乳児重症ミオクロニーてんかんに対する新たな治療法確立のための研究

文献情報

文献番号
200717008A
報告書区分
総括
研究課題名
乳児重症ミオクロニーてんかんに対する新たな治療法確立のための研究
課題番号
H19-臨床試験-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学薬学部)
  • 大塚 頌子(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学)
  • 高橋 幸利(国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター臨床研究部)
  • 福島 克之(国立病院機構八雲病院)
  • 馬場 啓至(国立病院機構長崎医療センター)
  • 遠山 潤(国立病院機構西新潟中央病院臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床試験推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI, Dravet症候群)は、頻回の発作が極めて難治に経過し、発作重積が多く、精神運動発達の障害をきたす重篤な疾患である。近縁疾患を含めると、本邦で千人単位の患者の存在が想定される。既存の抗てんかん薬の効果は限られるが、EUで希少疾病薬として承認されているStiripentolは効果が高い。本研究は、本薬をすみやかに導入するために、日本における充分な準備態勢を整えることを目的とした

研究方法
1 乳児重症ミオクロニーてんかん患児の治療状況を把握し、新薬導入の必要性について調査する。
2 臨床研究の基盤整備、治験を想定した事務作業(治験薬概要書、治験実施計画書の作成)を行う。
3 Stiripentolのcompassionate useを、予想される治験プロトコールに沿って行う。
4 必要な検査法を確立する。
5 希少疾病未承認薬の治験の現状と課題に関する情報を集め、検討する。
6 Stiripentol臨床治験に関わったEUの医師およびフランスの製造会社と議論する。

結果と考察
 乳児重症ミオクロニーてんかん児112症例の治療状況を後方視的に把握した結果、既存抗てんかん薬15種により50%以上の発作減少が得られた症例は15%にすぎす、有効な新薬導入の必要性は明らかであった。
 臨床研究の基盤整備を行い、臨床試験実施計画書を作成してそれに沿ったcompassionate useを行ったところ、25症例のうち16例(64%)で発作が50%以上減少し、さらにけいれん重積の減少や発作の持続が短縮した症例がみられた。食欲不振などの有害事象がみられたが、併用薬の調整により回避可能であった。
 血中濃度測定法、CYP遺伝子多型の検査法を確立した。
 Stiripentol臨床治験に関わったEUの医師(Dr. C. Chiron)および製造会社と議論した結果、早期に本邦への導入の探ることになった。
結論
 乳児重症ミオクロニーてんかんは重篤な疾患であり、発作軽減のためのあらゆる試みが行われるべきであるが、既存の抗てんかん薬では十分な効果が得られない。
 EUで承認された希少疾病治療薬stiripentolは発作回数を減少および発作持続を短縮させる効果を日本の症例でも示した。副作用は併用薬の量を調整することによって回避可能であった。
 この有効な薬剤を早期に本邦に導入することが望まれる。そのために必要な基盤は整備した。

公開日・更新日

公開日
2008-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200717008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
6施設で乳児重症ミオクロニーてんかん児112症例の治療状況を後方視的に把握した結果、既存抗てんかん薬15種により50%以上の発作減少が得られた症例は15%にすぎす、有効な新薬導入の必要性は明らかであった。そこでEUで希少疾病薬として承認されているStiripentolの臨床評価試験研究を行ったところ、25症例のうち16例(64%)で発作が50%以上減少し、さらにけいれん重積の減少や発作の持続が短縮した症例がみられた。この有効な薬剤を本邦へ導入するための準備態勢を整えた。
臨床的観点からの成果
乳児重症ミオクロニーてんかんは容易にけいれん重積をおこし、医療依存性の極めて高い重篤な疾患である。既存の抗てんかん薬の効果は限られ、頻回に反復する発作が精神運動発達の重要な阻害因となっている。Stiripentolが発作減少をもたらし、ことにけいれん重積の回数を減らし、発作の持続を短縮することは、患者の医療管理を軽減する。また、食欲不振などの有害事象はあるものの併用薬の調整により管理可能である。本邦への早期の導入が望まれる。
ガイドライン等の開発
Stiripentolの臨床評価試験研究にあたって、治験薬概要書を飜訳し、EUでの治験方法に基づいた試験研究実施プロトコールおよび症例報告書を作成した。StiripentolはP450チトクロームを阻害するため、併用薬との相互作用に注意を要する。EUでの経験、本邦での臨床試験の経験に基づいて、本邦導入後の使用にあたってはマニュアルの作成が望ましい。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省の未承認薬使用問題検討会議(2007.7)にて、早急に本邦へのStiripentol導入が検討されるべきと結論された。このためフランスの製造販売会社と直接の話し合いをもち、早期に日本の提携企業をみつけ、導入への方向性を早期にさぐることの了承を得た。なお、本試験研究はcompassionate useにて行った。
その他のインパクト
EUにつづき本邦でStiripentolが導入されれば、その国際的な学術的意義は大きい。しかし何よりも、本研究が新薬導入の基盤となることにより、Stiripentolが本邦に導入されることになれば、患児・家族のQOLの著しい改善が見込まれる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-