地域保健医療における優先度評価法の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
199700321A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健医療における優先度評価法の標準化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
鎌江 伊三夫(神戸大学)
研究分担者(所属機関)
  • 住野公昭(神戸大学医学部)
  • 内山三郎(神戸大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 健康政策調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健や医療において、健康改善あるいは延命介入のための政策立案を行う場合、対象となるいくつかのプログラム間の優先度をいかに評価するべきかが重要な問題となる。そこで、本研究は、このような医療プログラムの優先度評価の標準的方法を開発し、さらに事例分析を行うことを目的とする。このような研究は、医療財源の有限性と医療質的向上への希求が増加する社会情勢において今日的課題として必須のものである。当該申請研究を行うことにより、医療プログラムの政策立案の合理的根拠を明確にする標準的方法論を具体化し、広く医療政策の効率的実現をはかる基礎とすることが可能となる。
研究方法
1)ハーバード大学リスク分析センターによる約500に及ぶ延命介入(lifesaving interventions)の費用効果リストをデータベース化し、与えられた予算の範囲で最大限の効果を得る医療プログラムの優先順位を決定する支援システムを開発し、標準的な優先度決定のための方法論として定式化あるいはプロトコール化を行う。2)兵庫県では災害対策に関心が高いため兵庫県が開発中の災害対応情報システムの費用効果性を分析し、その優先度についても検討を加える。
結果と考察
結果=標準的な優先度決定のための方法論として、3つのアルゴリズムを定式化した。第1に、予算配分の対象となるいくつかの医療プログラムが互いに排反でない場合の優先度決定法、第2に互いに排反である場合、そして第3に排反でないプログラムと排反であるプログラムが混在する場合の優先度決定法である。これらは、表計算ソフトウェアであるエクセル上のマクロで機能するように開発され、データベース化された米国の約500の延命介入プログラムの費用効果リストとの比較が可能となっている。この医療プログラム優先度決定システムを用い、兵庫県で開発されている災害対応情報システムの費用効果性を分析し、その結果、災害対応情報システムへの投資は米国の平均的医学プログラムや他の延命介入プログラムと比べて比較的優れた費用効果性があるとの結論を得た。
考察=本研究により開発された優先度決定システムは、医療プログラムの社会経済的評価の手法を導入したもので、従来にない理論化とプロトコール化を実現した点で優れたものであると考えられる。そこでは、いかなる医療プログラムであってもその費用と、介入効果を1生存年当りの費用で算定した値を入力すれば、他の医療プログラムとの優先度の検討が行えるようになっている。しかし、現実の分析を直ちに行うには、介入効果の算定の問題が残されている。すなわち、例えば兵庫県の医療プログラムの場合、年度の予算教書により費用データは入手可能であるが、現在の行政では介入効果を1生存年当りの費用で算定したデータを入手することは事実上実現されていない。これは今後の問題に残されている。
結論
本研究では、地域保健医療における優先度評価法の標準化を費用効果分析の立場から定式化し、システム構築を行った。また、兵庫県の災害対応情報システムが他の延命介入プログラムに比較して中程度の費用効果性を有することを示した。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)