虚弱高齢者の歩行維持の機能的評価システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200718051A
報告書区分
総括
研究課題名
虚弱高齢者の歩行維持の機能的評価システムの開発に関する研究
課題番号
H18-長寿-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山下 和彦(東京医療保健大学医療保健学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
1,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の転倒が社会的問題である.転倒予防にはバランス機能や歩行機能の評価が重要であるが,定量的かつ有効な評価方法は確立されておらず,身体機能向上のための運動支援などにより歩行機能やバランス機能の向上を狙っても,定量的に評価することはできなかった.そこで本研究では,高齢者の歩行・バランス機能の定量的評価機器と指標の開発を目的に研究を進めた.
研究方法
靴のインソールに計測工学,歩行解析等の観点から最適位置と考えられる場所に片足につき7つのセンサを埋込み,重心位置を抽出できるシステムを開発した.得られたデータは,無線にて解析用PCに送られ,靴を履くのみで無拘束に計測が行える.このことで,日常生活中での計測が可能となった. 2年間で行った実験は次の通りである.
①インソール型重心動揺計の開発,②本計測器による歩行機能の定量的評価,③バランス機能と歩行機能の評価指標の開発,④様々な高齢者の転倒リスクからみた歩行機能の分類,⑤下肢筋力等の定量的評価値と歩行機能の関係の解析,⑥介入による歩行機能向上の定量的評価への応用
結果と考察
結果は,①複数サイズの計測器を試作し,圧センサの特性評価,圧力精度向上のためのキャリブレーション手法の開発,据え置き型重心動揺計との比較による計測精度検証を行い,本計測器の実用性を確立した.②要介護高齢者を対象とした小規模フィールドテスト,転倒リスク抽出のためのデータ解析・考察等を行い,本計測器が有効に利用できることを確認した.③複数のタイプの高齢者と若年者の歩行機能とバランス機能を計測し,確からしい評価指標の構築を行った.④③で得た結果を詳細に分析し,歩行機能において転倒リスクが高いと考えられる対象者を分類するためのポイントについて精査した.⑤現在行われている障害物歩行や10m歩行との比較,申請者らが開発した足指力計測器等との比較を行い,歩行機能,下肢筋力等との比較を行い,一定の見解を導いた.⑥特定高齢者に運動指導および足部ケアを実施し,経時的歩行機能の推移について開発した計測装置で効果を確認した.
結論
以上の結果より,開発したインソール型重心動揺計測装置が幅広く地域で活用でき,歩行機能・バランス機能について正しく定量的に計測・評価できることが確かめられた.これは,多数の高齢者の中から定量的に転倒リスクの高いハイリスク者を導出できるポピュレーションアプローチに利用可能である.

公開日・更新日

公開日
2008-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200718051B
報告書区分
総合
研究課題名
虚弱高齢者の歩行維持の機能的評価システムの開発に関する研究
課題番号
H18-長寿-若手-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
山下 和彦(東京医療保健大学医療保健学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者の転倒が社会的問題である.転倒予防にはバランス機能や歩行機能の評価が重要であるが,定量的かつ有効な評価方法は確立されておらず,身体機能向上のための運動支援などにより歩行機能やバランス機能の向上を狙っても,定量的に評価することはできなかった.そこで本研究では,高齢者の歩行・バランス機能の定量的評価機器と指標の開発を目的に研究を進めた.
研究方法
靴のインソールに計測工学,歩行解析等の観点から最適位置と考えられる場所に片足につき7つのセンサを埋込み,重心位置を抽出できるシステムを開発した.得られたデータは,無線にて解析用PCに送られ,靴を履くのみで無拘束に計測が行える.このことで,日常生活中での計測が可能となった. 2年間で行った実験は次の通りである.
①インソール型重心動揺計の開発,②本計測器による歩行機能の定量的評価,③バランス機能と歩行機能の評価指標の開発,④様々な高齢者の転倒リスクからみた歩行機能の分類,⑤下肢筋力等の定量的評価値と歩行機能の関係の解析,⑥介入による歩行機能向上の定量的評価への応用
結果と考察
結果は,①複数サイズの計測器を試作し,圧センサの特性評価,圧力精度向上のためのキャリブレーション手法の開発,据え置き型重心動揺計との比較による計測精度検証を行い,本計測器の実用性を確立した.②要介護高齢者を対象とした小規模フィールドテスト,転倒リスク抽出のためのデータ解析・考察等を行い,本計測器が有効に利用できることを確認した.③複数のタイプの高齢者と若年者の歩行機能とバランス機能を計測し,確からしい評価指標の構築を行った.④③で得た結果を詳細に分析し,歩行機能において転倒リスクが高いと考えられる対象者を分類するためのポイントについて精査した.⑤現在行われている障害物歩行や10m歩行との比較,申請者らが開発した足指力計測器等との比較を行い,歩行機能,下肢筋力等との比較を行い,一定の見解を導いた.⑥特定高齢者に運動指導および足部ケアを実施し,経時的歩行機能の推移について開発した計測装置で効果を確認した.
結論
以上の結果より,開発したインソール型重心動揺計測装置が幅広く地域で活用でき,歩行機能・バランス機能について正しく定量的に計測・評価できることが確かめられた.これは,多数の高齢者の中から定量的に転倒リスクの高いハイリスク者を導出できるポピュレーションアプローチに利用可能である.

公開日・更新日

公開日
2008-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718051C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は定量的な歩行機能計測のためにインソール型重心動揺計測器を開発した.従来,床反力計や据置型重心動揺計など高価な計測機器を実験室内で使用することで歩行機能が調べられてきたが,実験的環境下では正しく評価できない可能性が挙げられる.そこで本研究では,無拘束,簡便かつ定量的に日常生活中での歩行機能を計測できる機器を開発し,その実用性について明らかにした.その結果,本計測機器により日常生活中の歩行機能から転倒リスクが評価可能となり,大規模な高齢者集団に対する定量的な介入のアプローチが可能となった.
臨床的観点からの成果
介護予防を効果的に進め,高齢者医療費等の抑制を図るには,高齢者の転倒予防が重要である.効果的な転倒予防には,高転倒リスク高齢者を正しく抽出し,対象者の特性に合った介入が求められる.これら問題点を鑑み本研究では,転倒に密接に関係するバランス機能と歩行機能に着目した定量的な計測・評価システムを開発した.本計測システムによる介入実験により,健常・特定・要介護高齢者の転倒リスクを定量的に評価できることがわかった,また,特定高齢者を対象とした運動指導から歩行機能が改善していることを明らかにした.
ガイドライン等の開発
本研究成果は高齢者の身体機能に基づいた転倒リスク評価という観点からガイドラインへの活用に利用できると考えられる.さらに本研究では歩行機能だけではなく,下肢筋力等との関係も明らかにし,転倒リスク値を算出できていることから,これらを利用することで,標準化された計測手法を確立でき,地域間の比較(横の比較),加齢変化・介入成果といった時系列の比較(縦の比較)から新しいエビデンスの確立が可能となる.益々加速する高齢化問題にアプローチするための基礎を提供できるため,ガイドラインへの採用を期待する.
その他行政的観点からの成果
本研究は従来の評価手法を否定するものではない.転倒リスクは身体機能のみで評価できないからである.すなわち,本手法を付け加えることで,閉じこもり予防,保健師や運動指導者のアプローチ,対象者に整合した介入手法の開発と評価手法の確立に寄与するものである.これだけではなく,IT等を利用することで医療,保健・福祉,健康の領域から新しいサービスの形も提案できる可能性がある.高齢者中心の支援体制を整えるには,定量的評価指標による各専門的技術者の包括的,横断的な介入が必要である.
その他のインパクト
本研究により開発したインソール型重心動揺計測システムは,厚生科学研究費(一般向け講演会),JSTの地域科学技術理解増進活動推進事業,東京医療保健大学 公開講座,埼玉県和光市の特定高齢者運動支援事業,その他で活用し,多くの高齢参加者の賛同を得た.今後も行政・自治体各機関,高齢者団体等との連携を密にして進める計画であり,共同研究の受け入れ体制も整っている.

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
10件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
野本洋平,山下和彦,川澄正史他
主成分分析を用いた高齢者の下肢機能の評価手法の開発
ヒューマンインターフェース学会論文誌 , 9 (2) , 109-116  (2007)
原著論文2
山下和彦,太田裕治,伊福部達他
SDA法を用いた高齢者の姿勢制御能の評価
生体医工学 , 45 (1) , 121-128  (2007)
原著論文3
山下和彦,井野秀一,伊福部達他
SDA法による高齢者と若年者の姿勢制御能の評価
東京医療保健大学紀要 , 2 (1) , 43-51  (2007)
原著論文4
山下和彦,井野秀一,伊福部達他
SDA法を用いた姿勢制御能の加齢変化の解析
ライフサポート学会誌 , 20 (1) , 31-37  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-