認知症の包括的ケア提供体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200718074A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の包括的ケア提供体制の確立に関する研究
課題番号
H19-長寿-一般-023
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
柳澤 信夫(独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(筑波大学 臨床医学系 精神医学)
  • 植木 彰(自治医科大学附属大宮医療センター 神経内科)
  • 小長谷陽子(認知症介護研修・研究大府センター )
  • 荒井啓行(東北大学大学院医学系研究科 先進漢方治療医学)
  • 鳥羽研二(杏林大学 医学部)
  • 鷲見幸彦(国立長寿医療センター病院 外来診療部)
  • 武田雅俊(大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学・精神医学)
  • 服部英幸(国立長寿医療センター病院 行動・心理療法科)
  • 遠藤英俊(国立長寿医療センター病院 包括診療部)
  • 荒井由美子(国立長寿医療センター研究所 長寿政策科学研究部)
  • 長谷川友紀(東邦大学医学部 医療政策・経営科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急増が予測される認知症のケアに対する包括的かつ実効的な対策を確立する。
研究方法
昨年度実施したプロジェクト型研究により明らかとなった認知症ケアに関する問題点をふまえ、全国での実施を見据えたパイロット研究を開始する。
結果と考察
ケアに関連した治療・介入については健忘型MCI患者に運動介入を行い、記憶改善を期待できることが示された。また個々の患者に長期間継続可能な栄養指導を行うことが認知機能低下の抑制に有用なことが明らかになった。これらの研究は予防、生活指導の両面で意義が大きい。ARBと脳移行性ACE-IにはADの進行を遅延させる効果が期待できることが示された。非薬物療法の評価としてクロスオーバー法による無作為化介入研究を試み、同時にバイオマーカーの面からも検討を開始した。従来効果判定の困難さが指摘されている非薬物療法評価に対する重要な試みである。地域連携の問題点としては、地域の受け入れ医療機関数が少ないこと、連携が不足している現状が明らかになった。認知症BPSDの診療の現況をアンケート調査した。患者の状態評価方法の作成、地域における認知症治療可能施設のリスト作成、医療、介護、福祉、行政を包含する研究会の立ち上げ、地域の医師会などとの連携などの必要性が示された。家族支援では家族教育に重点をおき、行政と協力し在宅の家族への教育支援プログラムとして家族向けの教育テキストの開発を行った。効果については今後の課題である。認知症ケアの阻害因子についてアンケート調査を開始した。高齢社会における認知症患者の安全確保の観点からどのような医療提供体制を構築することが望ましいかを明らかにする。介護従事者の教育に関しては介護従事者は社会の要請であり、新しい知識や技術を伝える研修だけでなく、待遇改善や、精神面のフォローが必要で、質を高める努力のみでなく、医療との連携をさらに強化する必要がある。わが国において認知症の病名告知に関する議論をさらに進めるためには、家族に対するサポートを含め、告知後の医療や介護の整備体制についても検討していく必要がある。
結論
現場で認知症ケアにかかわっている研究者が必要と感じている研究課題について具体的な研究が開始された。医療とケアの連携がひとつのキイワードになる。また良質のケアを続けるための支援体制作りが重要なポイントとなる。

公開日・更新日

公開日
2008-12-14
更新日
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