高齢者の性ホルモン低下に伴う各種合併症に対する臨床研究

文献情報

文献番号
200718054A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の性ホルモン低下に伴う各種合併症に対する臨床研究
課題番号
H19-長寿-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
並木 幹夫(金沢大学大学院医学系研究科集学的治療学)
研究分担者(所属機関)
  • 民谷 栄一(大阪大学大学院工学研究科精密化学応用物理学)
  • 高 栄哲(金沢大学大学院医学系研究科集学的治療学 )
  • 小中 弘之(金沢大学医学部附属病院泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 従来から顕在するホルモン補充療法における“性差”を是正すべく,高齢男性の性ホルモン低下に起因する諸症候を呈する病態である,加齢男性性腺機能低下(Late-Onset Hypogonadism: LOH)症候群に着目し,その推奨治療であるアンドロゲン補充療法(ART)の有用性を前向きランダム化比較試験(RCT)によって検討する.また,LOH症候群に対する診断から治療までを展開するテーラーメイド医療を確立するために,LOH症候群におけるバイオ診断チップの開発, ARTの有効性を規定しうる遺伝子多型の解析も予定する.
研究方法
 主研究として,多施設共同の大規模RCT (1) 中高年男性における前立腺特異抗原(PSA)と遊離型テストステロン(Free-T)との相関および運動習慣の有無(スクリーニング試験),(2) LOH症候群におけるARTの有用性(本試験)を立案し,スクリーニング試験から,適格症例をLOH症候群として本試験にエントリーし,テストステロン投与群と非投与(コントロール)群の2群に無作為化後,ARTの効果を比較検討する.また,副研究として,1) LOH症候群に対するバイオ診断チップの開発,2) LOH症候群における治療感受性を規定しうる遺伝子多型の解析においては,同意が得られた症例から血液,唾液を採取する. 
結果と考察
 現在エントリー数は,スクリーニング試験300例,本試験50例となっている.倫理委員会の承認が必要な遺伝子多型の解析おける執行遅延は約3ヵ月,バイオ診断チップの開発は計画通りの進捗状況となっている.本研究によってEBMに基づいた適正なARTを普及させることと,LOH症候群に対する診断から治療までを展開するテーラーメイド医療を確立することは,高齢男性のQOLを高めるとともに健康寿命の延伸に寄与し,医療費の削減にもつながることから,超高齢社会における大きな福音になりうると考えられる.
結論
 本研究では,アンドロゲンの欠乏に伴う諸症候からなる病態として,LOH症候群という新しい概念の啓発に努めるとともに, ARTの有効性を検証する大規模なRCTを国外に先駆けて始動した.さらに副研究として “LOH症候群に対する非侵襲的な診断法の開発” と “LOH症候群に関与するARTの治療感受性遺伝子の同定”を実現する.本研究が高齢者に特有の医学的諸問題の解決に対するブレークスルーの一つとなり,現行の介護中心の医療からWHOが提唱する“healthy and active aging for men”への転換を進展させる新たな長寿医療研究が萌芽すると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2008-08-08
更新日
-