超少子化時代のわが国における新たな不妊症原因の究明と社会に即した治療システムの開発

文献情報

文献番号
200719016A
報告書区分
総括
研究課題名
超少子化時代のわが国における新たな不妊症原因の究明と社会に即した治療システムの開発
課題番号
H18-子ども-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
阿久津 英憲(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部・生殖技術研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 章(福島県立医科大学 医学部・産科婦人科学教室)
  • 吉村 泰典(慶應義塾大学 医学部・産科婦人科学教室)
  • 矢野 哲(東京大学 医学部・産科婦人科学教室)
  • 大須賀 穣(東京大学 医学部・産科婦人科学教室)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学 医学部・産科婦人科学教室)
  • 井ノ上 逸朗(東海大学 医学部・基礎医学系分子生命科学)
  • 柳田 薫(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
  • 岡部 勝(大阪大学 微生物病研究所・生殖科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
29,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ライフスタイルの変化により出産時年齢は高齢化し生殖と加齢との関連性に係わる疾患や現象に対して、科学に基づいたエビデンスを与え社会に即した生殖医療システムを構築し国民に提供することを目指す。更に、生殖と加齢の問題について、加齢と卵細胞の質に与える影響に関する科学的エビデンスを創出する。
研究方法
子宮内膜症を合併する不妊症患者の合理的な治療指針を検討し、子宮内膜症の分子関与と新たな治療薬の作用機序に関して臨床検体を用いて行った。個体加齢と卵細胞質との慣例性について新たな評価系の構築と、卵細胞機能に関する新たな分子メカニズムの解明を行う。ES細胞を加齢化モデルの胚より樹立しその特性解析から加齢化卵の多分化能性へ寄与する性質を体外培養系で探る実験系を構築し網羅的遺伝子解析や分化挙動解析を行う。
結果と考察
子宮内膜症例では妊孕能が低下する。時間経過とともに子宮内膜症が増悪すること、また卵巣(卵子)がageingすることから、よりテンポの早い治療計画が必要である。来年度に向けて、新たな治療薬の研究データをもとに社会に即した治療法の標準化を目指す。本研究は初めて子宮内膜症患者腹腔内貯留液中のsCD44を明らかにした。CD44との関連で子宮内膜症の進行に抗する生体の防御メカニズムを捉える新たな可能性を示唆している。Th17細胞の確認をし、IL-17受容体を介した作用が子宮内膜症組織で起こっており、IL-17が子宮内膜症の進展を促進することが推測された。SRCと疾患に関わる解析は、良性疾患における解析は非常に少ない。本研究は卵巣性子宮内膜症でSRC-1が強く発現しているという共役因子もその進展に関与している可能性を示唆するものであった。今後このようにリガンド依存性疾患に対し共役因子を解析することが重要になると考える。子宮内膜症についても現在GnRHアゴニスト、ダナゾール、低容量ピルなどが治療薬として用いられているが、共役因子の重要性が確認されればこれを抑制するような創薬にも貢献することができる。
結論
女性のライフスタイルに合わせ、これまでの社会的QOLを減ずるような治療法にとってかわる新規治療薬・法の臨床研究を行ってきた。分子レベルで子宮内膜症の一端を明らかにし、科学的エビデンスを構築し現在の社会に即した治療法を構築していく。加齢と卵子の質に関する適切な実験系が存在しないためにその領域の研究が遅々としてすすまなかったが、本研究において、基盤となる研究システムの構築が整ってきた。

公開日・更新日

公開日
2008-10-09
更新日
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