老化に伴う認知症に有効な神経保護薬の臨床応用とその評価法の確立

文献情報

文献番号
200718035A
報告書区分
総括
研究課題名
老化に伴う認知症に有効な神経保護薬の臨床応用とその評価法の確立
課題番号
H18-長寿-一般-026
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
丸山 和佳子(国立長寿医療センター研究所 老年病研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 新畑 豊(国立長寿医療センター病院 先端医療部 第二アルツハイマー型痴呆科)
  • 鈴木 樹理(京都大学霊長類研究所 人類進化モデル研究センター)
  • 新田 淳美(名古屋大学大学院医学研究科)
  • 直井 信(財団法人国際岐阜バイオ研究所 客員研究部門)
  • 辻本 賀英(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
急速に超高齢化社会を迎えつつあるわが国において、要介護高齢者を支えるための人的、社会的負担は増大の一途をたどっている。本研究課題では早期に神経保護薬を実用化することを目標として研究を行った。
研究方法
国立長寿医療センター神経内科物忘れ外来に通院中のアルツハイマー病(AD)28例、パーキンソン病(PD)について心理テスト(MMSE)およびFDG-PETを行い、早期診断および鑑別診断としての有用性を検討した。オス成獣ニホンザル5頭に対しrasagiline 0.25 mg/dayを4か月間皮下注射し、経時的に脳脊髄液(CSF)および血漿を採取した。CSF、血漿中の神経栄養因子 、血漿中の代謝関連ホルモン、血糖、脂質を測定した。Leu-Ileをマウスに投与し、脳内神経栄養因子レベルと神経再生について検討を行った。神経保護薬のターゲットとして、細胞内酸化ストレスセンサーとミトコンドリアにおける細胞死シグナルについて検討を行った。
結果と考察
MMSEおよびFDG-PETはADとPDの鑑別には有用であるが、進行評価のためのsurrogate marker としては感度が十分ではなかった。Rasagiline投与後CSF中のBDNF、GDNFは増加し、血漿中insulinは低下した。血漿中BDNF、GDNFはCSFと相関は認められなかった。末梢サンプル(血漿あるいは尿)で測定可能なsurrogate markerとして酸化ストレスの指標として酸化脂質の特異抗体を用いた定量系を立ち上げた(特許準備中)。Leu-Ile投与によりマウス海馬歯状回におけるBDNFの産生促進と細胞新生を示すBrdU陽性細胞数の増加が認められた。神経保護薬の作用の分子メカニズムを検討したところ、glutathionylated proteinからのGSHの遊離が細胞内 redox signal の制御を行っていること、ミトコンドリアの膜透過性制御因子であるcyclophilin D が記憶、情動に関与することが明らかとなった。
RasagilineはニホンザルのCSF中、そしておそらくは脳内の神経栄養因子を増加させることから、少数例であれば臨床的に使用可能であると考えられる。さらに新たなmarkerとして、血漿あるいは尿のサンプル中の酸化ストレスマーカーをスクリーニングできるprotein chipの開発を現在進めている。
結論
経口投与可能な神経保護薬について、臨床的な研究を発展させるため、その作用メカニズムの解明とsurrogate markerを確立していく。

公開日・更新日

公開日
2008-07-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-