生活習慣・背景要因・遺伝要因による総合的骨粗鬆症リスク診断システムの開発

文献情報

文献番号
200718008A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣・背景要因・遺伝要因による総合的骨粗鬆症リスク診断システムの開発
課題番号
H17-長寿-一般-039
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 富士子(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 下方 浩史(国立長寿医療センター研究所疫学研究部 )
  • 山田 芳司(三重大学生命科学研究支援センター)
  • 新野 直明(桜美林大学大学院国際学研究科)
  • 大藏 倫博(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
21,502,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は国立長寿医療センターで平成9年から2年ごとに行われている「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」での約2300人の詳細な骨粗鬆症関連要因の6年間のデータベースと約180種の候補関連遺伝子多型解析結果を元に、骨密度および骨密度の経時的変化と遺伝子多型や運動・栄養等の生活習慣、体型、閉経、背景要因等との関連から総合的骨粗鬆症リスク診断システムを開発することを目的とした。本年度は特に、男性および閉経女性の右大腿骨頸部骨密度の将来予測、ならびに生活習慣改善効果の推定式の作成を試みた。
研究方法
対象はNILS-LSAの第1次調査参加者2.267人の中で第1次調査から第4次調査までの間に少なくとも一度は連続する2回の調査に参加した者から、骨粗鬆症の既往のある者、骨密度に影響を与える薬剤を服用している者を除いた男性883人(59.6歳±10.6歳)と閉経女性507人(62.5±8.2歳)である。NILS-LSAで測定されている数百種の生活習慣・背景要因、177種の遺伝子多型と右大腿骨頸部骨密度の年間変化量との関係を年齢と女性では閉経年齢を調整して網羅的に検討した。
結果と考察
閉経女性大腿骨頸部骨密度変化量と関連する生活習慣・背景要因として、膝伸展筋力、脚進展パワー、糖尿病の既往等が抽出された。また6種の遺伝子多型が関連を示した。男性の大腿骨頸部骨密度変化量とは1日平均歩数、握力、喫煙、コーヒーの多飲等と5種の遺伝子多型とが関連していた。これらの要因や生活習慣・背景要因と遺伝子多型との交互作用から、大腿骨頸部骨密度の将来予測ならびに生活習慣改善効果の推定式を作成した。閉経女性では6種の遺伝子多型と糖尿病、膝伸展筋力、年齢の主効果および糖尿病や膝伸展筋力と遺伝子多型との交互作用からなる推定式が得られた。この推定式から、たとえば膝伸展筋力の影響の強い遺伝子多型群を有する場合、膝伸展筋力が20kgであれば、50歳から80歳までに約250mg/cm2骨密度が低下するが、筋力を30kgまで改善できれば、骨密度の低下は約100mg/cm2で済むと推定された。男性では解析モデルが不安定となり、統合的な式の作成は断念した。
結論
地域在住中高年者の6年間の縦断調査結果を用いて、生活習慣・背景要因・遺伝要因による大腿骨頸部骨密度の将来予測、ならびに生活習慣改善効果の推定アルゴリズムが開発された。

公開日・更新日

公開日
2008-03-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200718008B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣・背景要因・遺伝要因による総合的骨粗鬆症リスク診断システムの開発
課題番号
H17-長寿-一般-039
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 富士子(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 下方 浩史(国立長寿医療センター研究所疫学研究部 )
  • 山田 芳司(三重大学生命科学研究支援センター)
  • 新野 直明(桜美林大学大学院国際学研究科)
  • 大藏 倫博(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は国立長寿医療センターで平成9年から2年ごとに行われている「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」での約2300人の詳細な骨粗鬆症関連要因の6年間のデータベースと約180種の候補関連遺伝子多型解析結果を元に、骨密度および骨密度の経時的変化と遺伝子多型や運動・栄養等の生活習慣、体型、閉経、背景要因等との関連から総合的骨粗鬆症リスク診断システムを開発することを目的とした。
研究方法
対象はNILS-LSAの第1次調査参加者2.267人の中で遺伝子多型解析用血液採取が可能であった2,259人である。NILSーLSAで本研究終了までに測定された196遺伝子多型のうち、解析可能な分布を示した177遺伝子多型と第1次調査から第4次調査までの間に継続して測定された数百項目に及ぶ生活習慣・背景要因関連データを用い、(1)骨密度感受性候補遺伝子多型関連解析、(2)骨密度・骨粗鬆症に関連する生活習慣・背景要因の網羅的解析、(3)骨密度・骨粗鬆症に最も鋭敏な遺伝子多型群の抽出とその影響の定量、(4)遺伝子多型と生活習慣・背景要因の交互作用が骨密度・骨粗鬆症に与える影響を検討し、これらを統合して、「骨粗鬆症有病率推定式」と「骨密度変化率の将来予測式ならびに生活習慣改善による骨密度低下予防効果の推定式」を作成した。
結果と考察
(1)FOXC2多型等10遺伝子多型について骨密度との有意な関連を明らかにした。(2)閉経女性大腿骨頸部骨粗鬆症有病率に最も鋭敏な遺伝子多型の組み合わせを求めたところ、IL-6等6種の遺伝子多型が抽出された。またこの有病率に関連する生活習慣・背景要因は普通歩行でのピッチや握力、BMI、閉経年齢、初潮年齢等であった。(3)遺伝子多型と後天的要因との交互作用も加えた統合解析の結果、閉経女性大腿骨頸部骨粗鬆症有病率は6遺伝子多型と握力、カルシウム摂取、閉経年齢、BMIとこれらの背景要因に特異的な交互作用を示す遺伝子多型とで構成された。(4)同様に閉経女性の大腿骨頸部骨密度の年間変化率を用いて、骨密度変化率の将来予測式と生活習慣改善による骨密度低下予防効果の推定式」も作成した。
結論
生活習慣・背景要因との交互作用を示す遺伝子多型を多く有する個人では運動や栄養の介入によって、将来の骨密度変化が大きく改善する可能性を定量的に示すことができた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-12-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
単独のコホートでの詳細な縦断データを用いて、骨密度・骨粗鬆症にかかわる遺伝的要因、生活習慣、背景要因とこれらの交互作用を網羅的に解析し、閉経女性について、大腿骨骨粗鬆症有病リスク推定式と骨密度低下量の将来予測式、ならびに生活習慣改善による骨密度低下予防量推定式を作成できた。
臨床的観点からの成果
骨粗鬆症ハイリスク群を骨密度低下前に検出し、生活習慣の改善により骨密度低下を予防する一次予防の方策としての応用が可能である。
ガイドライン等の開発
骨密度感受性遺伝子多型と代表的な生活習慣・背景要因に関する個人データから、骨粗鬆症有病率や将来の骨密度低下カーブを予測できるアルゴリズムを開発した。
その他行政的観点からの成果
骨粗鬆症ハイリスク群を健診レベルでの検査で抽出し、オーダーメイドの生活習慣改善による骨粗鬆症第一次予防法開発の基礎的資料となる。
その他のインパクト
骨密度感受性遺伝子多型については6本の英文論文にまとめて公表した。「生活習慣・背景要因・遺伝要因による総合的骨粗鬆症リスク診断システムの開発」の概要については近々新聞で報道の予定である。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
92件
学会発表(国際学会等)
28件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamada Y, Ando F, Niino N et al
Association of polymorphisms of the androgen receptor and klotho genes with bone mineral density in Japanese women
J Mol Med , 83 (1) , 50-57  (2005)
原著論文2
Yamada Y, Ando F, Niino N et al
Association of a -1997G→T polymer- phism of the collagen Iα1 gene with bone mineral density in postmenopausal Japanese women
Hum Biol , 77 , 27-36  (2005)
原著論文3
Yamada Y, Ando F, Shimokata H
Association of polymorphisms in CYP17、 MTP、 and VLDLR with bone mineral density in community- dwelling Japanese women and men
Genomics , 86 , 76-85  (2005)
原著論文4
Yamada Y, Ando F, Shimokata H
Association of polymorphisms in forkhead box C2 and perilipin genes with bone mineral density in community-dwelling Japanese individuals
Int J Mol Med , 18 (1) , 119-127  (2006)
原著論文5
Kitamura I, Ando F, Koda M et al
Effects of the interaction between lean tissue mass and estrogen receptor α gene polymorphism on bone mineral density in middle-aged and elderly Japanese
Bone , 40 , 1623-1629  (2007)
原著論文6
Yamada Y, Ando F, Shimokata H
Association of candidate gene polymor -phisms with bone mineral density in community-dwelling Japanese women and men
Int J Mol Med , 19 , 791-801  (2007)
原著論文7
Yamada Y, Ando F, Shimokata H
Association of genetic variants of MAOA and SH2B1 with bone mineral density in community-dwelling Japanese women
Mol Med Rep , 1 , 269-274  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-