老化に伴う神経変性疾患の標準的医療確立のための長期縦断疫学研究

文献情報

文献番号
200718055A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴う神経変性疾患の標準的医療確立のための長期縦断疫学研究
課題番号
H19-長寿-一般-004
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 章景(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 平山 正昭(名古屋大学医学部附属病院 神経内科学)
  • 服部 直樹(名古屋大学医学部附属病院 神経内科学)
  • 渡辺 宏久(名古屋大学医学部附属病院 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 加齢に伴う神経変性疾患の標準的医療確立には自然歴やQOLに影響する因子の解明が必要である。本研究は筋萎縮性側索硬化症(ALS) およびパーキンソン病(PD)などの神経変性疾患に対して、多施設共同長期縦断自然歴把握システムを構築し、遺伝子検体を併せて蓄積することで、我が国におけるこれらの疾患の横断的、縦断的臨床像および発症、進行、予後に関与する臨床的、遺伝子的因子を明らかにすることを目的とした。
研究方法
 ALSについて、前向き経時的情報収集のために臨床研究コーディネーター(CRC)による電話調査を導入したシステムを構築した。患者から採血を行い匿名化した後、DNA抽出およびB-cell line化を行った。ALSに対する研究状況をホームページ(http://www.jacals.jp/)にて公開し、患者団体主催講演会などにおいても紹介した。PDについては担当医師の評価および経時的なQOL、ADLなどに関するアンケート調査を軸にした体制を構築した。研究成果をもとに患者からしばしば受ける質問に対するQ and A集パンフレットを作成し、患者・家族への配布を進めた。
結果と考察
既に225名のALS患者を登録し、同数のゲノムDNAを保存した。登録患者の経過観察補足率は96%と高率である。PDについて同様の多施設共同長期縦断自然歴把握システムおよび遺伝子収集システムを構築し、現在321例の臨床データを集積した。横断像、縦断像の解析からPDでは進行とともに多彩な非運動機能異常を認め、鬱を中心にQOLとも密接な関連があること、麦角系ドパミンアゴニストの副作用である心臓弁膜症を評価する上でBNPが有用であること、日中の予期せぬ睡眠を予防するためには非運動機能異常の改善を目指すことも重要であることを明らかにした。
結論
 我々の構築したALS、PDについての長期縦断自然歴把握システムにおいては、臨床現場の負担を増やさず、転医症例についても脱落例を最小限にして長期予後を把握することができる。これらに匿名化された遺伝子リソースを結びつけており、ALS、PDの発症のみならず、進行、臨床病型、予後など従来とは異なる視点から遺伝子多型との相関を解析していく基盤が整備された。今後長きにわたり、我が国発の神経変性疾患研究を支える資源となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-11-14
更新日
-