高齢者の終末期ケアに関する研究―各施設における標準的終末期ケアの確立に向けて―

文献情報

文献番号
200718011A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の終末期ケアに関する研究―各施設における標準的終末期ケアの確立に向けて―
課題番号
H17-長寿-一般-044
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻 発育・加齢医学講座老年科学)
研究分担者(所属機関)
  • 植村和正(名古屋大学医学部附属総合医学教育センター)
  • 平川仁尚(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻医老年科学)
  • 安藤詳子(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻臨床看護学講座)
  • 飯島 節(筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻リハビリテーションコース)
  • 小坂陽一((財)光ヶ丘スペルマン病院)
  • 水川真二郎(杏林大学高齢医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,746,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)国民に自分の人生の終末期においてよりよい自己決定を行ってもらうための正確で分かりやすい情報を提供すること
2)国民に死の教育を行うためのツールの開発・事前の指示の方法の開発や、死の教育プログラムの開発を目指すこと。

研究方法
1)高齢者介護施設における職員教育の在り方を検討するため、名古屋市内の高齢者介護施設に勤務する看護・介護職員全員にアンケート調査を実施した。調査内容は、終末期ケアを施設で提供するための条件と終末期ケアに関して学習してみたい領域であった。
2)高齢者介護施設の職員用系統的終末期ケア教育プログラムのモデルとするため、全国の医学科・看護学科に平成18年度もしくは19年度のシラバスの送付を依頼した。医学科79校、看護学科110校のうち、各々57校、52校よりシラバスを得た。
3)日本の実情に合う高齢者介護施設用アドバンス・ケアプランニングシート(事前の終末期ケア計画票)を開発することを目的に、国内外の文献をレビューした。

結果と考察
1)45施設の看護職員366人、介護職員693人より回答を得た。終末期ケアに必要な条件として、看護・介護職員の増員、看護・介護を提供する時間、職員を対象にした終末期ケアに関する教育、医療機関・医師からの支援、医師・看護師の24時間体制などが挙げられた。学習したい領域について、終末期の認知症患者のケア、症状コントロール、身体ケア、入所者の意思決定、入所者・家族とのコミュニケーションなどが挙げられた。
2)必須の教育項目は、生命倫理、終末期の定義、高齢者におけるインフォームドコンセント、生活の質、家族ケア、チーム医療・ケア、緩和医療・ケア・技術、コミュニケーション、死の教育、社会制度となった。
3)シートの作成には、個々の医療行為よりケアの大枠を決めてもらうこと、決定した希望も状況により容易に変容することに配慮した。そして、病院への搬送の希望の強さを基準に設けた4つの選択肢、その意思決定の強さに関する選択肢、および代理人の選定の3項目で構成されるシートを開発した。
結論
研究で得られた成果は、将来の高齢者の終末期ケアガイドライン作成、終末期に関する患者・家族教育や終末期ケア提供者向けの教育の指針として利用できる。事前の指示の研究の成果により、我が国の実情にあった人生の終末期の意思決定を円滑にすることができる。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200718011B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の終末期ケアに関する研究―各施設における標準的終末期ケアの確立に向けて―
課題番号
H17-長寿-一般-044
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 雅文(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻 発育・加齢医学講座老年科学)
研究分担者(所属機関)
  • 植村 和正(名古屋大学医学部附属総合医学教育センター)
  • 平川 仁尚(名古屋大学大学院医学系研究科健康社会医学専攻老年科学)
  • 安藤 詳子(名古屋大学医学部保健学科看護学専攻臨床看護学講座)
  • 飯島 節(筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻リバビリテーションコース)
  • 小坂 陽一((財)光ヶ丘スペルマン病院)
  • 水川 真二郎(杏林大学高齢医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民に自分の人生の終末期においてよりよい自己決定を行ってもらうための正確で分かりやすい情報を集積すること、高齢者介護施設における終末期ケアの在り方、国民や高齢者介護施設で働く職員を対象とした教育の在り方を検討することである。
研究方法
平成17年度からの3年間、分担研究者毎に、教育に関する調査やフィールド調査、終末期ケアの質の向上に資するツールの開発を行ってきた。
結果と考察
1)療養型病床群において、患者の特徴は心肺蘇生の希望とは関係がなく、終末期ケアについて説明した医師が誰であるかが関係していた。
2)高齢者介護施設職員の意識から、終末期ケアに必要な条件として、看護・介護職員の増員、看護・介護を提供する時間、職員を対象にした終末期ケアに関する教育、医療機関・医師からの支援、医師・看護師の24時間体制などが挙げられた。学習したい領域について、終末期の認知症患者のケア、症状コントロール、身体ケア、入所者の意思決定、入所者・家族とのコミュニケーションなどが挙げられた。
3)高齢者介護施設用アドバンスケアプランニングシート(事前の終末期ケア計画票)を開発した。
 その他、高齢者介護施設での看取りを推進する上で、終末期ケアに精通する医師・看護師・介護職員の質と量の不足などの問題や人員配置など制度面や教育面の問題があることが分かった。24時間体制の地域・職種間連携、ケアの提供者及び患者・家族に対する教育が重要であろう。そして、大多数のケア従事者が一定の水準、つまり科学的根拠に基づく水準で教育を受け、ケアを実践する必要がある。
本研究の成果は、科学的根拠と専門家的コンセンサスに基づく「高齢者介護施設における終末期」指針の立案に寄与するであろう。また、終末期ケア教育にも利用できると考える。
さらに、医師の説明の仕方が患者・家族の意思決定に大きな影響を与えるようである。本研究の成果、特にアドバンスケアプランニング票の開発により根拠に基づいた説明用ツールの開発が可能になり、インフォームドコンセントの標準化、高齢者介護施設における事前の意思表示の普及に資するであろう。

結論
人生の終末期に関する研究を多方面から進めてきた。本研究の成果は、高齢者終末期ケアガイドライン作成、患者・家族・ケア提供者向け教育の指針の作成、終末期の意思決定方法の確立に寄与するであろう。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高齢者介護施設職員の意識から、看護・介護職員を対象にした終末期ケア教育の必須項目が明らかになった。また、全国の医学科・看護学科のシラバスの調査により、従来の緩和ケア教育プログラムとは異なる、高齢者終末期ケアに必要な包括的教育プログラム案が作成できた。その他、高齢者の終末期ケアに重要な要素として、「鎮痛・苦痛除去」、「死に対する不安の解除」、「友人や家族とのコミュニケーション」、「尊厳をもった扱い」の4つが挙げられ、コミュニケーション教育が必要なことも分かった。
臨床的観点からの成果
主に、インフォームドコンセントの在り方について重要な知見が得られた。具体的には、医師の説明の仕方・内容により、高齢者の自己決定は容易に変容し得ることが分かった。イラストなどを用いた標準的で分かりやすい説明方法の研究の必要性が示唆されたため、リビングウィルに関する啓発パンフレットを作成した。現在その効果の検証を行っている
段階である。
ガイドライン等の開発
1)医療者向け高齢者終末期ケア教育のガイドラインを作成した。
2)介護老人保健施設向けの終末期ケアガイドラインを作成し、運用している。
3)介護老人保健施設からの在宅復帰を支援するガイドラインを作成した。
4)経管栄養導入に関するインフォームドコンセントを円滑にする啓発パンフレットを作製した。

その他行政的観点からの成果
本研究の成果を基に高齢者の終末期ケアの提供者を対象にした教育ワークショップのプログラムを試作し、試験的運用を行う予定である。これにより、高齢者の終末期ケア教育の標準化とケアプロバイダーの質の向上が期待される。また、このワークショップにより、関係者同士の交流の促進が期待される。

その他のインパクト
高齢者の終末期ケアの教育に関する全国初の本格的ガイドラインを提示できたことで、専門職間の教育交流の促進が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
60件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
特開 2006-181119号 H18.7.13
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
How elderly people die of nonmalignant pulmonary disease at home.
Japan Medical Association Journal , 49 (3) , 106-111  (2006)
原著論文2
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
Symptoms and care of elderly dying at home with lung, gastric, colon, and liver cancer
Japan Medical Association Journal , 49 (4) , 140-145  (2006)
原著論文3
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
Symptom experience and pattern of end-of-life home care for elderly patients with cancer vs. those without cancer in Japan.
Japan Medical Association Journal , 49 (7) , 243-250  (2006)
原著論文4
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
Gender differences in symptom experience at end-of-life among elderly patients dying at home with advanced cancer in Japan.
Japan Medical Association Journal , 49 (11) , 351-357  (2006)
原著論文5
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
End-of-life experience of demented elderly patients at home: Findings from DEATH project.
Psychogeriatrics , 6 , 60-67  (2006)
原著論文6
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
Age-related differences in care receipt and symptom experience of elderly cancer patients dying at home: Lessons from the DEATH project.
Geriatrics and Gerontology International , 7 , 34-40  (2007)
原著論文7
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
Director perceptions of end-of-life care at geriatric health services facilities in Japan.
Geriatrics and Gerontology International , 7 , 184-188  (2007)
原著論文8
Hirakawa Y, Masuda Y, Kuzuya M, et al.
Non-medical palliative care and education to improve end-of-life care at geriatric health services facilities: a nationwide questionnaire survey of chief nurses.
Geriatrics and Gerontology International , 7 , 266-270  (2007)
原著論文9
Enoki H, Hirakawa Y, Masuda Y, et al.
Association between feeding via percutaneous endoscopic gastrostomy and low level of caregiver burden.
J Am Geriatr Soc , 55 , 1484-1486  (2007)
原著論文10
Kuzuya M, Izawa S, Enoki H, et al.
Is serum albumin a good marker for malnutrition in the physically impaired elderly?
Clin Nutr. , 26 , 84-90  (2007)
原著論文11
Hirakawa Y, Kuzuya M, Masuda Y, et al.
Influence of Diabetes Mellitus on Caregiver Burden in Home Care: A Report based on the Nagoya Longitudinal Study of the Frail Elderly (NLS-FE)
Geriatrics and Gerontology International , 8 , 41-47  (2008)
原著論文12
平川仁尚、益田雄一郎、葛谷雅文、他. 
高齢者の在宅終末期ケアに関する前向き研究.
ホスピスケアと在宅ケア , 13 (3) , 220-224  (2005)
原著論文13
平川仁尚、益田雄一郎、葛谷雅文 他
高齢重度認知症患者および高齢進行癌患者の在宅終末期ケアに関する研究?「高齢者の在宅終末期ケアに関する前向き研究」から
日本老年医学会雑誌 , 43 (3) , 355-360  (2006)
原著論文14
平川仁尚、益田雄一郎、葛谷雅文、他
療養型病床群1施設における心肺蘇生および急性期病院への転院に関する家族の希望.
日本老年医学会雑誌 , 44 (4) , 497-502  (2007)
原著論文15
平川仁尚、葛谷雅文、加藤利章 他
介護老人保健施設1施設における看護・介護職員の終末期ケアに関する意識と死生観
ホスピスケアと在宅ケア , 16 (1) , 16-21  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-04
更新日
-