待されていることが結果から伺えた。
WOC看護の場合、認定前と認定後で関わる病棟の数が約3倍に増えていた。このことは、所属病棟に限らず、WOC看護認定看護師の専門的援助が必要な他病棟の患者にもケアを提供していることを示している。また、WOC看護認定看護師は認定を受けた後でほぼ9割の人が専門外来の開設もしくは開設の準備をしていた。専門外来の開設によって早い段階で患者を退院させることが可能になる。支援体制を持ちながらの早期の退院は患者の生活の質を高めることでもあり、病院側が認定看護師に専門外来を任せるということは、医療の世界では画期的な変化であると考える。
業務量調査結果では、専門看護師は教育、実践、研究、相談、調整の順番で割いている時間が多かった。この順序は、現在の専門看護師への看護部の期待を反映していると思われる。またこの結果は、病院内の看護部門以外の部署にはまだまだ専門看護師の活動が周知されていないことを示唆している。専門看護師は優れた調整能力を有するものであるので、ケースマネジメント機能を増大していくことが今後の課題であろう。
救急看護認定看護師は、業務時間の43%を実践に当て、相談が少なかった。一方、WOC看護認定看護師は、業務時間のほとんどを病棟のスタッフ業務で費やし、認定看護師としての活動は約25%に過ぎなかった。多くの病棟にまたがって対象患者が発生する可能性のある分野の認定看護師については、同一分野で複数の認定看護師を導入するか、自由に活動できる緩急を準備するかどちらかが必要であろう。WOC看護の場合、今回の結果を見る限りでは、実態としては、時間外や休日に認定看護師としての活動をしていると思われる。
今後、その活用方法を工夫する必要がある。
事例による成果の分析においては、専門看護師の場合には、次のようなことがいえる。1)専門看護師が患者のケアに関わる場合は、病棟看護婦や婦長の依頼を受けて介入することが多い。そのため専門看護師はどんな時でも、看護婦を巻き込み、サポートしながら、看護婦と一緒にケアをしようとする態度がある。2)看護婦の持つ看護の力に対して非常に肯定的である。常に看護婦の力を引き出すような介入を実施している。これらのことは看護婦の力を引き出し、看護婦がのケア能力を高めることによって、病棟もしくは病院全体の看護ケアの質を改善し向上させることを目指そうとするものである。さらに、3)医療チームを構成したり、チーム内の調整を図ることによってGroup Performance を高めることに貢献している。このことは、高いケースマネジメントの能力を示し、病院の枠を越えて様々な社会資源・人的資源を調整することができ、その結果、患者の希望に添ったケアの提供や、患者の望む療養の場などを提供できると考える。米国の実績でも、CNSのケースマネジメントが入院期間の短縮や再発率の低下、コストの軽減をもたらすことが実証されている。このような専門看護師の介入の特徴は、看護集団によい結果をもたらしている。看護部長や婦長の面接結果からもそのことが伺える。看護婦が意欲的になったこと、適切なケアを提供しようと考え始めたこと、自信を持つようになったことといった評価がそれを裏づけている。一人の看護婦ではなく、看護集団の活力が増大するということは管理者にとって管理しやすい環境ができることであり、変革を促進しやすくする。専門看護師は患者への直接ケアでも成果をもたらしていた。精神的問題を持つ患者の心理面接や相談を実施することにより、確実に患者の症状を安定させている。また、疼痛緩和に関しても、患者の状態を見て薬剤の処方内容を医師に提示し効果を上げている。このような直接ケアは、非常に専門的な介入であるが、看護婦が実施する限りにおいては経済的なバックアップがなく、この点は専門看護婦の導入を左右する問題となる。
認定看護師は、専門看護師と比べて成果が明快である。助かると判断した患者については、救急看護認定看護師は確実に患者の生命を救うことに貢献している。また、WOC看護認定看護師は、創を確実に治し、自己管理しやすいストーマ造設をすすめることができる。WOC看護のケア技術はかなり確立されており、教育訓練を受けた者とそうでない者との技術格差は大きい。認定看護分野は、ある特定のケア技術と知識を用いて、限定された看護現象への介入を行うことが主であるので、これらのケア技術や知識、ケアに先立つ患者の状態のアセスメントなどについて十分な訓練を受けたものとそうでないものとの技術の差は大きいと思われる。認定看護師はその熟練したケア技術により、確実に患者の回復を早め、苦痛を除くことによって入院期間の短縮に貢献していると思われる。また効率よくケアを提供することによってコストの削減ももたらしていると思われるが、現段階ではまだ事例によって実証するだけの段階である。今後、WOC看護の分野では費用対効果の研究を進める必要があるであろう。
専門看護師に比べ認定看護師はその特徴からほとんどが一スタッフとして病棟に配置されていた。しかし、認定看護師としての役割が多いに期待されていることが結果から伺えた。
WOC看護の場合、認定前と認定後で関わる病棟の数が約3倍に増えていた。このことは、所属病棟に限らず、WOC看護認定看護師の専門的援助が必要な他病棟の患者にもケアを提供していることを示している。また、WOC看護認定看護師は認定を受けた後でほぼ9割の人が専門外来の開設もしくは開設の準備をしていた。専門外来の開設によって早い段階で患者を退院させることが可能になる。支援体制を持ちながらの早期の退院は患者の生活の質を高めることでもあり、病院側が認定看護師に専門外来を任せるということは、医療の世界では画期的な変化であると考える。
業務量調査結果では、専門看護師は教育、実践、研究、相談、調整の順番で割いている時間が多かった。この順序は、現在の専門看護師への看護部の期待を反映していると思われる。またこの結果は、病院内の看護部門以外の部署にはまだまだ専門看護師の活動が周知されていないことを示唆している。専門看護師は優れた調整能力を有するものであるので、ケースマネジメント機能を増大していくことが今後の課題であろう。
救急看護認定看護師は、業務時間の43%を実践に当て、相談が少なかった。一方、WOC看護認定看護師は、業務時間のほとんどを病棟のスタッフ業務で費やし、認定看護師としての活動は約25%に過ぎなかった。多くの病棟にまたがって対象患者が発生する可能性のある分野の認定看護師については、同一分野で複数の認定看護師を導入するか、自由に活動できる緩急を準備するかどちらかが必要であろう。WOC看護の場合、今回の結果を見る限りでは、実態としては、時間外や休日に認定看護師としての活動をしていると思われる。
今後、その活用方法を工夫する必要がある。
事例による成果の分析においては、専門看護師の場合には、次のようなことがいえる。1)専門看護師が患者のケアに関わる場合は、病棟看護婦や婦長の依頼を受けて介入することが多い。そのため専門看護師はどんな時でも、看護婦を巻き込み、サポートしながら、看護婦と一緒にケアをしようとする態度がある。2)看護婦の持つ看護の力に対して非常に肯定的である。常に看護婦の力を引き出すような介入を実施している。これらのことは看護婦の力を引き出し、看護婦がのケア能力を高めることによって、病棟もしくは病院全体の看護ケアの質を改善し向上させることを目指そうとするものである。さらに、3)医療チームを構成したり、チーム内の調整を図ることによってGroup Performance を高めることに貢献している。このことは、高いケースマネジメントの能力を示し、病院の枠を越えて様々な社会資源・人的資源を調整することができ、その結果、患者の希望に添ったケアの提供や、患者の望む療養の場などを提供できると考える。米国の実績でも、CNSのケースマネジメントが入院期間の短縮や再発率の低下、コストの軽減をもたらすことが実証されている。このような専門看護師の介入の特徴は、看護集団によい結果をもたらしている。看護部長や婦長の面接結果からもそのことが伺える。看護婦が意欲的になったこと、適切なケアを提供しようと考え始めたこと、自信を持つようになったことといった評価がそれを裏づけている。一人の看護婦ではなく、看護集団の活力が増大するということは管理者にとって管理しやすい環境ができることであり、変革を促進しやすくする。専門看護師は患者への直接ケアでも成果をもたらしていた。精神的問題を持つ患者の心理面接や相談を実施することにより、確実に患者の症状を安定させている。また、疼痛緩和に関しても、患者の状態を見て薬剤の処方内容を医師に提示し効果を上げている。このような直接ケアは、非常に専門的な介入であるが、看護婦が実施する限りにおいては経済的なバックアップがなく、この点は専門看護婦の導入を左右する問題となる。
認定看護師は、専門看護師と比べて成果が明快である。助かると判断した患者については、救急看護認定看護師は確実に患者の生命を救うことに貢献している。また、WOC看護認定看護師は、創を確実に治し、自己管理しやすいストーマ造設をすすめることができる。WOC看護のケア技術はかなり確立されており、教育訓練を受けた者とそうでない者との技術格差は大きい。認定看護分野は、ある特定のケア技術と知識を用いて、限定された看護現象への介入を行うことが主であるので、これらのケア技術や知識、ケアに先立つ患者の状態のアセスメントなどについて十分な訓練を受けたものとそうでないものとの技術の差は大きいと思われる。認定看護師はその熟練したケア技術により、確実に患者の回復を早め、苦痛を除くことによって入院期間の短縮に貢献していると思われる。また効率よくケアを提供することによってコストの削減ももたらしていると思われるが、現段階ではまだ事例によって実証するだけの段階である。今後、WOC看護の分野では費用対効果の研究を進める必要があるであろう。
結論
今回の研究結果から、専門看護師および認定看護師の導入は、複雑で解決困難な問題を持つ患者や家族に対する看護ケアの質の改善・向上をもたらすこと、看護婦集団の活力を増大させること、チーム医療を効果的に実施できること等の点で成果があった。これらのことが結果として患者の回復を早め、在院日数を短縮することにつながっている。今後もさらに、効果があったと思われる事例の蓄積と分析を通して専門看護師、認定看護師の評価を行う必要がある。
公開日・更新日
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