文献情報
文献番号
200719013A
報告書区分
総括
研究課題名
全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究
課題番号
H18-子ども-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
武谷 雄二(東京大学医学部附属病院産婦人科)
研究分担者(所属機関)
- 北村 邦夫(社団法人日本家族計画協会)
- 中村 好一(自治医科大学公衆衛生学教室)
- 安達 知子(総合母子保健センター愛育病院産婦人科)
- 新野 由子(医療経済機構研究部)
- 竹下 俊行(日本医科大学産婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
26,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1.人工妊娠中絶の実態を多角的に把握し中絶の危険因子を明らかにする。2.十代の中絶防止対策について国際比較調査を実施し学ぶべき取組を明らかにする。3.反復中絶を回避するためのプロトコールを作成し臨床現場で試行する。4.効果的な避妊教育プログラムの開発に向けて先進国の経験を学ぶ。5.中絶経験を有する女性について分娩時障害の有無を明らかにする。6.医師主導型臨床試験を実施し緊急避妊法の作用機序の解明に努める。
研究方法
1.過去3回行った「男女の生活と意識に関する調査」のうち、女性2560人を解析対象として人工妊娠中絶の経験の有無、性や妊娠に対する意識や行動の差異について観察した。2.「十代の望まない妊娠防止対策に関する調査票」を141カ国に送付、65カ国から回答を得た。3.産婦人科医・助産師を構成員とする有識者会議を開催し反復中絶防止に向けた議論を展開した。4.先進的に性・避妊教育に取組でいるスウェーデン、米国を訪問しヒアリング調査を実施した。5.大学付属病院で分娩した825症例を対象に中絶後の障害について検討した。6.緊急避妊ピル投与後に各種検査を実施し作用機序の解明に努めた。倫理面への配慮に努めた。
結果と考察
1.わが国女性の84.3%が性交の経験を有し16.0%が中絶を経験し、うち29.6%が複数回の経験があること。中絶危険因子として、「初回性交時の年齢が低い」、「こどもの人数」などが抽出された。性交開始早期からの避妊指導の重要性が示唆された。2.スウェーデンでは性・避妊プログラムについては学校と組織間の連携が図られていること、米国では禁欲のみ教育が推進されていることを確認した。3.国際調査では65カ国からの回答を得たが、わが国では若者の性に対する行政的支援が立ち後れていることを知った。4.中絶登録者456人を対象に徹底した避妊指導と中絶早期からの確実な避妊法選択を促すことで反復中絶を減少させられるかを追跡した。5.中絶による分娩への影響としては子宮内感染が抽出された。6.緊急避妊の作用機序としては、排卵の遅延と抑制、子宮内膜への直接作用などが考えられた。
結論
中絶防止と反復中絶を回避させるには近代的避妊法の普及と保健医療の場におけるきめ細かな避妊指導が不可欠であることなどを明らかにした。本研究班が提言する中絶防止対策は女性生殖器の保護、妊孕性の維持、少子化への歯止め、女性のQOLの向上、青少年の健全育成などに貢献するものと確信している。
公開日・更新日
公開日
2009-07-16
更新日
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