要介護認定における要支援及び要介護1の要介護度の推移の状況とその要因からみた介護予防プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200718006A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護認定における要支援及び要介護1の要介護度の推移の状況とその要因からみた介護予防プログラムの開発に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-024
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
和泉 京子(大阪府立大学看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿曽 洋子(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 津村 智恵子(甲南女子大学看護リハビリテーション学部)
  • 上野 昌江(大阪府立大学看護学部)
  • 山本 美輪(明治鍼灸大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年度より軽度認定者への新予防給付が創設された。創設にあたり、介護予防の効果のエビデンスが示されたが、健康な高齢者や要介護認定者も含めたものであり、軽度認定者に特定したものではないため真に軽度認定者の介護予防につながるかどうかは疑問である。軽度認定者の介護予防には、独自の重度化に関連する要因を明らかにすることが必要であると考えた。
本研究の目的は、要介護認定における要支援認定者及び要介護1認定者の要介護度の推移の状況とその要因を明らかにし、介護予防プログラムの開発の示唆を得ることである。
研究方法
1)研究デザイン:前向きコホート研究、
1.調査1:要支援者および要介護1者に対する質問紙調査
対象)大阪府下において承諾を得た22市町村の要支援者5,130人と要介護1認定者要介護1者5,734人の計10,864人である。
方法)郵送法にて平成16年度および平成17年度に質問詩調査を行った。
2.調査2:市町村に対する要支援者および要介護1者の2年後の要介護度の調査
方法)調査1の平成16年度調査対象者の2年後の要介護度の調査を行った。
3.調査1と調査2の統合
方法)ID番号をもとに、調査1と調査2のデータの同定を行った。
分析) 2年後の要介護度の推移を従属変数とし、平成16年度調査時の各項目について単変量の解析より、2年後の要介護度の推移と有意であった項目を独立変数とし、ステップワイズの変数増減法にて多重ロジスティック回帰分析を行った。
結果と考察
2年後の要介護度の悪化を抑制する因子としては、要支援者及び要介護1者ともに、社会的項目の老研式活動能力指標得点の1点あがる毎(要支援者オッズ比0.89、要介護1者オッズ比0.81)のみが抽出された。2年後の要介護度の悪化を促進する因子としては、要支援者及び要介護1者ともに、身体的項目の排泄の失敗あり(要支援者オッズ比1.37, 、要介護1者オッズ比1.50)が抽出された。また、要支援者では、社会的項目の外出頻度の1週間に1回未満(オッズ比1.54)が、要介護1者では、基本属性の一人暮らし以外(オッズ比1.63)が要介護度の悪化を促進する因子として有意に関連していた。
結論
要支援者及び要介護1者ともに、排泄の失敗の予防・支援の必要性が示唆され、加えて要支援者(現行の要支援1者)に対しては、閉じこもり予防・支援、要介護1者(現行の要支援2者及び要介護1者)へは、家族構成をふまえた支援が望ましいと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-11-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200718006B
報告書区分
総合
研究課題名
要介護認定における要支援及び要介護1の要介護度の推移の状況とその要因からみた介護予防プログラムの開発に関する研究
課題番号
H17-長寿-一般-024
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
和泉 京子(大阪府立大学看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 阿曽 洋子(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 津村 智恵子(甲南女子大学看護リハビリテーション学部)
  • 上野 昌江(大阪府立大学看護学部)
  • 山本 美輪(明治鍼灸大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、要介護認定における要支援認定者及び要介護1認定者の要介護度の推移の状況とその要因を明らかにし、介護予防プログラムの開発の示唆を得ることである。
研究方法
1)研究デザイン:前向きコホート研究、
1.調査1:要支援者および要介護1者に対する質問紙調査
対象)大阪府下において承諾を得た22市町村の要支援者5,130人と要介護1認定者要介護1者5,734人の計10,864人である。
方法)郵送法にて平成16年度および平成17年度に質問紙調査を行った。
2.調査2:市町村に対する要支援者および要介護1者の1、2年後の要介護度の調査
方法)調査1の平成16年度調査対象者の2年後の要介護度の調査を行った。
3.調査1と調査2の統合
方法)ID番号をもとに、調査1と調査2のデータの同定を行った。
分析)1、2年後の要介護度の推移を従属変数とし、平成16年度調査時の各項目について単変量の解析より、1、2年後の要介護度の推移と有意であった項目を独立変数とし、ステップワイズの変数増減法にて多重ロジスティック回帰分析を行った。
結果と考察
1年後の要介護度の推移に関連する因子として、要支援者および要介護1者ともに、社会的項目の老研式活動能力指標得点の1点あがる毎のみが抽出された。要支援者では、社会的項目の外出頻度の1週間に1回未満、身体的項目の過去1年間の転倒経験あり、心理的項目のうつ傾向が、要介護1者では、身体的項目の歩行の介助、排泄の失敗ありが正の因子として有意に関連していた。
2年後は、要支援者及び要介護1者ともに、社会的項目の老研式活動能力指標得点の1点あがる毎のみが抽出された。2年後の要介護度の悪化を促進する因子としては、要支援者及び要介護1者ともに、身体的項目の排泄の失敗ありが抽出された。また、要支援者では、社会的項目の外出頻度の1週間に1回未満が、要介護1者では、基本属性の一人暮らし以外が要介護度の悪化を促進する因子として有意に関連していた。
結論
要支援者と要介護1者では、1年後の要介護度の推移の状況もその要因も異なることが明らかになった。介護予防対策においては、軽度認定者をひとまとめに支援するのではなく、経年的に分析した各々の要介護度の重度化の要因に応じて検討する必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2008-11-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
介護予防のターゲットである軽度認定者の要介護度の重度化に関連する要因を1万人規模の縦断調査により身体・心理・社会的要因を網羅して多変量解析にて分析しており、介護予防が必要な対象を明確化でき介護予防プログラムの開発の示唆を得ることができた。1年後、2年後の要介護度の推移についての分析を行ったが、平成21年度以降も3年後、5年後と継続して調査する予定であり長期的にみた要介護度の重度化に関連する要因を明らかにできる。
臨床的観点からの成果
要支援者および要介護1者別に要介護度の重度化に関連する要因を明らかにした。大阪府の半数の22市町村から協力が得られ、分析対象者は、調査時点における要支援の17.1%、要介護1の5.7%を占めていた。人口規模別にみても大阪府の政令指定都市、中核市である4市を除いた市町村を代表する集団である。また、都市部と農村部を網羅しており他府県にも活用できると考えられ、本研究結果は、全国で200万人を超える軽度認定者に介護保険法に基づき実施されている介護予防事業検討の基礎資料として普遍的に活用できると考える。
ガイドライン等の開発
ガイドラインの開発には至っていないが、要支援者および要介護1者別に要介護度の重度化に関連する要因を明らかにして論文発表、報告書での公表により、その結果をふまえた介護予防事業の展開が期待されると考える。
その他行政的観点からの成果
22の協力市町村と大阪府へ各市町村版及び全体版の報告書を配布し、各市町村での介護予防対策検討の基礎資料となった。また、平成21年度作成の第4期介護保険事業計画への反映が予定されている。
要介護度の重度化の要因をふまえた介護予防事業により、軽度認定者の健康寿命を延ばし、生活の質の低下の予防につながる点、早期に適切な費用を投入し介護予防を行うことは経済的にも効率的な点、全国の軽度認定者に普遍的に適用できる点、長寿先進国として諸外国に介護予防の示唆を与えることができる点より意義があると考えられる。
その他のインパクト
平成18年度の第3回高齢者虐待防止学会大阪大会のシンポジウム「セルフネグレクトを予防するには」において「大阪府下の要支援・要介護1高齢者7,600件の実態調査からみえてきたもの」の発表を行った。また、同じく平成18年度の大阪府立大学国際シンポジウム「文化的差異への鋭敏性をいかに育むか」において「日本における介護保険「軽度認定」高齢者のうつに関連する身体・心理・社会的要因―12ヶ月の追跡研究から―」を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
23件
22の調査協力市町村と大阪府へ各市町村版及び全体版の報告書を配布し、各市町村での介護予防対策検討の基礎資料となった。また、平成21年度作成の第4期介護保険事業計画への反映が予定されている。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成19年度のA市民大学において一般市民を対象に「いつまでも生き活きと!~介護予防のお話~」として本研究結果をふまえた介護予防についての講演を行った。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
和泉京子、阿曽洋子、山本美輪他
「軽度要介護認定」高齢者のうつに関連する要因
老年社会科学 , 28 (4) , 476-486  (2007)
原著論文2
和泉京子、阿曽洋子、山本美輪
「軽度要介護認定」高齢者の要介護度の推移の状況とその要因
老年社会科学 , 29 (4) , 471-484  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-