中高年健康増進のためのITによる地域連携型運動処方システムの構築

文献情報

文献番号
200718003A
報告書区分
総括
研究課題名
中高年健康増進のためのITによる地域連携型運動処方システムの構築
課題番号
H17-長寿-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
能勢 博(信州大学大学院・スポーツ医科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 京一(信州大学大学院・加齢生物学分野)
  • 三木 哲郎(愛媛大学大学院・加齢制御内科学)
  • 福嶋 義光(信州大学大学院・社会予防医学)
  • 山崎 敏明(キッセイコムテック株式会社・メディカルシステム事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
松本市,信州大学,地元企業が,中高年の健康スポーツ教室,「松本市熟年体育大学」の過去10年間の実績を踏まえ,ITシステムを用いて個別運動処方を国の内外に展開し,運動処方反応性遺伝子を視野に入れた,運動処方効果に関する優れたデータベースを構築しつつ,生活習慣病予防,介護予防,医療費削減のための運動処方を確立すること.
研究方法
熟年体育大学の特徴は,1)携帯型運動量連続測定装置(熟大メイト)(特許3571272)を開発し,2)「インターバル速歩」によって,マシントレーニングに匹敵する効果があることを立証し,3)長野県内外10の市町村の予防医療サービス拠点と熟年体育大学リサーチセンターにITネットワークを構築し,企業・大学の保健管理センター,病院の健診センター,介護老人ホームを拠点とした遠隔型個別運動処方を可能にしたことである.
結果と考察
平成17-18年度には,熟大メイトを量産するとともに,ITインフラ(キッセイコムテック社製)を開発,製品化した.さらに,長野県内外6市町村,3企業,4病院,2老人ホーム,3大学の1,400名を対象に6-18ヶ月間の遠隔型個別運動処方を実施し,生活習慣病予防,介護予防指標の顕著な改善の結果を得,年間4.6万円の医療費の削減効果を得た.さらに,このうち469名を対象とし,生活習慣病,介護予防関連の86個の遺伝子について,合計132個のSNPsの遺伝子型判定を愛媛大学の協力を得て実施し,トレーニング効果に関する各種臨床データと対応させることで,運動処方反応性遺伝子の探索をおこない,循環・代謝調節に関与するいくつかの候補遺伝子を同定した.平成19年度には,さらに,事業対象を拡大しのべ3,984名規模にまで参加者を増加し,運動処方効果の個人差を解明するための遺伝子探索を1,014名にまで拡大し,運動処方の国際標準化に向けMayo ClinicとYale大学との国際共同研究を成功させ,傾斜地でも使用可能な新しい「熟大メイト」を開発し,インターバル速歩トレーニングと栄養補助食品の併用効果の有効性を明らかにした.
結論
以上,介護予防,生活習慣病予防のための,世界標準化に向けた汎用性の高い個別運動処方システムの開発に成功した.

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200718003B
報告書区分
総合
研究課題名
中高年健康増進のためのITによる地域連携型運動処方システムの構築
課題番号
H17-長寿-一般-016
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
能勢 博(信州大学大学院・スポーツ医科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 京一(信州大学大学院・加齢生物学分野)
  • 三木 哲郎(愛媛大学大学院・加齢制御内科学)
  • 福嶋 義光(信州大学大学院・社会予防医学)
  • 山崎 敏明(キッセイコムテック株式会社・メディカルシステム事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
松本市,信州大学,地元企業による中高年の健康スポーツ教室,「松本市熟年体育大学」の過去11年間の実績を踏まえ,ITシステムを用いて個別運動処方を国の内外に展開し,運動処方反応性遺伝子を視野に入れた,運動処方効果に関する優れたデータベースを構築しつつ,生活習慣病予防,介護予防,医療費削減のための運動処方を確立すること.
研究方法
熟年体育大学の特徴は,1)携帯型カロリー計(熟大メイト)(特許3571272)を開発し,2)「インターバル速歩」によって,マシントレーニングに匹敵する効果があることを立証し,3)e-Health Promotion Systemによって遠隔型個別運動処方を可能にしたことである.同システムを利用し,H17-19年度に,総数3,984名の参加者を対象として,6ヶ月間のインターバル速歩トレーニングが生活習慣病予防,介護予防に及ぼす効果を検証した.参加者の内訳は,自治体(2,965名),企業(219名),医療機関(405名),大学(212名),老人ホーム(105名),個人会員(78名),海外研究機関(60名)と,対象は18歳の若年者から85歳の後期高齢者まで全世代とした.効果判定項目として,形態,血圧,血液成分,体力などの身体面と抑うつ度などメンタル面についても調査した.解析は年齢,性別に加え,トレーニング前の各測定値によって上,中,下の3群にわけて解析した.
結果と考察
年齢,性別を問わず,トレーニング後には,形態,血圧,血液成分の生活習慣病予防指標は低値群において5-10%程度上昇し,高値群では逆に10-20%程度低下した.また,介護予防指標である体力は低値群で20%程度上昇した.さらに,それぞれの変化量は1週間当たりの速歩時間と比例した.また,自己うつ評価尺度については上位30%で,正常レベルにまで低下した.その結果,全体の医療費が20%削減された.さらに,この事業参加者において,運動処方反応性遺伝子の探索,同トレーニングと栄養補助食品の併用効果の検証,傾斜地用新「熟大メイト」の開発を行い,顕著な成果をあげた.さらに,同システムの世界標準化をめざして,米国Mayo Clinic,Yale大学との共同研究を行い,高い評価を得た.
結論
以上,介護予防,生活習慣病予防のための,世界標準化に向けた汎用性の高い個別運動処方システムの開発に成功した.

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200718003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来から,体力向上のためのトレーニングはマシンを用いた個別運動指導が理想的とされていたが,本研究で,携帯型カロリー計「熟大メイト」,「インターバル速歩トレーニング」,e-ヘルスプロモーションシステム によって,マシントレーニングに匹敵する効果が得られることが明らかとなった.その結果,マシンなしで数千―数万人を対象として,少人数の専門スタッフで,体力向上のための個別運動指導が可能となり,運動量とその効果の予測式の決定,運動反応性遺伝子探索,健康機器・食品の効果判定などの研究を可能にした.
臨床的観点からの成果
予防医療における運動処方は最後の切り札と注目されているにもかかわらず,どれくらい運動をすれば,どの程度の効果が期待できるか,といった「費用対効果」は明らかにされていない.本研究によって蓄積された3,000名のデータベースから,1日30分,週4日,5ヶ月間のインターバル速歩トレーニングを行うことで,各種生活習慣病予防・介護予防指標が20%改善し,医療費が半年で2,3000円(20%)削減されることが明らかとなった.
ガイドライン等の開発
運動所要量・運動指針の策定検討会(平成18年7月): 本研究の成果の一部が,「健康づくりのための運動指針2006-生活習慣病予防のために-(エクササイズガイド2006)」に採択された.具体的には,指針の中の「自分に合った運動でいい汗かこう,週合計60分!」の標語でわかるように,1) 体力という概念が指針に採択されたこと,2) 各個人の体力に合わせた個別運動処方の重要性が指針に採択されたこと,の2点をあげることができる.
その他行政的観点からの成果
平成20年4月1日から生活習慣病予防を目的とした特定保健指導が施行され,運動処方に対する期待は大きい.そのような状況の中,「健康づくりのための運動指針2006」は,文字どおり運動処方の理論的な拠り所とされている.この指針の中で,「まず,各人の体力を測定し,それに合わせた運動プログラムを実施することが望ましい」という記述が採択されたのは,本研究で得られた3,000名のデータベースから導き出された結果に基づくものと考えている.
その他のインパクト
「インターバル速歩トレーニング」によるe-ヘルスプロモーションシステムは,運動処方効果について3,000名規模のデータベースを構築した点で,NHKの「おはよう日本」をはじめ,全国的に報道された.地方局も含めれば報道回数は3年間で54件にのぼる.また,本研究は「体力向上のための運動処方をジムから開放した」点で,国際的にも高く評価され,Mayo Clinic,Yale大学との国際共同研究も実施し,高い評価を得た.また,2009年の国際生理学会で英国生理学会が本研究の将来像についてシンポを開催する.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
20件
運動生理関係の雑誌,遺伝・病理関係の雑誌,臨床研究関係の雑誌
その他論文(和文)
23件
著書・総説・解説文
その他論文(英文等)
1件
総説
学会発表(国内学会)
37件
日本体力医学会,日本生理学会,長寿科学振興財団研究報告会など
学会発表(国際学会等)
9件
Experimental Biology 2005,2006,2007など
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計9件
その他成果(特許の取得)
0件
特願2005-55217,特願2005-55221,特願2006-257706,特願2006-256566特願2007-60705,特願2007-191507,特願2007-60705
その他成果(施策への反映)
3件
1)健康づくりのための運動基準2006(運動所要量・運動指針の策定検討会)2)エクササイズガイド2006(運動所要量・運動指針の策定検討会)3)熱中症の発生防止に係る調査研究(中央労働災害防止協会)
その他成果(普及・啓発活動)
5件
長寿科学振興財団研究成果発表会(一般向け):3件,国際会議2件,(政府広報・雑誌:13件,新聞報道・テレビ報道:54件)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kamijo Y, Okumoto T, Nose H, et al.
Transient cutaneous vasodilation and hypotension after drinking in dehydrated and exercising men.
J. Physiol (Lond.) ,  (568) , 689-698  (2005)
原著論文2
Masuki S, Todo T, Nose H, et al.
Reduced beta-2 adrenoceptor responsiveness and enhanced baroreflex sensitivity in CRY-deficient mice lacking a biological clock.
J. Physiol (Lond.) ,  (566) , 213-224  (2005)
原著論文3
Mitono H, Endoh H, Nose H, et al.
Acute hypoosmolality attenuates the suppression of cutaneous vasodilation with increased exercise intensity.
J. Appl. Physiol ,  (99) , 902-908  (2005)
原著論文4
Ichinose T, K. Okazaki, H. Nose, et al.
Improved cutaneous vasodilation and blunted hyperosmotic suppression sensitivity after endurance training in humans.
J. Appl. Physiol. ,  (99) , 237-243  (2005)
原著論文5
H.Nose, M.Joyner, and K.Miki
Exercise, Nutrition, and Environmental Stress
Cooper Publishing Group, Traverse City, IN, USA ,  (4) , 1-313  (2005)
原著論文6
Kamijo Y, Nose H
Heat illness during working and preventive considerations from body fluid homeostasis.
Industrial Health ,  (44) , 345-358  (2006)
原著論文7
Nemoto K, Genno H, Nose H, et al.
Effects of high-intensity interval walking training on physical fitness and blood pressure in middle-aged and older people.
Mayo Clinic Proceedings ,  (82) , 803-811  (2007)
原著論文8
Masuki S, Eisenach JH, Joyner MJ et al.
Reduced stroke volume during exercise in postural tachycardia syndrome.
J Appl Physiol ,  (103) , 1128-1135  (2007)
原著論文9
Masuki S, Eisenach JH, Joyner MJ et al.
Arterial baroreflex control of heart rate during exercise in postural tachycardia syndrome.
J Appl Physiol ,  (103) , 1136-1142  (2007)
原著論文10
Masuki S, Eisenach JH, Joyner MJ et al.
Excessive heart rate response to orthostatic stress in postural tachycardia syndrome is not caused by anxiety.
J Appl Physiol ,  (102) , 896-903  (2007)
原著論文11
Yan J, Fujii K, Higuchi K et al.
Reduced Coenzyme Q10 supplementation decelerates senescence in SAMP1 mice.
Exp Gerontol ,  (41) , 130-140  (2006)
原著論文12
Mori M, Li G, Shumiya S et al.
Lanosterol synthase mutations cause cholesterol deficiency-associated cataracts in the Shumiya cataract rat.
J Clin Invest ,  (116) , 395-404  (2006)
原著論文13
Korenaga T, Yan J, Fu X et al.
Transmission of amyloidosis in offspring of mice with AApoAII amyloidosis.
Am J Pathol ,  (168) , 898-906  (2006)
原著論文14
Zhang H, Sawashita J, Higuchi K et al.
Transmissibility of mouse AApoAII amyloid fibrils: inactivation by physical and chemical methods.
FASEB J ,  (20) , 1012-1014  (2006)
原著論文15
Mori M, Higuchi K, Matsumoto K.
A third locus for eosinophilia on chromosome 1 of the MES rats.
Exp Anim ,  (55) , 497-500  (2006)
原著論文16
Nakanishi R, Shimizu M, Nakamura T et al.
Secreted Frizzled-Related Protein 4 as a negative regulator of bone formation and a candidate gene affecting peak bone mineral density in mice.
J Bone Mineral Res ,  (21) , 1713-1721  (2006)
原著論文17
Mori M, Sawashita J, Higuchi K
Functional polymorphisms of the Lss and Fdft1 genes in laboratory rats.
Exp Anim ,  (56) , 93-101  (2007)
原著論文18
Otsuki B, Matsumura T, Nakamura T et al.
Quantitative trait locus that determines the cross-sectional shape of the femur in SAMP6 and SAMP2 mice.
J Bone Miner Res ,  (22) , 675-685  (2007)
原著論文19
Ge F, Yao J, Fu X, Higuchi K et al.
Amyloidosis in transgenic mice expressing murine amyloidogenic apolipoprotein (Apoa2c).
Lab Invest ,  (87) , 633-643  (2007)
原著論文20
Yan J, Fu X, Higuchi K et al.
Cross-seeding and cross-competition in mouse apolipoprotein A-II amyloid fibrils (AApoAII) and protein A amyloid fibrils (AA).
Am J Pathol ,  (171) , 172-180  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-