タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200719025A
報告書区分
総括
研究課題名
タンデムマス等の新技術を導入した新しい新生児マススクリーニング体制の確立に関する研究
課題番号
H19-子ども-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山口 清次(国立大学法人島根大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 重松 陽介(国立大学法人福井大学 医学部)
  • 原田 正平(国立成育医療センター 研究所)
  • 大日 康史(国立感染症研究所)
  • 加藤 忠明(国立成育医療センター 研究所)
  • 三科 潤(東京女子医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
23,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新生児代謝異常マススクリーニングが開始されて30年が経過する。この間に少子化の進行、経済状況の変化、新技術の開発、新治療法の開発など取り巻く環境は変化した。わが国の新生児マススクリーニングの質の向上をめざすことを目的として、タンデムマス等を導入した新しい体制の確立について検討した。
研究方法
 タンデムマス導入にともなう診療支援体制作り、新しいスクリーニング技術の開発、精度管理を含む検査体制のあり方、パイロットスタディー、費用対効果、および聴覚スクリーニングの効果について検討した。
結果と考察
1)新しい対象疾患となる有機酸・脂肪酸代謝異常の自然歴を調査した。有機酸血症で発症した小児のうち新生児例が40%を占めた。脂肪酸代謝異常では10%であった。
2)有機酸血症で、発症後に診断された患者の正常発達は33%、タンデムマスによる新生児スクリーニングでは83%であった。脂肪酸代謝異常では発症後正常発達は52%、スクリーニングで発見された患者は100%であった。タンデムマススクリーニングの効果が明らかである。
3)2007年のパイロットスタディーで、17万人スクリーニングして20例の代謝異常患者を発見した。日本では8,000-1万人に1人の頻度で発見される。欧米に比べ日本では頻度は低い傾向がある。
4)血液ろ紙とタンデムマスによるムコ多糖症スクリーニング技術を開発した。簡便なスクリーニング法としての選択肢が広がったが、検査技術とコストの問題などの課題が残されている。
5)タンデムマスは1台で年間5万検体の処理が可能である。これまでのような都道府県単位では年間出生数が、5,000-10万までバラツキがあり、タンデムマス検査施設の集約化が必要である。
6)聴覚スクリーニングは全国で60%の産科施設が行なっている。聴覚障害に対して補聴器などを装着する時期が、スクリーニングを受けた人は大部分が半年以内であり、それ以外は5才頃まで遅れる人もあった。聴覚スクリーニングで発見される頻度は500-1,000人に1人であり、普及させる価値はあると思われる。
結論
 障害児対策は、治療よりも予防が重要である。新生児スクリーニングはその重要な役割を果たす。効率的な体制を確立し、対象疾患を拡大することは母子保健行政のサービス向上につながり、結果的に医療費の低減と少子化に歯止めをかけることに貢献する。

公開日・更新日

公開日
2008-04-21
更新日
-