生活機能向上にむけた介護予防サービスのあり方及び技術に関する研究-「廃用症候群(生活不活発病)モデル」を中心に

文献情報

文献番号
200718010A
報告書区分
総括
研究課題名
生活機能向上にむけた介護予防サービスのあり方及び技術に関する研究-「廃用症候群(生活不活発病)モデル」を中心に
課題番号
H17-長寿-一般-043
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大川 弥生(国立長寿医療センター 研究所 生活機能賦活研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 謙策(日本社会事業大学)
  • 木村 隆次(日本介護支援専門員協会)
  • 半田 一登(九州労災病院)
  • 磯部 健一(名古屋大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
18,806,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 介護予防の方向性を示した老健局「高齢者リハビリテーション研究会」報告書の趣旨に立って、高齢者の「生活機能」(ICF:国際生活機能分類による)の維持・向上にむけた介護予防のプログラムと具体的技術を、介護予防の主なターゲットである「廃用症候群(生活不活発病)モデル」に重点をおいて明らかにする。
研究方法
○介護予防の水際作戦としての「生活機能相談窓口」の効果の立証(N=377)
○医療機関における生活機能調査:1)地域中核病院の全科入院患者の生活機能調査(入院前状況及び入院後経過を含む)による、生活機能低下のモデル分類(脳卒中モデルと廃用症候群モデル)及びその発生契機の3類型化と原因分析(N=210)。2)内科疾患での入院患者の退院時の日常生活自立度に影響する要因の分析(N=98)。
○水際作戦必要例の同時多発発生例としての災害時における、生活不活発病チェックリストのコンピュータプログラムソフトウエア開発
○廃用症候についての基礎的研究
結果と考察
○生活機能相談窓口での活動向上訓練中心のプログラムにより56.5%で活動自立度が1段階以上向上、同一自立度内での「質」的向上を含めると91.5%で向上。効果は短期間で出現し、向上者の92.2%で1回-3回で向上をみた。
○入院の原因となった疾患と直接関連した、あるいは入院自体を原因とした生活機能低下が高齢者では45.7%(廃用症候群モデル32.8%、脳卒中モデル12.9%)であった。入院前に既に低下を生じている人が23.3%にみられた。廃用症候群モデルの発生契機は入院に関連する場合も入院前とも「活動」の「量」的低下者が多かった。また脳卒中モデルの発生以前に、すでに廃用症候群モデルによる生活機能低下を生じている場合が31.8%であった。
○災害時に被災直後から生活不活病発生者及びハイリスク者を発見し、また、それを集団としても把握し、集団や地域全体の生活不活病予防に向けてのプログラム・システム作成に役立たせるためのコンピュータープログラムソフト(入力形式:キーボード入力とタッチパネル上での直接入力が可能)を開発した。
結論
○水際作戦として生活機能相談窓口での活動向上訓練中心のプログラムが非常に有効である。
○これまで重要性が強調されてこなかったが、今後一般医療の中で介護予防の観点からの、生活機能低下予防、特に廃用症候群をターゲットと位置づけた積極的な関与が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200718010B
報告書区分
総合
研究課題名
生活機能向上にむけた介護予防サービスのあり方及び技術に関する研究-「廃用症候群(生活不活発病)モデル」を中心に
課題番号
H17-長寿-一般-043
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
大川 弥生(国立長寿医療センター 研究所 生活機能賦活研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 謙策(社会事業大学)
  • 木村 隆次(日本介護支援専門員協会)
  • 半田 一登(九州労災病院)
  • 磯部 健一(名古屋大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 介護予防の方向性を示した老健局「高齢者リハビリテーション研究会」報告書の趣旨に立って、高齢者の「生活機能」(ICF:国際生活機能分類による)の維持・向上にむけた介護予防のプログラムと具体的技術の確立のために、介護予防の主なターゲットである「廃用症候群(生活不活発病)モデル」に重点をおき、「水際作戦」(生活機能低下の早期発見・早期対応)の具体的内容を明確にする。
研究方法
 全てICFに立って、生活機能のうち「活動」レベルを重視して実施した。
○介護予防の水際作戦としての「生活機能相談窓口」の効果の立証(N=377)
○一自治体の高齢者生活機能悉皆調査にもとづく介護予防サービスの類型化(N=2045)
○大都市近郊小都市における高齢者の生活機能調査(N=904)
○医療機関受診者の生活機能調査:5病院外来患者(65歳以上N=1,809)その他入院患者、外来リハ受診患者等での検討。
○医療職・栄養士・地域住民等での生活機能と生活不活発病についての認識調査。
○災害時の介護予防として「平成18年豪雪」による生活機能低下の実態把握(N=3,746)、等。
結果と考察
1.介護予防の基本的な考え方:生活機能、特に「活動」の向上に重点をおいたプログラムが効果的である。
2.対象者の同定法:1)各「活動」項目において「自立」の中でも、「普遍的自立」(ICF評価点0)と「環境限定型自立」(1)とに区別して調査する必要がある。また「環境限定型自立」を介護予防の対象として位置づける。2)「生活機能低下のモデル分類」及び「発生契機の3類型」の分類に基づく対応や、具体的ツールとして「生活不活発病チェックリスト」は有用である。
3.介護予防のシステム:1)一般医療の介護予防(特に生活不活発病)への積極的関与が必要。2)効果的な介護予防に不可欠な「生活機能」の理解は、専門家、一般高齢者ともにいまだ過渡期であり、今後の普及啓発が緊急の課題。3)災害時は水際作戦必要例の同時多発例として対応すべき。その際生活不活発病発生例及びハイリスク者を発見するために用いるコンピュータソフトウェアを開発した。
結論
 現行の介護予防は生活機能の中でも特定の「心身機能」への対応メニュー中心であり、今後の、「活動」向上を明確なターゲットとし、生活機能低下の重要な原因としての生活不活発病予防に向けた介護予防のシステム・プログラム設計上重要な示唆をえた。

公開日・更新日

公開日
2008-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 介護予防のあり方を、生活機能(WHO:国際生活機能分類)維持・向上にむけて「廃用症候群モデル」に重点をおいて明らかにした。
特に1)「活動」の向上に重点をおいたプログラムが効果的(生活機能相談窓口の効果立証)、2)対象者の同定法として「普遍的自立」(ICF評価点0)と「環境限定型自立」(同:1)とを区別することが重要、3)一般医療機関受診者に廃用症候群モデルの生活機能低下者が多い、4)地震とは異なる災害である豪雪でも廃用症候群が生じ、災害を介護予防必要例同時多発発生時と位置づける必要がある。
臨床的観点からの成果
 今後の「活動」向上と生活不活発病予防・改善を明確なターゲットとした、介護予防のシステム・プログラム設計上重要な示唆をえた。
 特に、1)介護予防の対象者の同定法として「環境限定型自立」を介護予防の対象として位置づける、2)具体的ツールとして「生活不活発病チェックリスト」が有用、3)一般医療の生活不活発病予防・改善への積極的関与が必要、4)「生活機能」「生活不活発病」の理解は、専門家、一般高齢者ともにいまだ過渡期であり、今後の普及啓発が緊急の課題であることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
・災害時に被災直後から生活不活病発生者及びハイリスク者を発見し、それを集団としても把握し、集団や地域全体の生活不活病予防に向けてのプログラム、システム作成にも役立たせるためのコンピュータープログラムソフトを開発した。
・生活機能調査結果及び「普遍的自立」と「限定的自立」の区別の必要性の立証は、生活機能の3つのレベルのうちの「活動」・「参加」について厚労省社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会が評価点(暫定案)を決定する際の基礎資料(18年12月13日等)となった。
その他行政的観点からの成果
・災害時の高齢者における生活不活発病への対応については能登半島地震(19年3月)では発生翌日、新潟中越沖地震(19年7月)では発生当日から厚労省よりその予防にむけての通知(及び資料)が出された際の基礎資料となった。また、新潟県中越沖地震及び富山県高波被害(20年2月)時の厚労省等からの避難所及び被災地域住民に配布された廃用症候群の発症に関する啓発チラシ・ポスター等の基礎資料となった。
・介護予防における「リハ・マネジメント」の「基本的考え方や様式例」の基礎資料となった。
その他のインパクト
 生活不活発病、及びその観点からの介護予防のあり方、また災害時の介護予防については各種新聞、テレビ等のメディアでとりあげられた。
・能登半島地震の介入研究等についてのNHKテレビ等での報道内容は参議院災害対策特別委員会(19年4月4日)でも取り上げられた。
・長寿科学総合研究研究成果等普及啓発事業発表会として一般向けに20年3月27日「災害時の生活機能低下予防;特に生活不活発病をターゲットにして」を開催し、NHKニュース等のメディアで、災害時のみでなく介護予防全般の典型例として取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
9件
その他成果(普及・啓発活動)
34件
・長寿科学総合研究研究成果等普及啓発事業発表会:「災害時の生活機能低下予防;特に生活不活発病をターゲットにして」(平成20年3月27日)・NHK(クローズアップ現代、ニュース等)・朝日新聞、読売新聞等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-