細胞を血行性脳実質内動員する機序の解析およびそのアルツハイマー病治療への応用

文献情報

文献番号
200718085A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞を血行性脳実質内動員する機序の解析およびそのアルツハイマー病治療への応用
課題番号
H19-長寿-若手-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
内村 健治(国立長寿医療センター研究所 アルツハイマー病研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病治療法開発は様々なアプローチがなされている。しかしながら、その妨げになっている問題の一つは薬剤等の中枢神経組織内への効率的な動員法が確立していないことである。本研究目的は脳移行性細胞を利用した細胞医薬によりこの問題を解決し、アルツハイマー病新規治療法開発の技術基盤の確立を目指すことである。
研究方法
本主任研究者は今までに末梢組織への血行性細胞遊走に関わる分子メカニズムを解明した実績を持つ(Uchimura et al, Nature Immunol 2005)。この成果をさらに発展させ、本研究ではマウス脳血管内での脳移行性細胞の動態を生体内ビデオ蛍光顕微鏡によりライブイメージング解析する。この解析により未だ不明な脳実質内血行性細胞動員の分子機序を明らかにする。
結果と考察
本研究一年目に本主任研究者は全く新規な細胞遊走メカニズムを米国およびカナダの研究者グループとの共同研究により報告した(Veerman et al, Nature Immunol 2007)。また、ある条件下では骨髄単球由来細胞がマウス脳実質内へ移入する知見を得ることができた。現在は脳移行性骨髄単球由来細胞の細胞表面接着分子の解析を行い、さらに脳移行条件の最適化を実施している。一方、本主任研究者はヘパラン硫酸多硫酸化ドメインが重合アミロイドβタンパク(Aβ)沈着部位に局在することを発見した。この特殊なドメインがAβ重合に関わっていることが強く示唆された。Aβ重合とヘパラン硫酸多硫酸化ドメインとの分子相互作用をさらに解析するため多硫酸化ドメインを分解する酵素、細胞外スルファターゼ、の解析を実施する。
結論
中枢神経疾患治療法開発へ応用することが細胞を血行性に脳内へ送り込む技術には期待される。アルツハイマー病発症モデルマウスを使用したアルツハイマー病態脳における脳移行性についても着手する。すなわち、アルツハイマー病において神経毒性の原因と予想される重合Aβの形成を阻止する可能性がある細胞外スルファターゼ酵素遺伝子またはAβ沈着体を分解促進する既知の酵素遺伝子を脳移行性細胞に脳内へ搬送させ、脳内Aβ沈着を停滞または除去させる技術開発を目指す。発現停止誘導する制御機構を付与し副作用に対処する。

公開日・更新日

公開日
2008-08-08
更新日
-