若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
200718032A
報告書区分
総括
研究課題名
若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究
課題番号
H18-長寿-一般-022
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
朝田 隆(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 学(熊本大学大学院医学系研究科)
  • 宮永 和夫(ゆきぐに大和病院)
  • 谷向 知(愛媛大学大学院医学系研究科)
  • 永田 久美子(認知症介護研究・研修東京センター)
  • 中村 祐輔(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
37,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
65歳未満で発症する若年性認知症について、全国レベルで疫学的な実態、当事者と家族が抱える問題の同定、遺伝子バンクの構築を目指した。
研究方法
1.疫学研究 
 茨城県と群馬県で、悉皆調査により有病率を算出した。
 若年性認知症とは「発病年齢と調査時点における年齢がいずれも65歳以下の者」と定義した。
2.当事者と家族が抱える問題
 内容は1)発病から診断、2)障害の程度、3)社会的支援、4)就労と退職に分類される。
 調査対象は、北海道、東京、奈良、大阪の家族会会員である。
3.遺伝子バンク
 3つの大学附属病院精神科にて遺伝子の収集を行う。
結果と考察
1.疫学研究 
 茨城では、患者数は540名となった。人口10万対で24.5人、30-64歳の人口10万対で50.0人であった。基礎疾患として、最多は脳血管性認知症(VaD)(46.7%)であり、アルツハイマー病(AD)(29.3%)、レビー小体型認知症・パーキンソン病(DLB/PDD) (6.5%)、前頭葉側頭葉変性症(FTLD)(3.0%)と続いた。群馬県では、388名と算出され、人口10万対で33.5人。基礎疾患はVaD、AD、そしてFTLDの順であった。熊本県、愛媛県、富山県、横浜市、徳島市でも調査進行中である。
2.当事者と家族が抱える問題
 回答者は配偶者が90%弱、多くは単独で介護をしていた。患者の現年齢は60.8歳±5.7歳、回答者は57.6±8.8歳であった。生活する場では、自宅が最多であった。
発病後、最初に訪れた機関では医療機関が80%を占め、確定診断されるまでの時間は1年未満が半分弱であった。診断機関としては専門外来が最多である。障害度は軽度と重度とが40%余りを占めた。成年後見制度の利用者が4.4%と低く、生命保険の高度障害の制度を知らないという回答が60%を占めた。
 永田が、地域包括支援センターを対象にアンケート調査を行った結果、若年認知症家ケースを何らかの形で把握し始めている自治体が約30%存在し、同センターが把握経路としての機能を果たし始めていることが明らかになった。
3.遺伝子研究
 収集数は300を超えたが、基礎疾患は様々でありかつ多くは孤発性例である。
結論
若年性認知症の人口10万対の有病率は茨城県では24.5人、群馬県では33.5人となった。基礎疾患として、最多は脳血管性認知症で、次いでアルツハイマー病であった。
当事者への就労支援は火急の対応が求められる課題である。

公開日・更新日

公開日
2008-07-29
更新日
-