がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発

文献情報

文献番号
200720009A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発
課題番号
H18-3次がん-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山田 哲司(国立がんセンター研究所 化学療法部)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 格(国立がんセンター研究所 プロテオームバイオインフォマティックスプロジェクト)
  • 本田 一文(国立がんセンター研究所 化学療法部)
  • 尾野 雅哉(国立がんセンター研究所 化学療法部)
  • 西村 俊秀(東京医科大学 外科学第一講座)
  • 佐田 尚宏(自治医科大学 鏡視下手術部)
  • 安波 洋一(福岡大学 再生・移植医学講座)
  • 土田 明彦(東京医科大学 外科学第三講座)
  • 井岡 達也(大阪府立成人病センター 検診部)
  • 中森 正二(国立病院機構大阪医療センター)
  • 奥坂 拓志(国立がんセンター中央病院 第一領域外来部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
73,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん検診で無症状の段階でがんを発見し、早期に治療を開始することは有効ながん対策法の一つと考えられる。本研究班では、全国どの医療施設でも同じ条件で非浸襲的に得られる血液を検体に用い、精密検診を行うべき症例を効率良く絞るプレスクリーニングに使用できる新規腫瘍マーカーを開発することを目的としている。
研究方法
各地のがん医療の中核となる7つの医療機関が参加する多施設共同研究により膵がん以外にも胃がん、大腸がん、などの比較的罹患率の高いがんの罹患者、および鑑別疾患の対象となる良性疾患患者および健常者から血清・血漿を匿名化された精度の高い臨床情報とともに収集した。逆相磁気ビーズを用いて脱塩処理し、384穴MALDI金蒸着プレート上にマトリックスとともに分注・乾固し、4重極直行型高分解能質量分析器が全自動計測するMBHICs -MALDI-QqTOF-MS法(MBHICs; magnetic bead based hydrophobic interaction chromatography system)を確立し、これらの検体の血漿タンパク質発現プロファイルを得た。
結果と考察
はじめに標準血漿検体を用いて、MBHICs -MALDI-QqTOF-MS法の網羅性と定量再現性を確認した。検出されたペプチドピークの総数は2100本以上であり、全ピークの変動係数は0.0392±0.0161と良好であった。平成19年12月27日採血分までで774症例分の血漿・血清検体を多施設共同研究にて前向きに収集した。プロテインチップ法で同定された3マーカーは、膵がん患者でMBHICs -MALDI-QqTOF-MS法でも統計学的に有意に低下し、プロテインチップ法と同様の高いAUC (area under curve)値を示した。まだ症例数が少なく確定的なことはいえないが、臨床病期I,II期の膵がん患者でも低下する傾向が観察され、がん検診への応用が期待できた。今後胃がん、大腸がんなどの比較的発生頻度の高い腫瘍の検診に応用可能な腫瘍マーカーの開発にも取り組む計画である。
結論
臨床検体のプロテオーム解析を行う場合は、その検体の採取・保存方法で、結果は大きく左右される。今回われわれは日本全国の地理的に異なる計7施設から同一の方法で前向きに血漿検体を採取し、プロテオームプロファイリングによる膵がんの診断法の検証実験を行い、良好な成績を得た。

公開日・更新日

公開日
2008-06-05
更新日
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