ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発

文献情報

文献番号
200718036A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトES細胞を用いたin vitro血管神経細胞分化システムによる「虚血脳再生ホルモン」の探索とホルモン補償による新規認知症治療法の開発
課題番号
H18-長寿-一般-027
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 裕(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 良輔(京都大学大学院医学研究科臨床神経学)
  • 吉政 康直(国立循環器病センター内科動脈硬化代謝臨床栄養部門)
  • 永谷 憲歳(国立循環器病センター研究所再生医療部)
  • 近藤 靖(田辺三菱製薬株式会社先端医療研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メタボリックシンドローム(MS)の結果生じる血管性認知症は、極めて深刻な医学的問題であるが、これまで根治的治療法は開発されておらず、虚血脳再生治療に大きな期待が寄せられている。本研究課題において昨年度までに虚血脳における血管拡張ホルモン アドレノメデュリン(AM)の血管-神経再生作用や、サルES細胞から神経系細胞への分化誘導法を明らかにした。これらの研究成果を踏まえ、虚血脳再生ホルモンとES由来細胞を用いた認知症再生治療の実現に向けた研究を推進する。
研究方法
1.AM投与で発現が低下する心血管障害因子アルドステロン(Aldo)の作用をスピロノラクトンで抑制したマウスに中大脳動脈20分閉塞脳梗塞モデルを施行して梗塞域を解析した。2.マウスES細胞由来血管前駆細胞(VPC)から内皮細胞への誘導過程でAMを添加して分化挙動を解析した。3.大腿動脈結紮下肢虚血モデルマウスにヒトES細胞由来細胞を移植して治療効果を検討した。4.マウスに両側頚動脈狭窄術(BCAS)を施行して脳組織や高次脳機能を解析した。5.糖尿病患者においてEPC数を測定した。6.リンパ浮腫モデルマウスにAMを投与して組織修復を評価した。7.サルES細胞由来神経幹細胞を脳線条体へ局所移植して移植した細胞の挙動を解析した。

結果と考察
1.Aldo作用の抑制によりbFGFなど虚血脳再生因子の発現が亢進し梗塞域が縮小した。2.AMは血管前駆細胞から動脈内皮細胞への分化を促進した。3.ヒトES細胞由来血管内皮細胞、壁細胞混合移植により血管再生が効果的に促進した。4.両側頚動脈狭窄術(BCAS)による新しい認知症モデルを開発した。5.糖尿病患者末梢血中EPC数と左室肥大の相関を見出した。6.AMのリンパ管再生作用とリンパ浮腫組織修復効果を明らかにした。7.サルES細胞由来神経幹細胞の脳線条体における生着と神経系各細胞への分化を見出した。これらの結果は、虚血脳再生ホルモンとヒトES細胞を用いた新規認知症治療法の有用性を示唆している。
結論
AMおよびヒトES細胞の認知症における有用性が示唆され、我々は、虚血脳において血管再生と神経再生を誘導する「血管-神経再生療法」を着想し、血管性認知症患者へのAM投与を計画している。

公開日・更新日

公開日
2008-07-30
更新日
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