歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発

文献情報

文献番号
200718015A
報告書区分
総括
研究課題名
歯周組織再生を基盤とした咀嚼機能改善技術の開発
課題番号
H18-長寿-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 正寛(大阪大学 大学院歯学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松下健二(国立長寿医療センター研究所)
  • 村上伸也(大阪大学 大学院歯学研究科)
  • 梅澤明弘(国立成育医療センター研究所)
  • 清野 透(国立がんセンター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢と共に進行する歯周病による歯の喪失は、高齢者の口腔機能を著しく低下させる。口腔機能の維持は介護予防の3本柱の一つに挙げられており、特に75歳以上の後期高齢者になると15本以上の歯を失っていることから、歯周病に対する対処が急務といえる。そこで本研究では、歯周病への対処ならびに咀嚼機能の維持、回復のための新しい治療技術を開発し、健全な咀嚼能力を維持し、健やかで楽しい生活を過ごそうという介護予防の一層の推進を図ることを目的にしている。
研究方法
歯周病の罹患率が高まる中高齢者より採取した歯槽骨より、ヒト歯槽骨由来骨芽細胞(HAOB)を採取した。得られたHAOBの骨芽細胞の分化誘導能力を解析する目的に、組み換えヒトBmp-2を添加し、骨芽細胞の分化マーカーの発現と石灰化能力を解析した。次にDNAマイクロアレイ法でHAOBの遺伝子プロファイリングを解析し、表現型を調べた。最後にHAOBの移植プロトコールを確立する目的に、歯周病動物モデルを用いた骨芽細胞移植実験も行った。
結果と考察
60歳代の顎骨歯槽骨より採取したHAOBは組み換えBmp-2の刺激により石灰物を形成し、そして骨芽細胞分化マーカーを発現することが判明した。HAOBは15 集団倍加係数(PDs)まで骨芽細胞分化能力を維持するが、その後PDsの増加に伴い脱分化して骨芽細胞分化能力を失うことが確認された。DNAマイクロアレイ解析を行った結果、骨芽細胞のマーカー分子であるosteocalcinの発現がPDsの増加と共に低下したことから、同遺伝子の発現レベルが骨形成能力を有するHAOBの判定に使用できる可能性が示唆された。次にビーグル犬歯槽骨骨片より骨芽細胞を採取し、歯周病病変を有する部位への自家移植実験を行った。その結果、骨欠損部位に新生骨の形成が観察された。
結論
独自に開発したHAOBの骨形成能力を迅速に判定する評価システムを構築し、またHAOBの骨芽細胞分化能を判定するマーカーの同定に成功した。歯周病動物モデルを用いた骨芽細胞の自家移植実験により、本研究で開発された骨芽細胞製剤が骨再生医療に適していることも確認できた。今後は、網羅的遺伝子発現解析に加え、CGH解析、in vivoにおけるさらなる検討を行い、HAOBのさらなる有効性・安全性の検討に着手していく。

公開日・更新日

公開日
2008-06-06
更新日
-