文献情報
文献番号
200717010A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性心不全に対するPDE5阻害剤の効果を検証する無作為化比較試験の計画に関する研究
課題番号
H19-臨床試験-一般-005
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
戸高 浩司(国立大学法人 九州大学病院 循環器内科)
研究分担者(所属機関)
- 砂川 賢二(九州大学大学院 医学研究院 循環器内科学)
- 井手 友美(国立大学法人 九州大学病院 循環器内科)
- 岸本 淳司(九州大学 デジタルメディシン・イニシアティブ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床試験推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦では心移植適応症例の発生(推計年228ー670人)に比し同実施率が極めて低く(年0ー10人)左室補助装置が植込まれた最重症例でも平均735日の待機期間がある(米国では同50日)。適応がありながら亡くなる症例が年間109ー355人と推定され、より有効な薬物療法開発が急務である。PDE5阻害剤のシルデナフィルは肺動脈性肺高血圧症に対する適応が2006年に欧米で、平成20年に本邦で承認された。本薬は重症心不全においても血管内皮機能の改善等を認め有効と報告されている。安全性については勃起不全や肺高血圧症に対する豊富な使用経験がある。本研究の最終目標は無作為化比較試験によって本薬の重症心不全に対する有効性、安全性を確認することである。そのためのパイロット試験をH19年度に実施した。
研究方法
標準治療によっても十分な治療効果のない重症心不全患者に1)単回投与、2)反復投与、3)長期投与試験の順に行う。1)は右心カテ下に認容性の確認を主目的とする。2)は12週間投与の有効性を心肺運動負荷試験などによって確認する。3)は6ヶ月間の長期投与によって安全性と長期効果を確認する
結果と考察
技術的側面: 被験症例の左室駆出率25±8%(4例)。1) 50mg単回投与では収縮期血圧は86.8±5.9から一時間後の86.8±7.4 mmHgと変化を認めなかった。肺動脈楔入圧の上昇を含め特に有害事象は認められなかった。2)全例反復投与に移行した。一ヶ月後のpeak VO2(17±8→19±10 ml/min/kg)、血流依存性血管拡張能(3.6±2.2→7.7±1.7%)、BNP(876±849→532±387pg/ml)に改善を認めている。副作用は1例で服薬当初に頭痛を認めたのみである。本薬は心移植適応となるような最重症の心不全症例に安全に使用でき有効性も認められている。比較試験設計のためになお症例の上積みが必要であるがエンドポイントとしてpeak VO2やBNP等の客観的な数値指標を選定する予定である。
基盤的側面:専任のCRCを雇用し、臨床試験医とともに育成、無作為化試験を実施すべく本学高度先端医療センターと共同で基盤を整備している。
基盤的側面:専任のCRCを雇用し、臨床試験医とともに育成、無作為化試験を実施すべく本学高度先端医療センターと共同で基盤を整備している。
結論
パイロット試験によってH20年度以降の無作為化試験実施の素地が形成された。
本薬の重症心不全の適応は企業により国内開発される見込みがない。本邦の内情にあった医師主導の臨床研究を実施して心不全に対する有用性を確立し、最重症心不全症例において心移植が回避・延期できれば、心移植が通常の医療となっている欧米と異なり、本邦での社会的意義は非常に大きい。
本薬の重症心不全の適応は企業により国内開発される見込みがない。本邦の内情にあった医師主導の臨床研究を実施して心不全に対する有用性を確立し、最重症心不全症例において心移植が回避・延期できれば、心移植が通常の医療となっている欧米と異なり、本邦での社会的意義は非常に大きい。
公開日・更新日
公開日
2008-04-11
更新日
-