文献情報
文献番号
200718013A
報告書区分
総括
研究課題名
高血圧における老化促進因子としての脳内活性酸素をターゲットとした診断・治療法の開発
課題番号
H18-長寿-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
廣岡 良隆(九州大学病院循環器内科)
研究分担者(所属機関)
- 岸 拓弥(九州大学大学院医学研究院 循環器内科)
- 井手 友美(九州大学病院 循環器内科)
- 砂川 賢二(九州大学大学院医学研究院 循環器内科)
- 内海 英雄(九州大学大学院薬学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
超高齢化社会を迎え、高血圧症患者数の増加が推定されている。その管理は、脳血管障害の発症抑制のみならず、認知機能障害や無症候性脳梗塞の予防につながり、健康な高齢化社会を築く上で医学的見地のみならず行政上重要な課題である。近年、高血圧における酸化ストレスの役割が示唆されている。従って、本研究では、脳内活性酸素が高血圧の加齢促進因子として重要な因子であるかどうかを検討した。
研究方法
1) ヒト本態性高血圧症のモデルである自然発症高血圧ラット(SHR)もしくは脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP)において、週齢の異なるラットを用いて、脳内活性酸素産生を測定した。対照として、正常血圧ラット(WKY)を用いた。その手法としてin vivo ESR法を用いた。
2) 脳内活性酸素の産生源としては、特にNAD(P)H oxidaseの役割を検討し、WKYと高血圧モデルの間で比較検討した。
3) カルシウム拮抗薬やスタチンを経口投与し、脳内活性酸素産生レベルをSHRSPとWKYで比較検討した。
4)食塩過剰摂取は高血圧に本質的に関わる環境因子である。従って、食塩負荷による脳内活性酸素産生について検討を行った。
2) 脳内活性酸素の産生源としては、特にNAD(P)H oxidaseの役割を検討し、WKYと高血圧モデルの間で比較検討した。
3) カルシウム拮抗薬やスタチンを経口投与し、脳内活性酸素産生レベルをSHRSPとWKYで比較検討した。
4)食塩過剰摂取は高血圧に本質的に関わる環境因子である。従って、食塩負荷による脳内活性酸素産生について検討を行った。
結果と考察
活性酸素産生をin vivo ESR法を用いて測定した結果、既に6週齢でSHRSPの方がWKYより髙値を示していた。これは12週齢、24週齢においても継続して認められた。従って、SHRSPの脳内酸化ストレス増大には、高血圧発症初期の段階から活性酸素産生増加が関与していることが示唆される。一方、WKYでは大きな変化は認められなかった。従って、高血圧の遺伝的素因を有する場合、脳内酸化ストレスを抑制する治療が有用である可能性が考えられる。SHRSPの脳ではNAD(P)H oxidaseの活性化が生じており、活性酸素産生が増加していた。SHRSPに対して、長期作用型カルシウム拮抗薬やスタチンの経口投与は脳内活性酸素消去作用を有することを見出した。SHRに食塩負荷を行うと心血管中枢の活性酸素産生が増加し更なる血圧上昇に関与していた。従って、環境因子として薬剤に頼らない減塩はもっと啓蒙すべき点である。
結論
高血圧モデルラットにおける脳内活性酸素産生は高血圧発症時期から亢進しており、その持続状態が脳内酸化ストレス増加を長期にわたり継続させることになることが示唆された。この変化をin vivo ESR法を用いて生体観察を可能にした。食塩負荷という一般的な環境要因はこれを増強させる。さらに、脳内活性酸素産生増加の機序としてNAD(P)H oxidaseの活性化が関与していることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2008-05-24
更新日
-